2024/10/25
近年、企業を取り巻く環境が急速に変化する中、業務効率化は企業の競争力を維持・向上させるための重要な取り組みとなっています。
本記事では、業務効率化のメリットを解説するとともに、15の成功事例を紹介し、それらから読み取れる効率化のポイントについて詳しく解説します。
業務効率化のメリット
業務効率化を進めれば、企業はさまざまなメリットを得られます。主なメリットとして以下の5つが挙げられます。
コストの削減
業務効率化によって、人的リソースや時間、物理的なリソースの無駄を削減できます。たとえば、ペーパーレス化を進めれば印刷コストや保管スペースのコストを削減できるでしょう。また、作業時間の短縮により残業代を抑えることも可能です。
こういった取り組みにより、企業全体のコスト削減につながります。
利益の拡大
業務効率化によって生み出された時間や資源を、新たな事業機会の創出や既存事業の拡大に充てることができます。たとえば、営業スタッフが事務作業の時間を削減できれば、その分顧客との接点を増やし、売上の向上につながる可能性があります。また、製造業であれば生産性の向上により、より多くの製品を生産・販売できるでしょう。
スタッフのモチベーションアップ
単純作業や煩雑な事務作業が自動化すると、スタッフはより創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。これにより、仕事の満足度が向上し、スタッフのモチベーションアップにつながるでしょう。また、業務効率化によってワークライフバランスが改善されることも、スタッフの満足度向上に寄与します。
人材不足の解消
少子高齢化が進む日本では、多くの業界で人材不足が課題となっています。業務効率化によって1人あたりの生産性が向上すれば、人材不足の問題を緩和できます。また、効率化によって魅力的な職場環境を作れば、優秀な人材の確保・定着にもつながるでしょう。
働き方改革の実現
業務効率化は、政府が推進する働き方改革の実現にも大きく貢献します。残業時間の削減、テレワークの導入、有給休暇の取得促進など、さまざまな施策を効果的に実施するためには、業務の効率化が不可欠です。効率化によって柔軟な働き方が可能になり、スタッフのワークライフバランスの向上や多様な人材の活用につながります。
業務効率化の成功事例15選
さまざまな業種・業態における業務効率化の成功事例を15件紹介します。
メール共有・管理効率化の成功事例
株式会社イマジカデジタルスケープは、グループ全体のメール管理の効率化を図るため、メールディーラーを導入しました。
従来、スタッフが個別にメールを管理していたため、情報共有が困難で顧客対応に遅れが生じることがありました。メールディーラーの導入により、グループ全体でのメール共有が可能になり、情報の透明性が向上したそうです。
また、社内チャット機能を使い、拠点が離れているスタッフとの情報共有が簡単になりました。顧客からの問い合わせに対する回答時間が短縮され、顧客満足度が向上しました。
さらに担当スタッフの不在時でも他のスタッフが対応できるようになり、業務の継続性が向上しました。顧客のメールアドレスをクリックすれば、履歴が確認できるため、メールが見つからないストレスからも解放されたそうです。
この事例から、適切なツールの導入によって、コミュニケーションの効率化と顧客対応の質の向上を同時に実現できることがわかります。
こちらの事例について詳しくは以下の記事をご覧ください。
また、業務効率化につながるツールについて、こちらの記事でも解説しています。
営業のナレッジ共有の成功事例
株式会社白崎コーポレーションは、防草シートなどを中心に雑草問題を解決する商品を販売している企業です。営業部門のナレッジ共有を効率化するために、SFAツールを導入しました。
以前は、営業スタッフ個人の経験や知識に依存していたため、ノウハウの共有が難しく、新人教育にも時間がかかっていました。一方、SFAツールの導入により、顧客情報や商談履歴が一元管理されたことで、チーム全体で情報を共有できるようになりました。これにより成功事例や失敗事例をデータベース化し、全社員が参照できるようになったそうです。また、会議のたびに資料を作り直す手間が省けたそうです。
この事例は、ナレッジ共有の仕組みを構築することで、個人の能力に依存しない強い組織づくりが可能になることを示しています。
RPAやExcel自動化の成功事例
三井住友海上火災保険株式会社は、大量の保険契約データを処理する業務にRPA（Robotic Process Automation）とExcelの自動化を導入しました。
従来は、手作業でデータ入力や集計を行っていたため、時間がかかり、ミスも発生していましたが、RPA・Excel自動化の導入により、データ処理時間が大幅に短縮され、作業効率が約3倍に向上しました。1,200時間/月（14.4万時間／年）の労働時間の削減につながったそうです。
