ビジネスでは電話でクレームを受ける機会も多く、対応に悩む企業も少なくありません。適切な対応ができないと、クレームをさらに大きくしてしまいます。クレーム対応の流れを把握し、正しい接し方を学ぶことが必要です。
本記事では電話でのクレーム対応の流れやしてはいけない行為、スムーズに行うポイントを解説します。
よくあるクレーム電話の種類と理由
企業ではお客様からクレームの電話が入ることもあり、クレームの内容を把握して適切な対応をしていかなければなりません。
ここでは、よくあるクレーム電話の内容を解説します。
商品・サービスに対するクレーム
お客様からよくあるクレームは、商品・サービスに対する不満です。商品については欠陥や不足のほか、「思っていた商品と違う」「使い方がわからない」といった内容があげられます。
サービスについては、「アフターサービスがない」「利用方法がわからない」といった内容がクレームになりやすいでしょう。
近年はインターネットで商品の注文や予約をするケースが多く、「注文した商品の発送が遅い」「予約が取れていない」といったクレームも起こりやすくなっています。
商品の欠陥やサービスの質についてクレームを受けた場合は、すぐに改善策を講じなければなりません。改善のための貴重な意見として、活用していく体制が必要です。
従業員への不満に対するクレーム
従業員への不満も、よくあるクレームのひとつです。言葉遣いや接客態度が悪い、質問に答えられないといった内容が考えられます。
店舗の従業員やコールセンターでのオペレーターなど、お客様に直接対応する業務に多いクレームです。対応に問題があればクレームにつながりやすく、お客様対応には十分な配慮が求められます。
マニュアル作成やOJTの実施など、お客様対応の標準化のための教育体制が必要になるでしょう。
お客様の勘違い・不注意によるクレーム
お客様の勘違いや不注意で発生するクレームもあります。例えば、「注文を間違えた」「使い方がわからない」「間違った使い方をして壊れた」といった内容です。
このような場合でも、「間違いやすい表示をしていた」「店員の説明や説明書の記載に不備があった」という可能性もあり、会社側に改善すべき点があるケースもあります。
サービスの品質を上げるためには、このようなクレームにも真摯に対応し、原因の究明と改善が必要です。
クレーム対応の流れ
クレーム対応では、最初の対応が重要です。対応を誤ると、さらにクレームを大きくしてしまうことになりかねません。
適切に対応するための手順をみていきましょう。
お詫びをしてクレームの内容を聞き取る
クレーム電話を受けたら、まず丁寧にお詫びをして、クレームの内容を聞き取ることが大切です。お詫びはただ「申し訳ございません」というだけでは、何に対して謝罪しているか伝わりません。形式的に謝っているだけに感じられることもあるため、謝罪の理由も伝えることが必要です。
「この度はご不便をおかけして、申し訳ございません」「お忙しいところお電話をいただき、申し訳ございませんでした」というように謝罪すれば、気持ちが伝わります。
話を聞くときは、軽く相槌を打ちながら耳を傾けましょう。クレーム電話をかけてくるお客様は「話を聞いてほしい」と考えており、相手に共感を求めています。話すだけで気持ちが落ち着く場合もあるでしょう。わかりにくい部分があっても途中で話を遮らず、まずは話に耳を傾けてください。
早く終わらせようとする雰囲気を出さず、しっかり最後まで聞く姿勢を見せることが大切です。
話を聞いているときは、必ず内容をメモしましょう。電話でのクレームは、電話対応をした人以外は内容を知り得ません。担当変更などで誤った情報を伝えると、さらにクレームを大きくしてしまう可能性があります。しっかり聞き取った内容をメモに取り、正確な情報を残しておきましょう。
問題の解決につながる提案を行う
お客様の話を聞いてクレームの内容を把握したら、事実確認を行います。メモに取った内容を見て、不明点を確認してください。お客様の話だけではわからない部分があれば質問をして、経緯や状況を明確にします。「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という5W1Hに沿って確認すると、事情がよく見えてくるでしょう。
質問は簡潔にすることも大切です。質問が長いとお客様をさらにイライラさせる原因になり、自分の話を疑っているのかと思われるかもしれません。短く一問一答形式で質問をすれば、お客様も答えやすいでしょう。
質問をする際は、クッション言葉を使うと角が立ちません。例えば、「教えていただけますか」だけではストレートできつい印象を受けますが、「差し支えなければ」「恐れ入りますが」といったクッション言葉をつければ、柔らかい印象になります。
