カスタマーサポートやコールセンターの問い合わせ対応業務は複雑であり、業務の流れをつかむためにはフローチャートの作成が効果的です。業務内容やプロセスをわかりやすく可視化し、業務の効率化と対応品質の向上に役立ちます。
本記事では、問い合わせ対応をフローチャートにする必要性やメリット、作成手順を解説します。
問い合わせ対応のフローチャートとは?
フローチャートとは、業務の内容やプロセスをわかりやすく可視化するツールです。円形・長方形・ひし形などの図形に業務を記入し、それぞれを矢印でつなぐシンプルな構造であり、ひと目で業務の流れがわかるという特徴があります。
フローチャートは「誰が」「どのタイミングで」「どのように業務を遂行するか」を時系列に沿って整理・作成します。
ここでは、問い合わせ対応にフローチャートが役立つ理由や、フローチャートの種類をみていきましょう。
問い合わせ対応のフローチャートが役立つ理由
問い合わせ対応のフローチャートを作成すれば、サポート業務の全体像と複雑な業務の流れをひと目で理解できます。フローチャートは日々の業務をスムーズに進めるのに役立ち、新人教育にも活用されています。
サポート業務は電話受付と対応履歴を残すだけのシンプルな業務もあれば、受付のほかに情報変更や解約処理など付随的な作業を伴うものもあり、複雑な業務の流れを可視化するツールが必要です。
近年は問い合わせ手段も多様化し、電話だけでなくメールやチャット、Webサイトの問い合わせフォームなど、幅広く対応しています。
お客様にとって問い合わせ手段が多いことはメリットで、顧客満足度の向上にも役立つでしょう。その一方で、問い合わせ対応業務はより複雑になっていきます。業務をスムーズに進めるためには、業務の流れを俯瞰できるフローチャートが欠かせません。
フローチャートの種類
フローチャート記述方法はプロセスの内容によって異なり、主に次の6種類があります。
日本工業規格(JIS)
情報処理を表すときに作成するフローチャートです。主にアルゴリズムの基礎を学習するときに使われます。
データフロー図
情報システムを通るデータの流れを表すときに使う流れ図です。
NOMA方式
事務フローやマニュアルなどで使われます。縦書きのフローで、工程を上から下という流れで表現するフローチャートです。
BPMN形式
「Business Process Model & Notation」の略で、業務を実行する際に共有すべき仕事の始め方や役割分担などのフローをまとめる手法です。
産能大式
事務フローやマニュアル、業務改善などで幅広く使われています。
業務フローチャート形式
シンプルな構成で特別なルールはなく、四角い図形を線でつなぐだけで作ることもあります。
これらのフローチャートのうち、問い合わせ対応で使われるのは、NOMA方式や産能大式、業務フローチャート形式が多いでしょう。
どのフローチャートを使うときも、基本的に次の3点が共通のルールになります。
- 業務フローの開始と終了を示す
- 基本的に上から下へ、または左から右へ描く
- 線を交差させない
フローチャートを作成する場合は、事前に作業内容をまとめておくことが大切です。詳細は、このあと「作成手順」で解説します。
フローチャートを作る必要性
問い合わせ対応のフローチャートを作るのは、担当範囲を明確にしてお客様との接点を把握するなどの目的があります。
ここでは、フローチャートを作る必要性を解説します。
担当範囲を明確にするため
問い合わせ対応のフローチャート作成は、担当範囲を明確にするために必要です。どの業務を誰が担当するのか、どの時点から他部署に回すのかなど担当する業務の内容を明確にして、作業の流れをスムーズにします。担当範囲が明確になれば、責任の所在も明らかになるでしょう。
問い合わせ対応をフローチャートにしておくことで、実際に業務に携わる担当者以外でも業務の流れを理解できます。複雑な対応のプロセスにおいてフローチャートのようなツールがない場合、担当者しか対応の流れを知らないという業務の属人化にもつながるでしょう。フローチャートを作成することで属人化を防ぐことができ、誰でも対応できるようになります。
顧客接点を把握するため
フローチャートは、顧客接点(タッチポイント)を把握するために役立ちます。カスタマーサポートはお客様からみると会社の顔であり、顧客満足度を上げるために重要な役割を担う場所です。サポートに寄せられる問い合わせはお客様の貴重な意見であり、商品やサービスの改善・開発にも役立ちます。 顧客接点の品質を向上させるためには、カスタマーサポートにおける顧客接点を把握し、どのような問い合わせにも対応できるようにしておかなければなりません。
フローチャートの作成で業務を可視化すれば、どのような対応をしているか、無駄や省略できるプロセスはないかが見えてきます。課題を見つけて対応の品質を改善することで、顧客満足度を高めることができるでしょう。
他業務への影響を押さえるため
フローチャートの作成により、他業務への影響範囲がわかります。カスタマーサポートの仕事は自分ひとりで完結するものではなく、さまざまな部署・担当者が連動してお客様にサービスを提供しています。
