解約防止の施策は、お客様の解約理由を正確に把握した上で検討することが重要です。解約防止の施策を怠るとお客様が離反してしまうため、常に新規のお客様を獲得しなければなりません。本記事では解約防止策の重要性や、主な解約理由、解約防止策を実行するメリットなどを解説します。
解約防止策の重要性
お客様の維持を主な目的とする解約防止策は、非常に重要な施策です。解約防止の施策を怠るとお客様が離反してしまう可能性があるため、常に新規のお客様を獲得することを強いられます。解約防止を図る活動は、「リテンションマーケティング」とも呼ばれます。
さっそく、既存のお客様を維持することの大切さを示す「1:5の法則」や「5:25の法則」の概要や、解約理由を把握する重要性などを確認しましょう。
「1:5の法則」と「5:25の法則」
「1:5の法則」とは、既存のお客様を維持するコストは、新規顧客の獲得に必要なコストの5分の1で済むことを意味する法則です。つまり、同額の売上を達成した場合、新規のお客様に販売したほうが利益率は低くなることを意味します。
また「5:25の法則」は、お客様の離反を5%改善すれば、その利益率は25%改善されるという法則です。既存のお客様を維持するコストは新規のお客様の獲得にかかるコストよりも少ないため、お客様の離反を防止できれば利益率が改善されます。
2つの法則が共通して表しているのは、「既存顧客の離反を防止することの重要性」です。すでに自社の商品やサービスを購入してくれているお客様は、少ないコストで再度商品やサービスを購入してくれる可能性が高いといえます。利益率を向上させるには、新規顧客の獲得にのみ注力するのではなく、既存のお客様に対する解約防止策を講じ、売上を伸ばすように努める必要があります。
解約防止策を「リテンション」という
解約防止施策全般は、「リテンション」とも呼ばれます。
そもそもリテンション(retention)は、「保持・維持」という意味の言葉です。マーケティング領域では「既存のお客様の維持」、人事領域では人材の確保・定着という意味で使われます。
解約理由を把握することがポイント
解約防止策を実行する前提として、解約理由を把握しておかなければなりません。解約理由がわからなければ、どのような解約防止策が有効であるのかの判断がつきません。やみくもに解約防止策を講じても意味はないでしょう。
例えば、「商品の効果が実感できなかった」という解約理由に対して、商品価格の見直しをしたところで、解約防止にはつながりません。商品価格の見直しが解約防止策として有効なのは、解約理由が「商品価格が高く、継続して購入できないから」というようなケースです。
お客様の解約理由はもちろん、解約したお客様に共通してみられる傾向を探れば、解約防止に役立つ情報を得られると考えられます。そして、解約に近いお客様を割り出し、適切にフォローアップができれば、解約率の低下につながるでしょう。
解約防止策を実行するメリット
解約防止策を実行するメリットは、主に以下の5点です。
- 利益率が向上する
- お客様満足度が高まる
- 休眠状態などのお客様の掘り起こしができる
- ロイヤルカスタマー化につながる
- 新規開拓よりもコストがかからない
各メリットについて解説します。
利益率が向上する
解約防止策の実行により、利益率の向上が見込まれる点がメリットです。「1:5の法則」で示されているとおり、一般的に新規顧客の獲得には既存顧客の維持にかかるコストの5倍程度かかるといわれています。そのため、解約防止策を講じることは、利益率の向上に寄与します。
すでに自社の商品やサービスを購入してくれているお客様は、商品やブランドなどに対する知識を持っていることがほとんどです。したがって、前提となる説明を飛ばして、すぐに新商品やサービスの紹介から始めることが可能です。また、新規のお客様よりもキャンペーンやセールのお得さを理解し、検討してくれる可能性が高いでしょう。
さらに、取引実績があればお客様情報を分析できることから、何も情報がない新規のお客様に比べて効果的なアプローチを行えます。
お客様満足度が高まる
有効な解約防止策を講じられている状態であれば、既存のお客様だけでなく、新たに獲得したお客様の解約率も低減できる可能性が高まります。
解約しないお客様が増えるのは、お客様の満足度が高い状態を維持できているからこそです。そのため、解約防止策がお客様満足度の向上に寄与していると解釈できます。