事実確認をしたら、問題の解決につながる提案を行います。こちら側の都合ではなく、お客様の都合に合わせた解決策を提案してください。
提案は、度を越えず良識の範囲内で行うことが大切です。過度な解決策は噂が広まる場合があり、他のお客様に同じような対応ができない場合は、クレームにつながる可能性があります。
「〇〇できると思います」というような曖昧な回答は避けてください。判断が難しい場合にはすぐに回答せず、折り返しの連絡にして上司に相談するようにしましょう。
電話へのお礼を伝える
解決策を受け入れてもらったら、あらためてお詫びと感謝の気持ちを伝えます。次のように、電話をしてくれたことに対して感謝を伝えましょう。
- 「ご指摘いただいた内容をしっかりと受け止め、改善に向けて取り組んで参ります。貴重なご意見をいただき感謝いたします」
- 「今後もお気づきの点やご要望などありましたら、お気軽にお問い合わせください」
クレームはお客様の率直な意見であり、クレームの中から商品・サービスの改善点や新しいアイデアが生まれてくるかもしれません。
そのような機会をもらえたことに対し、電話対応の終わりには感謝を伝えましょう。同時に、再発防止に努めることや、貴重な意見を踏まえて改善していくことを伝えると、よりお客様の納得を得られます。
電話は、相手の電話が切れたことを確認してから終えることを意識し、最後まで誠意ある対応を意識しましょう。
内容をまとめて社内で共有する
クレーム対応内容は、わかりやすくまとめて保存し、社内で共有します。商品・サービスや従業員に対するクレームであれば、同じことを繰り返さないよう解決策や予防策を考えましょう。
日々のクレームをデータベース化して管理すれば、クレームの傾向もわかるでしょう。業務やお客様対応のどのような点に問題があるのかを分析し、サービスの品質向上に役立ててください。
電話でのクレーム対応でしてはいけないNG行為
電話のクレーム対応によっては、トラブルとなってさらにクレームを大きくしてしまう場合もあります。
ここでは、クレーム対応でしてはいけないNG行為を紹介します。
反論・否定をする
クレームの中には、誤解があったり理不尽な内容であったりするケースもあります。明らかにお客様の間違いであったとしても、否定や反論をしないことが大切です。否定や反論は、さらにお客様を怒らせることにつながりやすいでしょう。
次のような話し方は、さらなるクレームにつながる可能性があるため、注意してください。
- お言葉ではありますが
- お気持ちはよくわかるのですが
- 〇〇とおっしゃいますけど
- ですから
- 何度も申し上げているように
▼NG例
どのようなクレームでも、まずは最後まで話を聞くという姿勢を保ってください。言い訳をすることも、誠意がないと感じられてしまいます。
お客様の気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことを意識していくとよいでしょう。
お客様を待たせる
事実や情報を正確に確認しようとしてお客様を長時間待たせることは避けましょう。クレームの電話をかけるお客様は不快な気持ちを抱いていることがほとんどです。怒りの状態であることも多いでしょう。そのような状況で待たせてしまうと、さらにクレームが大きくなることが考えられます。
事実確認や解決策の提案に時間がかかる場合は、折り返しの連絡をするようにしましょう。 その際、約束した折り返しの日時は忘れず、必ず連絡するようにしてください。
曖昧な回答をする
クレーム対応では、曖昧な回答や、ただ謝るだけ・とりあえず相槌を打つといった中途半端な対応はNGです。逆にお客様の怒りやイライラを増長させてしまいます。
他部署に関わるクレームを、よくわからないまま自分が知っている範囲で対応するのもNG行為です。あとで担当者から伝える内容が変わってしまうと、どちらが正しいのかと二次クレームにつながります。お客様の怒りを鎮めようと、その場しのぎの返答をするのは避けてください。
クレームを軽視しないことも大切です。お客様があまり怒っていない、重い内容ではないといった理由で対応を変えないようにしましょう。どのクレームにも、一貫した態度で対応することが重要です。
すぐ上司に取り次ぐ
お客様から「上司に代われ」といわれることもあります。そこですぐに取り次いでしまうのは、NG行為です。
すぐに取り次いだために内容をしっかり共有できなければ、電話を代わった上司が再度聞き取りをしなければなりません。同じことを説明しなければならないお客様は、さらにイライラを募らせてしまい、二次クレームにつながりやすくなるでしょう。
上司にすぐ取り次ぐのは、「強く要求すればすぐに責任者を呼び出せる」という印象を与えることにもなります。
「上司に代われ」といわれた場合でも、まずは担当者が内容を確認してください。「自分が責任を持って対応いたします」と伝え、お客様を安心させましょう。