単純作業が減り、スタッフが付加価値の高い業務に集中できるようになり、パフォーマンス向上につながりました。さらに、繁忙期の残業時間が削減され、スタッフの働き方改革にも寄与しました。
この事例は、定型的で大量の作業を自動化することで、業務効率と品質を同時に向上できることを示しています。
Web会議導入の成功事例
NTT東日本は、社内コミュニケーションの効率化と移動時間の削減を目的に、Web会議システムを全社的に導入しました。
従来は、遠隔地との会議の際に出張が必要で、時間とコストがかかっていたそうですが、Web会議システムの導入により、時間外労働が約13%減少したそうです。また、月間時間外労働が45時間以上のスタッフ数が約34%減少しました。
この事例は、ICTツールの活用によって、物理的な制約を超えたコミュニケーションが可能になり、業務の効率化とワークスタイルの変革を同時に実現できることを示しています。
データベースの一元管理の成功事例
株式会社マイナビは、人材サービス事業における顧客情報と求人情報の管理を効率化するため、データベースシステムを導入しました。
全社で統一されたデータベースにより、情報の重複入力が解消され、作業効率が向上しました。また、リアルタイムでの情報更新が可能になり、最新の情報に基づいたサービス提供が可能になったそうです。
この事例は、データの一元管理によって、業務効率の向上だけでなく、戦略的な経営判断にも寄与できることを示しています。
環境整備の成功事例
株式会社ブリヂストンは、オフィス環境の改善を通じて業務効率化を図りました。従来の固定席制から、フリーアドレス制を導入し、同時にRPAやIOTによる自動化も行ったそうです。
環境整備の結果、部署間の壁がなくなり、コミュニケーションが活性化したそうです。また生産性の向上も見られ、結果的に年休取得日数や介護休暇取得日数が増加しました。
この事例は、物理的な環境整備が、業務効率化だけでなく、組織文化の変革にも大きな影響を与えることを示しています。
テレワーク推進の成功事例
NECネッツエスアイ株式会社は、働き方改革の一環としてテレワークを全社的に推進しました。ICTツールの導入と業務プロセスの見直しを同時に行い、場所にとらわれない働き方を実現しました。
テレワーク推進など多様な働き方が可能になったことで、スタッフの退職を防ぎ、人材の確保にもつながったそうです。また、ペーパーレス化も行っています。
この事例は、テレワークの導入が単なる勤務形態の変更ではなく、業務プロセス全体の見直しと効率化につながることを示しています。
業務のマニュアル化の成功事例
株式会社唐沢農機サービスは、農業機械の修理・メンテナンス業務の効率化を図るため、詳細な業務マニュアルを作成しました。
従来は熟練技術者の経験に頼っていたため、技術の継承や新人教育に課題がありましたが、マニュアル化により、修理・メンテナンス作業の標準化が進み、作業時間が短縮されました。また、顧客への説明が統一され、サービス品質が向上したそうです。さらに、未経験者やパートスタッフの雇用もしやすくなりました。
この事例は、暗黙知を形式知化することで、組織全体の能力向上と業務効率化を同時に実現できることを示しています。
社内情報共有の効率化の成功事例
株式会社永和システムマネジメントは、社内の情報共有を効率化するため、ビジネスチャットツールとクラウドシステムを導入しました。
従来はメールや対面での情報共有が中心で、情報の伝達や検索に時間がかかっていましたが、Google WorkspaceやWeb会議システムなどの導入により、長時間労働の削減やミス防止につながりました。
また、リアルタイムにやり取りできるチャットツールの導入により、メールの往復が減少し、コミュニケーションの効率が向上しました。場所や時間にとらわれないコミュニケーションが可能になり、テレワークの推進にも寄与したそうです。
この事例は、適切なコミュニケーションツールの選択と活用が、情報共有の質と速度を大きく向上させることを示しています。
ICT化と専門スタッフ雇用による業務効率化の事例
社会福祉法人育和会は、介護サービスの質の向上と業務効率化を目指し、ICT化の推進と専門スタッフの雇用を同時に行いました。
従来は紙ベースでの記録や手作業による情報管理が中心で、介護スタッフの負担が大きく、情報の正確性にも課題がありました。そこでICT化の一環として、タブレット端末を導入し、介護記録のデジタル化を実現しました。同時に、ICTシステムの管理や分析を行う専門スタッフを新たに雇用しました。これにより、介護スタッフはシステムの操作や管理に時間を取られることなく、本来の介護業務に集中できるようになったそうです。
この事例は、ICT化と人材戦略を組み合わせることで、業務効率化とサービス品質の向上を同時に実現できることを示しています。また、専門性の高い業務を適切に分担し、各スタッフが自身の専門性を最大限に発揮できる環境を作り出すことの重要性も示唆しています。
