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コールセンターは、顧客対応を行う重要な業務部門です。特に顧客からの問い合わせやクレームを迅速かつ的確に処理することは、企業の信頼性や顧客満足度に大きな影響を与えます。このような状況で、コールセンターのパフォーマンスを正確に評価し、改善を図るために欠かせないのがKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)です。
本記事では、コールセンターで用いられる代表的なKPI指標を19項目にわたって詳述し、KPI設定の重要性についてご紹介します。
KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)は、企業や組織が定めた目標達成度を測るための指標です。一般的には、目標を達成するために必要なパフォーマンスの基準を示し、中間目標として使用されます。KPIは、企業の戦略や業務プロセスに応じて設定されるものであり、コールセンターにおいても同様に、顧客満足度や業務効率を向上させるために重要な役割を果たします。
コールセンターにおけるKPIは、主に顧客対応の品質や効率性を評価するために設定されます。たとえば、通話応答のスピードや処理時間、顧客の満足度などがKPIとして使用され、これらを改善すると、顧客の体験を向上させ、企業の評価を高められるでしょう。
コールセンターで用いられるKPI指標
コールセンターにおけるKPI(重要業績評価指標)は、業務の進捗や顧客対応の品質を測るための重要なツールです。これらの指標を適切に活用すれば、コールセンターの運営が効率的になり、顧客満足度の向上を実現できます。
以下では、コールセンターでよく用いられるKPI指標について、特に重要なものをいくつか紹介します。
応答率
応答率は、コールセンターにかかってきた電話のうち、一定の時間内に応答できた電話の割合を示す指標です。
顧客が電話をかけた際、どれだけ迅速にスタッフが対応できるかは、顧客体験の重要な要素となります。この指標が高ければ、顧客は長時間待たされず、スムーズに対応を受けられるため、顧客満足度の向上に直結します。
応答率を高めるには、適切なスタッフの配置やシフトの管理が求められます。特にピーク時に対応する人数を調整し、常に待機するスタッフの確保が重要です。また、システムやツールの活用も効果的です。たとえば、IVR(自動音声応答)やチャットボットを利用すれば、簡単な問い合わせに迅速に対応でき、スタッフの負担を軽減し、応答率を改善できるでしょう。
放棄呼率
放棄呼率は、顧客が長時間待機している間に電話を切ってしまう割合を示す指標です。
放棄呼率が高い場合、顧客は対応を待ちきれずに電話を切ってしまったことになります。この指標は、顧客の不満やストレスの一因となるため、できるだけ低く抑えなくてはいけません。
放棄呼率の低減には、応答率の向上が必要です。顧客が電話を切る前に応答できるよう、体制を整えなければなりません。さらに、顧客に待機中の情報の提供も有効です。たとえば、「現在、オペレーターは3人待機しています」などの情報を伝えれば、顧客は待機時間を理解し、安心して待てるでしょう。加えて、待機時間の長さに応じて、自動的に割引や特典を提供するなどの施策を講じることも一つの方法です。
稼働率
稼働率は、スタッフが実際に通話や業務処理を行っている時間の割合を示す指標です。
高い稼働率は、スタッフが無駄な時間を過ごすことなく効率的に働いていることを示し、業務のコストパフォーマンスの向上にもつながります。この指標は、コールセンターのリソースをどれだけ有効活用できているかを評価するために重要です。
稼働率を高めるには、スタッフのシフト管理やタスクの効率化が必要です。たとえば、スタッフが通話の合間に無駄な待機時間を過ごさないよう、タスクを柔軟に割り当てが求められます。また、業務のピーク時には必要な人数を確保し、高い稼働率を維持することが必要です。リソースの適切な配置によって、稼働率を改善し、コスト削減にもつながります。
平均応答速度
平均応答速度は、コールセンターで受け付けた電話に対する平均的な応答までの時間です。
顧客が電話をかけてからスタッフが応答するまでの時間が長ければ、顧客は不安や不満を感じる場合があります。したがって、平均応答速度の短縮は、顧客満足度を高めるために重要な要素となります。