内容をしっかり聞き取ってから、上司に報告します。クレームの内容によって、上司がすぐに電話口に出るか社内で協議が必要になるか、対応も変わります。協議が必要になれば、折り返しの連絡ということになるでしょう。
電話でのクレーム対応をスムーズに行うポイント
電話のクレーム対応をスムーズに行うためには、いくつか押さえるべきポイントがあります。
詳しくみていきましょう。
どんなクレームにも誠意をもって対応する
クレーム電話には、どのような内容でも誠意をもって対応することが必要です。誠意のある対応は、声のトーンや話し方から相手に伝わります。たらい回しにせず、まずは電話に出た人が「私が責任を持ってお話をうかがいます」と、話を聞き取るようにしましょう。
事実の確認などで電話を保留する場合には、何のために保留するのかを明確にして、次のようにお時間をいただけるかを確認します。
- 内容を確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか
- 上司と相談しますので、少々お時間をいただけますでしょうか
ただ「お待ちください」といわれただけで待たされるのでは、お客様は「本当に対応しているのか」と不安になることがあります。理由を伝えることで、納得してお待ちいただけるでしょう。
マニュアルを作成する
クレーム対応のマニュアルを作成することで、対応のクオリティを標準化できます。クレーム対応は、商品・サービスの提供と同じく、誰が対応しても、同じ手順・品質であることが求められます。
クレーム対応の品質が同じであれば、前回の担当者が不在中に同じお客様から電話があっても、同じスタンスで対応できます。
クレームに慣れていない新人や若手社員でも、参照できるマニュアルがあれば安定して対応ができ、急なクレームでも動揺を抑えることができます。
マニュアルを作成する際は、どのような内容にしたいかテーマを決め、どのような人が利用するかを考えながら作ることが大切です。
見てすぐに内容が理解できるようにするためには、テキストのみよりも表や図形を使うと良いでしょう。
マニュアルの内容は、詳細にしすぎないことも大切なポイントです。クレームの内容はさまざまで、実際にクレーム対応する現場では対応が急がれることも少なくありません。詳細なマニュアルでは、うまく参照できない可能性もあるでしょう。
クレーム対応で慌てているような状況でも、何をするべきかがわかるよう、簡潔で見やすい記載が必要になります。
クレーム対応の研修を行う
クレーム対応の品質向上には、研修を行うのも効果的です。研修を通してこれまでの対応を振り返り、ロールプレイングを行いながらスキルを高めることができます。
クレーム対応には課題を抱えている会社も多く、従業員がクレーム対応を苦手としている会社は少なくありません。その背景には、「クレームへの正しい対応方法がわからない」「解決することだけを考え、お客様の心情を理解ができない」といった事情があります。
そのような課題を解決するためには、研修で顧客心理を学習することが大切です。お客様の立場に立って考えることを学ぶことで、正しいクレーム対応の方法を身につけることにつながります。
研修では、ロールプレイングが欠かせません。座学だけでは把握しきれないお客様への心遣いや言葉遣い・表情などは、ロールプレイングで実際に体験することで身につきます。
受講生同士のフィードバックを行うことで、自分の対応がどのように受け取られるかがわかり、学びになります。指導する側も、ロールプレイングによって現在のスキルを確認できるでしょう。
クレームが起こった原因と対策を考える
クレームが起こったときは内容をまとめ、データベース化することが今後に役立ちます。まとめた内容を社内で検討し、原因・解決策を考えることができるでしょう。
どの種類のクレームが多いか分析をし、件数が多いクレームに関する対応策・改善策を考えれば、効率的にクレームの数を減らせます。
社内で考える場を設けることで、新たなアイデアが出るかもしれません。
検討には、次の2つの方法が考えられます。
- ディスカッション
- グループワーク
ディスカッションは、大人数で話し合う形式です。部署内の従業員が集まり、議題を設けて意見を交わします。クレームを経験した従業員が自分の体験や気づいたこと、課題などの意見を出し合うことで、改善策が見えてくるでしょう。
グループワークは、少人数のグループを作り、クレームの原因や解決策を考える形式です。クレーム対応の研修でも採用されています。少人数で話し合うことで意見を出しやすく、従業員の本音も出やすくなることがメリットです。
悪質なクレーマーには毅然とした態度も必要
クレーム対応の品質を高めるとともに、悪質なクレーマーには毅然とした態度を貫かねばなりません。自社に落ち度のない、嫌がらせ目的のクレームは、一般的なお客様からのクレームとは異なります。