ペーパーレス化推進の成功事例
疋田産業株式会社は、社内のペーパーレス化を推進することで業務効率化を図りました。
ペーパーレス化を推進するため、同社はまず電子決裁システムを導入し、既存の紙文書を順次電子化していきました。同時に、新規作成される文書はすべて電子データとして保存し、社内での承認プロセスもデジタル化を進めたそうです。
これらの取り組みにより、文書の検索時間を短縮することに成功し、稟議から決裁までのスピードは高まったそうです。
この事例は、ペーパーレス化が単なるコスト削減策ではなく、業務プロセス全体の効率化と働き方の変革につながることを示しています。また、環境への配慮と業務効率化の両立が可能であることも示唆しています。
ワークフローのデジタル化の成功事例
ヨネックス株式会社は、社内の各種申請・承認プロセスをデジタル化することで業務効率化を実現しました。
従来は紙の申請書を使用し、承認者のデスクを順に回覧する方式だったため、処理に時間がかかり、書類の紛失や滞留も問題となっていました。
同社はクラウド型のワークフロー管理システムを導入し、さまざまな社内手続きをデジタル化しました。申請者はシステム上で必要事項を入力し、承認者はメールで通知を受け取ってシステム上で承認作業が行えます。また、承認状況をリアルタイムで確認できるようになり、処理の遅延を防ぐことができるようになりました。この取り組みにより、申請から承認までの平均処理時間が約1/5に短縮されたそうです。
この事例は、ワークフローのデジタル化が単なる事務作業の効率化だけでなく、組織全体の意思決定プロセスの改善にもつながることを示しています。また、蓄積されたデータを活用した継続的な業務改善の可能性も示唆しています。
情報蓄積とタスクの一括管理の成功事例
きずな綜合会計事務所は、クライアントの情報管理とタスク管理を一元化するシステムを導入し、業務効率化を実現しました。
従来は、クライアント情報や議事録、チーム内のタスクを一括で管理する方法がなく、情報共有や進捗管理に課題がありました。そこで同事務所は、クラウド型の顧客管理・タスク管理システムを導入し、すべてのクライアント情報とタスクを一元管理できるようにしました。
システム上でクライアントごとの対応履歴や提出書類の期限、スタッフの割り当てなどを管理し、全スタッフがリアルタイムで情報を共有できるようになったそうです。
この事例は、情報の一元管理とタスク管理の統合が、業務効率の向上だけでなく、サービス品質の向上や戦略的な事業展開にも寄与することを示しています。また、小規模な専門サービス事業者でも、適切なシステム導入により大きな効率化が可能といえるでしょう。
勤怠管理の効率化の成功事例
株式会社カクヤスは、複数の拠点を持つ酒類販売業として、勤怠管理の効率化に取り組みました。
従来は紙のタイムカードと手作業での集計を行っていたため、労務管理に多くの時間とコストを要することが課題でした。また、スタッフの勤務実態を正確に把握することが難しく、労働時間管理にも課題がありました。
そこで同社はクラウド型の勤怠管理システムを導入し、全拠点の勤怠データを一元管理できるようにしました。打刻漏れや勤怠エラーにも対応でき、勤怠管理者の負担を軽減できたそうです。
この事例は、勤怠管理の効率化が単なる事務作業の省力化だけでなく、労務管理の質的向上や経営戦略の立案にも寄与することを示しています。また、スタッフの働き方の可視化が、働き方改革の推進にも効果的といえるでしょう。
顧客情報と業務進捗の一括管理の成功事例
株式会社電力サポート中国は、顧客情報と申込みから請求までを管理できるツールを導入しました。
同社では、新規事業を立ち上げるにあたり、複数拠点での情報共有やワークフローに課題があったそうです。そこで統合型業務管理システムを導入し、顧客情報、設備情報、点検スケジュール、作業報告書をすべて一元管理できるようにしました。これにより、スタッフは現場で直接作業報告を入力し、リアルタイムで情報を共有できるようになりました。
この事例は、フィールドサービス業務における情報の一元管理と業務のデジタル化が、業務効率の向上だけでなく、サービス品質の向上や戦略的な業務改善にも大きく寄与することを示しています。また、現場作業と事務作業の連携を強化すれば、組織全体の生産性を高められるでしょう。
成功事例から読み取る業務効率化のポイント
これまで紹介してきた15の成功事例から、効果的な業務効率化を実現するためのポイントを抽出し、解説します。これらのポイントは、業種や規模を問わず、多くの企業で応用可能なものです。
現状の課題を把握する
業務効率化を成功させるための第一歩は、現状の課題の正確な把握です。
株式会社イマジカデジタルスケープの事例では、メール管理の非効率さが明確に認識されていたからこそ、適切なソリューションを導入することができました。