自分の業務が他のどの作業・どの部署に影響するかを把握しておけば、自分の作業に遅れやミスが起きたり、急に変更が生じたりしたときも、適切な対応ができるでしょう。
影響を受ける部署やスタッフにすぐ連絡をとるなど、迅速に対応して影響を最小限にとどめることができます。
問い合わせ対応をフローチャートにするメリット
問い合わせ対応をフローチャートにすることで、現状の把握や業務内容の改善など、さまざまなメリットがあります。
ここでは、フローチャートの作成で得られる4つのメリットを解説します。
現状を把握できる
フローチャートの作成により、現状を把握できるのがメリットです。いつ・誰が・どのように・何を行うかという全体像が明確になり、現場を見なくとも解決すべき課題を洗い出すことができます。
近年、問い合わせの対応チャネルは電話のほかにメールやWebサイト、SNSなど多様化しており、誰がどのチャネルを担当しているのかが不明確になりがちです。フローチャートにより現状の対応状況や対応人数を可視化することで、偏りや無駄な作業など、改善すべき点が浮かび上がってくるでしょう。
業務内容の改善に活かせる
問い合わせ対応のフローチャートを作成する過程で、業務内容を客観的に把握できます。各作業の手順や流れが明確になり、作業の段取りをしやすくなります。段取り良く作業できるようになれば、生産性も向上するでしょう。
業務プロセス全体を把握することで、各業務で発生する問題も把握しやすくなります。気づきを得て、業務内容の改善に活かせるでしょう。
エスカレーションフローを明確にできる
お客様からの問い合わせには専門的な質問や苦情など、オペレーターには対応が難しいものも多く、専門部署や上長へとつなぐ対応が行われます。このような対応をエスカレーションといい、お客様へのスムーズな対応を実現するためにはエスカレーションの整備が欠かせません。
フローチャートの作成により、エスカレーションを明確にできるのもメリットです。エスカレーションを行う問い合わせ内容や連携の手順を示しておくことで、お客様を待たせることなく速やかな解決ができ、顧客満足度の向上につながります。
問い合わせ対応のフローチャートを作成する手順
問い合わせ対応のフローチャートは、次の手順で作成します。
- フローチャートにする業務を明確にする
- 担当部署・スタッフを抽出する
- 各担当者が行っている作業を洗い出す
- 対応開始から完了までのプロセスを明確にする
- 実際にフローチャートを作成する
それぞれ、詳しくみていきましょう。
1.フローチャートにする業務を明確にする
まず、フローチャートを作成する前に、作成する目的を明確にしておきましょう。目的は業務の効率化や新人教育、業務引き継ぎのためのマニュアル作成など、会社によってさまざまです。目的を明確にすることで、フローチャートに記載する業務の範囲や、業務内容をどの程度まで詳細に記載するかが変わってきます。
現状のままを記載するか、改善点を踏まえた業務フローにするかも、目的によって変わるでしょう。現状の業務フローに問題点があることが明らかな場合は、フローチャート作成の機会に改善を行い、改善した業務のフローチャートを作成するという方法もあります。
2.担当部署・従業員を抽出する
フローチャートを作成する目的と記載する業務を明確にしたら、業務フローに関わる担当者や担当部署を洗い出します。
業務に関わる担当部署は「営業部」「総務部」などがあげられ、エスカレーションのために開発部門が関わる場合もあるでしょう。
従業員は、主に「オペレーター」「リーダー」「SV」「営業担当」「発送担当」などがあげられます。
3.各担当者が行っている作業を洗い出す
担当部署、担当者を洗い出したら、それぞれの作業を洗い出します。
各部署の従業員にヒアリングを行い、行っている作業内容を聞き出して整理しましょう。
作業内容は、できるだけ細かく聞き取ることが大切です。オペレーターであれば、「お客様からの問い合わせを受ける」といった漠然とした内容ではなく、「対応するお客様の属性はなにか」「見込み客かお得意様か」など、より詳細に聞き取ります。
対応完了後の作業も、対応内容の記入や受注データの入力など、具体的な内容を聞き取ってください。
その際は、作業にかけている時間や、感じている問題点、改善したいと思っていることなども確認しておきましょう。
通常時の作業とともに、緊急時・トラブル発生時の対応もヒアリングします。イレギュラー対応のフローチャートとしてまとめておくことで、より業務の標準化を図れます。
4.対応開始から完了までのプロセスを明確にする
業務に関わる担当部署と担当者、作業内容をすべて洗い出したら、業務の対応開始と完了について、どこからが開始で、どの時点を完了とみなすかを明確にしてください。業務の開始と完了時点を定めたら、担当者と作業を時系列に並べましょう。
カスタマーサポートの場合は、問い合わせの内容によって作業の流れが分かれます。たとえば、注文と問い合わせでは、その後のフローが変わります。問い合わせはエスカレーションに移行することもあるでしょう。