「お客様の話を聞き取り、信頼を得て解決策を提案する」といったクレーム対応は通用しません。あくまでも毅然とした態度でのぞむ必要があります。
自社に非がない場合のクレーム対応は、クレーマーに納得してもらうことではなく、連絡がこなくなるようにすることが目指すゴールです。これ以上クレームをつけても対応してもらえないと理解し、諦めてもらわなければなりません。
理不尽な要求は丁寧に断るなど、対応方法を定めて決められたとおりに対応できるようにしましょう。
毅然とした態度でも諦めずにクレームしてくる場合があるかもしれません。自社で手に負えない場合は、弁護士や警察に相談することも視野に入れる必要があります。
その場で解決が難しい場合は折り返しの連絡をする
クレーム対応は、その場で解決することが難しいケースもあります。クレームの内容によっては、自分の責任では回答できないこともあるでしょう。自己判断で回答してしまうと、万が一間違っていた場合に新たなクレームになる可能性もあります。
また、周りが騒がしい状況でクレームを受けた場合、顧客の会話をうまく聞き取れずに適切な対応ができないこともあります。
このような事情がある場合は、謝罪をしたうえで折り返しの連絡をすることを伝えましょう。
折り返しの連絡をする際の伝え方は、次のとおりです。
- 「こちらの件は担当者に確認が必要になりますが、あいにく席をはずしております。連絡が取れ次第、折り返しお客様へご連絡をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
- 「ご指摘いただいた内容について確認させていただきます。少々お時間がかかりますので、折り返しご連絡させていただいてもよろしいでしょうか?」
折り返しの電話をすることで、お客様の気持ちも冷静になりやすい点がメリットです。また、正しい情報を確認でき、上司とも相談できることでクレームを解決しやすくなるでしょう。
電話を折り返す際は、次の点を押さえましょう。
- 相手の都合を聞いて折り返しの日時を決める
- 約束の時間に必ず電話をかける
- 折り返しの回答は行動について詳細を伝える
折り返しの電話は相手の都合の良い日時を聞き取り、その時間にかけることが大切です。折り返し連絡することだけ伝え、時間を決めなかったために相手となかなか連絡が取れなくなった場合、お客様を怒らせてしまう可能性があります。
折り返しの連絡となった場合、お客様は満足する回答をもらえると期待しています。回答がお客様の要望をすべて叶えるものでなかった場合、ただ結果を伝えるだけでは納得していただけないかもしれません。そのような結論に至ったプロセスや行動したことについて、十分な説明が必要です。
クレームを発生させないための対策も必要
クレームへの対策は、実際に起こったときの対応だけでなく、クレーム自体を減らす工夫も大切です。接客や電話の受け答えなど、お客様対応の品質を高めるようにしましょう。
クレームは電話だけでなく、直接の接客やメール対応でも起こり得ます。問い合わせメールの対応漏れや対応スピードの遅さがクレーム原因として多い場合は、メール共有システムの活用が効果的です。
チームでメール対応している場合、メールの見落としで返信漏れが起きたり、メール対応の品質が人により異なっていたりする問題が起こります。クレームの原因になり、対応に追われることになるでしょう。
メール共有システム「メールディーラー」であれば、チーム全員のメールの対応状況を見える化できるため、返信漏れや二重返信といったトラブルを減らせます。
メールテンプレート機能や、マニュアルとして使用できる機能がついているため、対応レベルの品質を高めて顧客満足度の向上につながるでしょう。
メール対応のクレームが多いと感じている方は、メールディーラーの導入をご検討ください。
電話でクレームを受けたときは適切に対応しよう
企業活動では、さまざまなクレーム電話の対応に追われます。商品・サービスや従業員の態度に対する不満など、クレームの内容はさまざまです。適切な対応をすることは顧客満足度の向上や、商品・サービスの改善につながります。対応内容をデータベース化し、社内で検討して改善策を講じることが大切です。
従業員全員が正しくクレーム対応するためには、マニュアルの作成や、ロールプレイングを含めた研修の実施などがおすすめです。
クレーム自体を発生させないための工夫も欠かせません。メール対応のクレーム防止には、メール共有管理システムのメールディーラーが役立ちます。対応状況を可視化し、対応漏れなどのトラブルを防止します。メール対応のクレーム防止を検討している方は、ぜひご活用ください。
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