課題の把握には、スタッフへのヒアリングや業務プロセスの可視化、データ分析などの手法が有効です。表面的な問題だけでなく、その根本原因を特定することが重要です。
目的を明確にする
業務効率化の取り組みを始める前に、その目的を明確にすることが重要です。NTT東日本のWeb会議導入事例では、移動時間の削減と迅速な意思決定が明確な目的として設定されていました。目的が明確であれば、効果的な施策を選択しやすくなり、また、取り組みの成果を適切に評価できます。
単なるコスト削減だけでなく、顧客満足度の向上やスタッフのワークライフバランスの改善など、多角的な視点での目的の設定が望ましいでしょう。
無駄な業務を洗い出す
効率化を進める上で、現在行われている業務の中から無駄を洗い出すことが重要です。疋田産業株式会社のペーパーレス化の事例では、紙の文書管理に関わるさまざまな無駄が特定され、それらを解消することで大きな効率化が実現されました。
無駄な業務の洗い出しには、業務プロセスの可視化やタイムスタディなどの手法が有効です。また、「この業務は本当に必要か」という視点で既存の業務の見直しも重要です。
優先順位をつける
すべての課題を一度に解決しようとするのではなく、優先順位をつけて段階的に取り組むことが効果的です。
実際、株式会社カクヤスの勤怠管理の効率化事例では、まず最も負荷の高かった勤怠データの集計業務に焦点を当てて改善を行いました。
優先順位の設定には、業務への影響度、実現の容易さ、コストなどを総合的に考慮する必要があります。短期的に成果が出やすい項目から着手すれば、組織全体のモチベーションを高められるでしょう。
実現可能な体制を構築する
業務効率化の取り組みを成功させるには、適切な推進体制の構築が重要です。
社会福祉法人育和会のICT化の事例では、システムの導入だけでなく、それを効果的に活用するための専門スタッフを雇用することで、持続可能な体制を構築しました。効率化の取り組みを推進するチームを組織し、役割分担と責任の明確化を行ったことが効果的でした。
体制の構築を進める場合、トップマネジメントのコミットメントを得れば、組織全体の協力を得やすくなります。さらに、現場の声を反映させる仕組みを作ることで、実態に即した効率化を進められるでしょう。
自動化を取り入れる
多くの成功事例に共通するのは、適切な自動化の導入です。
三井住友海上火災保険株式会社のRPA導入事例では、定型的な作業を自動化することで大幅な効率化を実現しました。自動化を検討する際は、単に人の作業を機械に置き換えるのではなく、業務プロセス全体の見直しや最適化が重要です。
また、自動化の対象となる業務の選定には、作業の頻度、複雑さ、エラーの発生しやすさなどを考慮します。ただし、すべての業務の自動化が最善とは限らず、人間の判断が必要な業務と自動化できる業務の適切な切り分けが大切です。
データベースを活用する
情報の一元管理とデータベースの活用は、多くの成功事例に見られる重要なポイントです。株式会社マイナビの事例では、データベースの一元管理により、情報の精度向上と業務効率化を同時に実現しました。
データベースを構築する際は、必要な情報を漏れなく収集し、かつ冗長性の排除が重要です。また、セキュリティにも十分配慮し、適切なアクセス権限の設定や暗号化などの対策を講じる必要があります。さらに、蓄積されたデータを分析し、業務改善や戦略立案に活用すれば、データベースの価値を最大化できます。
マニュアルを作成する
効率化の取り組みを組織に定着させるには、適切なマニュアル化が効果的です。株式会社唐沢農機サービスの事例では、詳細な業務マニュアルの作成により、技術の標準化と効率的な人材育成を実現しました。
マニュアルを作成する際は、単なる作業手順の羅列ではなく、その作業の目的や背景も含めた記述が重要です。また、マニュアルは定期的に見直し、最新の状況に合わせて更新する仕組みを構築することも必要です。デジタル化されたマニュアルを導入すれば、検索性や更新の容易さが向上し、より効果的に活用できるでしょう。
まとめ
成功事例を読み解くと、業務効率化は単なるコスト削減策ではなく、企業の競争力強化やスタッフの働き方改革、顧客満足度の向上など、多面的な効果をもたらす重要な経営戦略であることがわかります。
効果的な業務効率化を実現するためには、現状の正確な把握、明確な目的設定、適切な優先順位づけ、実現可能な推進体制の構築、そして自動化やデータベースの活用など、さまざまな要素を総合的に検討し、組織の実情に合わせて最適な施策の選択が重要です。
業務効率化の取り組みは、単に業務のスピードを上げることだけが目的ではありません。効率化によって生み出された時間や資源を、より創造的な業務や顧客サービスの向上、スタッフの能力開発などに振り分ければ、組織全体の価値向上につながるでしょう。経営者や管理者は、この点を常に意識しながら、戦略的な業務効率化の推進が求められます。
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