何通りにもフローが変わる可能性がある場合は、それらをすべて抽出します。
5.実際にフローチャートを作成する
最後に、フローチャートを作成します。時系列に並べた担当者や作業内容の各プロセスについてスタートとゴールを明示し、チャート図を記載しましょう。
フローチャートは担当者ごとに「スイムレーン」と呼ばれる部門に分けて作成します。スイムレーンは業務を部門ごとに表した図のことです。部署ごとに設けたスペースに各部署の従業員の作業を時系列に書き入れ、流れに沿って矢印でつなぎます。
スイムレーンの作成では、業務の全体像をわかりやすくするため「誰が」「いつ、何をきっかけに」「どのような作業を」「どのような場合に」という4つの要素を入れることが大切です。
問い合わせ対応のフローチャートを作成するときのポイント
フローチャートを作成する際には、業務の流れをつかめるようにして、担当者ごとの開始・終了を明記するなど、注意すべきポイントがあります。 詳しくみていきましょう。
業務の流れをつかめるようにする
作業内容や担当者などは詳細に書くことが必要ですが、「複雑になりすぎて流れがわかりにくい」ということにならないようにしましょう。
業務の流れをつかめるよう、シンプルなフローチャートにすることが大切です。
そのためには、次のような工夫をするとよいでしょう。
- 必要最小限の項目を記入し、必要のないプロセスを削除する
- 各プロセスをつなげる矢印が交差しないようにする
記載が必要だが、書き込むとフローがわかりにくくなる場合は、スイムレーンの横に備考欄を設け、そこに記載してください。
あるいは、詳しい業務内容を別の業務フロー図に記載する場合に使う「定義済み処理・サブプロセス」の記号を使い、別のフロー図に記載するという方法もあります。
担当者ごとの業務開始・終了を明記する
業務の開始と終了は、担当者ごとに明記してください。営業の開始と終了の時間しか書かず、各自が担当する作業の開始と終了がわからないと、自分の業務範囲や責任範囲を把握できません。
フローチャートには、作業のスタートとゴールを示す「端子・開始(終了)」という図形・記号があるため、それを利用して各担当者の開始と終了を明確にしましょう。
図形や記号を活用する
フローチャートを見やすくするため、フロー図用の図形や記号を使用することも大切なポイントです。図形や記号を使用すれば、ひと目で業務の流れを理解しやすくなります。
フローチャートに使われる図形には、次のようなものがあります。
名称 | 意味 |
---|---|
端子・開始(終了)図形 | 作業の開始と終了を示す |
プロセス・作業・処理図形 |
・一般的な作業・タスクに使う ・枠内に作業内容を記載する |
判断図形 |
・作業工程のなかでフローが複数に分岐するときに使う ・枠内に「判断の内容」を記載する |
ページ結合子 |
・フロー図がページをまたぐ場合に使う ・枠内にページ番号を記載する |
準備 |
・その後の作業に向けての準備作業に使う ・枠内に作業内容を記載する |
保存・保管 |
・書類や帳票などを保存するときに使う ・枠内に保管場所・保管方法を記載する |
これらの記号を該当する作業に使うことで、内容がわかりやすくなり、視覚的に業務の流れをつかめます。図形ごとに色分けすれば、よりわかりやすくなるでしょう。図形はいくつも使いすぎず、種類を絞り込むことがわかりやすくするコツです。
問い合わせ対応を見える化できるメールディーラー
問い合わせ対応業務の品質を向上させるためには、フローチャートを作るだけでなく、問い合わせ対応の見える化も大切です。そのために役立つのが、問い合わせ管理システムの「メールディーラー」です。
メールディーラーは、メールやチャットなどの問い合わせ業務をサポートするツールで、問い合わせの対応状況を見える化し、対応漏れや二重対応を防止します。
よく使うテンプレートを全員で共有できるメールテンプレート機能や、よくある質問・マニュアルを共有できるQ&A機能があり、対応レベルの平準化に役立ちます。対応者により対応の質が違うという不都合を解消できるのがメリットです。
また、問い合わせごとに担当者を割り当てる振り分ける機能があり、対応漏れを防止します。担当者の情報は対応状況と同じく全員に共有されるため、確認作業の手間を省いて業務を効率化できるのもメリットです。
製品の詳しい内容は資料で確認できますので、ぜひご利用ください。
問い合わせ対応のフローチャート作成で業務を効率化しよう
問い合わせ対応のフローチャートは、担当範囲を明確にし、他部署への影響を把握する役割があります。
フローチャートの作成により現状を把握でき、業務内容の改善に活かせるのがメリットです。
作成する際は、記載する業務を明確にしなければなりません。そのためには、まずフローチャート作成の目的を明らかにする必要があります。
カスタマーサポート業務を効率化するには、フローチャート作成とともに、問い合わせ管理システムが役立ちます。無料トライアルもありますので、ぜひご検討ください。
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