平均応答速度を改善するには、コールセンターのスタッフ数を適切に配置し、常に必要なリソースがそろっている状態を維持しましょう。また、AI技術や自動音声応答システム(IVR)の導入により、簡単な質問や手続きの自動化も、応答速度の向上に寄与するでしょう。さらに、スタッフの教育やトレーニングを行い、通話の処理スピードを上げることも有効とされています。
平均処理時間
平均処理時間は、スタッフが顧客の問い合わせを受けてから通話を終了するまでにかかる平均的な時間です。
この指標は、業務の効率性を測るために非常に重要であり、短縮すべきポイントを把握できます。しかし、単に時間を短縮するだけではなく、顧客の問題の的確な解決が重要とされています。
平均処理時間を短縮するには、スタッフのスキル向上やマニュアルの整備が求められるでしょう。たとえば、スタッフが効率よく問題解決できるよう、よくある質問や対応方法を整理したデータベースの用意が有効です。また、システムの改善や業務フローの見直しによって、処理時間の短縮が可能です。ただし、顧客満足度を損なわないようにするため、品質と速度のバランスを取りましょう。
平均通話時間
平均通話時間は、顧客との1回の通話にかかる平均的な時間です。
この指標は、コールセンターの効率性を測る上で基本的なものであり、過度に長くても短くても、業務の改善点を示すサインとなります。顧客との通話が長すぎる場合、問題解決が遅れている可能性があり、短すぎる場合は、顧客の問題を十分に理解していない可能性が考えられるでしょう。
平均通話時間を適切に設定するには、問題解決のスピードと顧客の満足度を考慮し、必要な時間の見極めが求められます。通話時間が長くなる理由には、顧客の問題が複雑である場合や、スタッフが不十分な情報で対応している場合などが考えられます。そのため、スタッフが効果的に対応できるよう、スキルやツールの提供が必要です。
平均後処理時間
平均後処理時間は、通話が終了した後に行うデータ入力や処理にかかる平均的な時間を示します。
後処理は、顧客対応の一環として非常に重要ですが、時間がかかりすぎると、次の通話に遅れが生じ、全体の業務効率が低下する場合があるでしょう。
平均後処理時間を短縮するには、スタッフの入力スキル向上やシステムの改善が重要です。たとえば、簡単な情報の入力を自動化するツールを導入すれば、後処理の時間短縮につながるでしょう。また、スタッフが迅速かつ正確に処理を行えるよう、マニュアルやガイドラインの整備も効果的です。
サービスレベル
サービスレベルは、設定した時間内に応答できた電話の割合で、コールセンターにおける応答の迅速さや品質を示す重要なKPIです。
通常、サービスレベルは「一定の時間内に何パーセントの電話が応答されるか」という形で設定されます。たとえば、「80%の電話が30秒以内に応答される」などの具体的な目標が設定されるのが一般的です。この指標は、顧客がどれだけ迅速に対応を受けられるかを測るものです。
サービスレベルの維持には、適切なスタッフ配置とシフト管理が不可欠です。コールセンターが繁忙期やピーク時に適切なリソースを確保できていない場合、サービスレベルが低下し、顧客の不満を招く可能性があります。逆に、サービスレベルを適切に設定すれば、顧客の満足度を向上させ、ブランドの信頼性を高められるでしょう。
コストパーコール
コストパーコールは、1件の通話を処理するためにかかる費用を示す指標です。この指標は、コールセンター運営の効率性を評価するために非常に重要です。
コストパーコールが高すぎる場合、リソースの過剰使用や非効率なスタッフの配置が問題となっている可能性があります。逆に、コストパーコールが低すぎると、サービスの品質や顧客満足度に影響を及ぼす可能性があるため、適切なバランスを取ることが求められます。
コストパーコールを削減するには、まず業務フローの効率化が必要です。たとえば、スタッフのスキルを向上させれば、同じ時間内に多くの通話を処理できるようになるでしょう。また、ITツールの活用や自動化技術を導入すれば、業務の効率性を高め、無駄なコストを削減できます。しかし、コスト削減が品質を犠牲にしないように、十分なトレーニングとサポートが重要です。
顧客満足度
顧客満足度は、コールセンターにおける最も重要な指標の一つであり、サービスの質を反映するものです。
この指標は、顧客がコールセンターでの体験をどれだけ満足しているかを示し、通常はアンケート調査やフィードバックを通じて測定されます。顧客満足度が高ければ、顧客のリピート利用やブランドへの信頼が向上し、ビジネスにとって良い影響を与えるでしょう。