休眠状態などのお客様の掘り起こしができる
しばらく商品の購入がない、あるいはサービスを利用していないなど、いわゆる休眠状態にあるお客様の掘り起こしができるのも、解約防止策を講じることで得られるメリットです。お客様が休眠状態に至った要因を分析し明らかにすることで、アクティブな状態に復活させられる可能性があります。
さらに、休眠状態になった要因などの分析結果は、アクティブな状態のお客様を休眠状態にしないための施策に活用できるだけでなく、解約防止策を検討する際にも役立ちます。
ロイヤルカスタマー化につながる
解約防止策は、実行することでお客様満足度が向上し、ロイヤルカスタマー化につながるといえます。ロイヤルカスタマーとは、自社の商品やサービスに信頼や愛着を抱いてくれるお客様のことです。
ロイヤルカスタマーは、商品をリピート購入してくれるほか、周囲に商品をすすめたりポジティブな口コミ評価を投稿してくれたりすることも少なくありません。ロイヤルカスタマーが増えれば、広告費などのコストをかけずに、商品の認知拡大や新規顧客の獲得を実現できます。
新規開拓よりもコストがかからない
新規のお客様を獲得するコストに比べ、既存のお客様を維持するコストが5分の1程度で済むことは、大きなメリットです。
解約防止策によって解約率が下がってきている場合、お客様満足度は向上している状態にあるといえます。そのため、会社側がアクションを起こさなくても、既存のお客様が商品やサービスの良さを周囲にすすめてくれる可能性が上がります。解約防止策の実行によって、お客様獲得のための広告費削減にもつながるでしょう。
主な解約理由
適切な解約防止策を講じるためには、お客様の解約理由を正確に把握しておく必要があります。お客様によって解約理由は異なるため、可能であればヒアリングを実施することが望ましいでしょう。
一般的な解約理由として上げられるのは、以下のとおりです。自社ではどの解約理由が多いかという視点でご覧ください。
- その商品・サービスで課題解決できなかった
- 他社に乗り換えた
- 商品を使いこなせなかった
- サポート体制が充実していない
それぞれの理由を解説します。
その商品・サービスで課題解決できなかった
商品やサービスを利用したものの、抱えていた課題を解決できなかった、あるいは想定していたような効果が得られなかったケースです。
商品やサービスの説明が不十分で、お互いの認識にズレが生じたまま利用を開始してしまった場合にこの状態に陥ることがあります。また、インターネット通販の広告などに書かれている宣伝文句が、お客様に過度の期待を持たせてしまっているケースも該当します。
そのほか、お客様の利用期間が短すぎることも、効果を感じられない要因として多いといえるでしょう。
他社に乗り換えた
他社への乗り換えも、よくある解約理由として挙げられます。
ほかに魅力的なサービスや商品があるときや、機能や品質は大差ないにもかかわらず料金が安いときに、他社に乗り換えられる可能性があります。
解約理由をヒアリングする際に、たとえ自社のほうが優れているという認識を持っていたとしても、お客様にそれを伝えてしまうとクレームになりかねません。その代わりに、「乗り換え先の商品やサービスの魅力」のヒアリングを行うことで、自社の改善点を明らかにできる場合があります。
競合分析は商品・サービスの開発の段階で終えていることが一般的ですが、実際にお客様が魅力を感じる他社の商品やサービスには、気づいていないことも多いでしょう。
他社への乗り換えを理由に解約を希望するお客様に対しては、自社の商品やサービスの改善のためにも積極的にヒアリングを行うことをおすすめします。
商品を使いこなせなかった
商品やサービスを十分に使いこなせなかった場合も、解約に至るケースが多いです。搭載されている機能が多すぎたり、必要以上に高性能であったり、使い方が難しかったりするときに「使いこなせないため、お金を払うのがもったいない」と判断することが少なくありません。
例えば月額制のサービスであれば使いこなせなかった理由のヒアリングを行い、お客様に合ったプランやコースを再提案することで、解約を防止できる場合があります。
サポート体制が充実していない
サポート体制が充実していないことも、解約理由になり得ます。「メールをしても返信が遅い」「電話をしてもなかなかつながらない」といった不満から、解約に至るケースが多いようです。
このように会社側のレスポンスが遅いと、お客様は抱えている課題の解決ができず、やがて不信感を抱くようになるでしょう。
お客様からの問い合わせやメールに迅速に対応するには、問い合わせ・メールの共有管理システム「メールディーラー」の活用がおすすめです。対応状況をチームで見える化できるほか、受信から送信までのステータスを自動で変更するため、次に何をすればよいのかが把握でき、対応の遅れを防止できます。
メールディーラーの詳しい機能などを知りたい方は、以下のフォームからお問い合わせください。
解約防止の施策立案・実施にむけたステップ
解約防止の施策立案と実施にむけたステップは、以下のとおりです。
- 現状の把握
- 目標の設定
- 対象のお客様を絞り込む
- 施策の実施
ポイントになるのは、「現状把握」です。ここが明らかになっていないと、実態からズレた施策になり、効果が見込めません。各ステップの内容を解説します。
1.現状の把握
はじめに、現状の把握に着手します。月別の解約数に加え、解約の原因や解約の申し出があったお客様に共通する傾向などを確認しましょう。
とくに、解約の申し出があったお客様の傾向を把握することで、似たような傾向や状況のお客様に対して、先回りして対策を講じることが可能になります。直近の利用回数や最終利用日、お客様ランクなどをデータを分析することが大切です。
2.目標の決定
現状認識ができたら、解約防止策によって目指す「継続率」に関して目標設定を行います。やや難しいレベルに設定し、具体的な数値を盛り込むのがポイントです。
一定期間の継続率は、以下の計算式で算出が可能です。
- 一定期間の継続率=(期間終了後のお客様数-期間中の新規のお客様数)÷期間開始時のお客様数
例えば、お客様の数が「期間開始時:180人」「期間中の新規の人数:30人」「期間終了後:200人」であった場合、期間中の継続率は「(200人-30人)÷180人=約94%」となります。
そのほか、単純に解約数を目標に掲げることも有効です。自社が取り組みやすい目標設定をしましょう。
3.対象のお客様を絞り込む
目標設定をした後は、解約防止策の対象となるお客様の絞り込みを行います。
解約防止策は、ローラー作戦的にすべてのお客様に対して行うわけではありません。解約が予測されるお客様のみをあぶり出して、ピンポイントに対応することを推奨します。例えば、解約の予定のないお客様に対して契約更新に関する確認の電話をすることで、お客様が予算やツールの再確認を行い、結果的に想定外の解約が発生してしまう可能性があるためです。
具体的には、以下のような動向のお客様に絞りこみます。
- サービスの利用頻度が落ちている
- 最終の商品購入日から一定以上の日数が経過している
- 商品やサービスに関するクレームを入れた
- サービスの機能に関する問い合わせがあった
また、予測分析ツールなどを活用し、解約の可能性が高いお客様の抽出を行うこともおすすめです。
4.施策の実施
対象のお客様を絞り込み、それぞれの解約防止策を立てられたら、実行に移します。施策を実行する際には、なるべく小さな範囲のできることから進めていきます。
例えば、解約の理由が「サポートセンターへの電話がなかなかつながらない」であった場合、いきなり自動会話プログラムの「チャットボット」の導入に踏み切るのはおすすめしません。まずは、問い合わせに対応するメンバーを増員して、対応できるか試します。
問い合わせ対応の人数を増やした結果、解約率が低下した場合は、チャットボットの本格導入を検討するなど、徐々に改善を進めていくと失敗を防げます。
解約防止につながる対策
解約防止につながる主な対策として挙げられるのは、以下の3点です。
- 商品を改良する
- コールセンターでのトークスクリプトを改善する
- ライフイベントに柔軟に対応する
それぞれの内容を解説します。
商品を改良する
お客様の満足度向上を図るために、商品の改良やサービスの改善といった本質的な対策に取り組むことが大切です。これまでの解約理由や、お客様相談室などに寄せられた声を参考にして、商品やサービスの質を向上させましょう。商品やサービスの質が高ければ、これからも継続して利用したいと考えるお客様が増え、おのずと解約数も抑えられるでしょう。
ただし、商品の改良やサービスの改善によって、既存の商品・サービスに不満のないお客様が離反してしまう可能性があるため、改良箇所や程度については慎重に検討する必要があります。
コールセンターでのトークスクリプトを改善する
コールセンターでのトークスクリプトを見直すことも、解約防止の対策として有効な方法の1つです。コールセンターにおけるトークスクリプトとは、お客様との会話の中でどう対応したらよいのかを記した台本のようなものです。
例えば、「商品を使っても効果が出なかった」というお客様に対しては、その時点で解約せず、継続して使用することを提案します。お客様が商品やサービスの効果を感じられないのは、利用期間が短すぎることが要因であることも往々にしてあるためです。
ライフイベントに柔軟に対応する
サブスクリプションサービスにおける解約理由の中には、結婚や引っ越しなどのライフイベントに関わるものも数多く存在します。
ライフイベントが理由の場合、会社としては対処のしようがないからと、ただ解約を受け付けるのはおすすめできません。解約を受け付けた後も情報を送付してもよいかといった点を確認し、長期的に関係を続けられるように努めるのが得策です。
お客様は商品やサービスに不満を抱えていたわけではないため、会社との関係性が続いていれば、もとのライフスタイルに戻ったときや新たなライフイベントが発生した際に、再び契約に至る場合があります。また、どのようなライフイベントが解約理由になるかを知っておくことで、有効な解約防止策を立案できる可能性があるでしょう。
解約防止の施策を行う際のポイント
解約防止の施策を行う際に押さえておくべきポイントは、主に以下の2点です。
- 適切なタイミングで実施する
- 解約理由に合ったアプローチ法を選択する
各ポイントを解説します。
適切なタイミングで実施する
解約防止の施策は、適切なタイミングで実施することが重要です。「他社のサービスに乗り換えるべきか」「解約するべきか、このまま継続しようか」といったように、意思が固まりきっていない段階のお客様にアプローチを行わないと、効果が見込めません。
一般的に解約防止のアプローチを行うのは、解約の電話連絡を受けた際などの、解約の意思がほぼ固まっている段階です。そのため、アプローチを行っても解約防止にはつながらない可能性が高いといえるでしょう。
解約理由に合ったアプローチ法を選択する
解約理由に合ったアプローチ法を選択しないと、解約防止にはつながらないことも押さえておきましょう。お客様によって、解約を検討する理由はさまざまであるため、お客様の解約理由に合ったアプローチを行う必要があります。
例えば、使いたいサービスが揃っていないことが解約理由の場合は、別サービスを提案します。一方、費用が高額であることが解約理由の場合は、継続利用によって割引が適用されるキャンペーンの訴求などが効果的です。
解約理由を把握して解約防止につなげよう
解約防止の施策を怠るとお客様の離反を招くため、常に新規のお客様を獲得しなければならない状況に陥ります。お客様によって、解約を検討する理由はさまざまです。そのため、それぞれのお客様の解約理由に合ったアプローチを行う必要があります。
「1:5の法則」や「5:25の法則」が示すように、すでに自社の商品やサービスを購入してくれているお客様は、少ないコストで再度購入してくれる可能性が高いでしょう。売上を確保し利益率を向上するには、新規のお客様の獲得にばかり目をむけるのではなく、既存のお客様に対する解約防止策を講じることに努めなければなりません。
主な解約理由としては、「商品・サービスで課題解決できなかった」「他社に乗り換えた」「サポート体制が充実していない」などが挙げられます。
例えば、「メールをしても返信が遅い」「電話をしてもなかなかつながらない」といった不満から、解約に至るケースも少なくありません。お客様からの問い合わせやメールに迅速に対応するには、問い合わせ・メールの共有管理システム「メールディーラー」の活用がおすすめです。対応状況をチームで見える化するため、返信の遅れなどを防止できます。
解約防止の施策の一環として、ぜひメールディーラーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
メールディーラーの詳しい機能などを知りたい方は、以下のフォームからお問い合わせください。
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