顧客満足度を高めるには、まずスタッフが顧客の問題を正確かつ迅速に解決することが求められます。また、顧客の声を反映させるために、定期的にフィードバックを収集し、その結果を改善策に活かすことも大切です。顧客が満足していれば、口頭での対応だけでなく、後処理の精度や、応対後のフォローアップも重要な要素となります。これらを改善すれば、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
顧客推奨度
顧客推奨度は、顧客が他の人にそのコールセンターのサービスを推奨するかどうかを示す指標です。
この指標は、通常、ネットプロモータースコア(NPS®)を用いて測定されます。NPSは、「0〜10のスケールで、どれくらい他人に推薦するか?」という質問に基づき、推奨する可能性が高い顧客の割合と低い顧客の割合を計算するものです。
顧客推奨度は、顧客満足度と強く関連しており、高い顧客推奨度は、コールセンターのサービスが優れていることを示します。顧客が自ら進んでサービスを他の人への推奨は、ブランドの信頼性や評判を築く上で非常に重要です。顧客推奨度を高めるためには、まず顧客の期待を超えるサービスの提供が必要です。また、顧客からのフィードバックを反映させ、サービス向上につながる改善策を講じましょう。
クレーム発生率
クレーム発生率は、コールセンターで発生するクレームの割合を示す指標です。
この指標は、顧客満足度を測るために重要な要素です。クレーム発生率が高い場合、サービスに問題がある可能性が高いため、迅速に問題を特定し、改善策を講じましょう。
クレームを減少させるには、顧客とのやり取りにおいて不満を抱かせないよう、事前にトラブルの原因を予測し対策を講じることが重要です。また、スタッフの教育やトレーニングを徹底し、顧客の問題に適切に対応できるようにしましょう。さらに、クレームを受けた際には、迅速かつ適切な対応を行い、顧客の信頼の回復が必要です。
Thanks Call発生件数
Thanks Call発生件数は、顧客からお礼の電話やメールなどをいただいた件数を指します。
Thanks Callは、良好な顧客関係の構築に貢献します。件数は、CTS/CRMなどのツールを用いて集計されます。この件数は、顧客満足度を図る目安となるでしょう。
一次完結率
一次完結率は、顧客が最初のコンタクトで問題が解決された割合を示す指標です。
この指標は、問題解決能力やスタッフの対応力を測る上で非常に重要です。一次完結率が高い場合、顧客は複数回の電話をかけることなく、1回の通話で問題が解決されたことになります。これにより、顧客満足度が向上し、スタッフの効率も高まるでしょう。
一次完結率を向上させるためには、スタッフに十分な知識やスキルを提供し、問題解決に必要な情報を迅速にアクセスできるようにします。また、コールセンターのシステムを改善し、効率的な情報共有ができるような環境の整備も効果的です。一次完結率が高いことは、顧客との信頼関係を築くためにも重要です。
ミス率
ミス率は、コールセンターのスタッフが業務中に犯すミスの割合です。
この指標は、スタッフの能力や業務の正確性を測る上で重要なものです。ミス率が高い場合、顧客に誤った情報を提供してしまったり、問題解決が遅れたりする可能性があります。
ミス率を減らすには、スタッフのトレーニングやサポートの強化が重要です。また、業務フローの見直しやシステムの改善を行えば、ミスを減らせるでしょう。ミスが発生した際には、その原因を迅速に特定し、改善策を講じることが求められます。
エスカレーション率
エスカレーション率は、スタッフが解決できない問題を上司や他の専門スタッフに引き継ぐ割合を示す指標です。
この指標は、問題解決の難易度やスタッフのスキルに関連しています。エスカレーション率が高すぎる場合、スタッフが問題解決に必要なスキルや知識を十分に持っていないケースが考えられます。
エスカレーション率を低く保つためには、スタッフへの教育を充実させ、問題解決へのスキル向上が必要です。また、業務フローやシステムの改善によって、解決可能な問題を迅速に処理できる環境を整えましょう。
保留発生率
保留発生率は、顧客が通話中に保留される割合を示す指標です。
頻繁に保留されると顧客は不安やストレスを感じてしまうため、保留発生率はできるだけ低い値にとどめましょう。保留発生率を低く抑えるためには、スタッフが迅速に対応できるような環境を整える必要があります。
欠勤率
欠勤率は、コールセンターのスタッフが予定していた勤務日に欠勤した割合を示します。
この指標は、スタッフの出勤率や労働環境の健全性を測るために重要です。欠勤率が高い場合、スタッフのモチベーションや労働環境に問題が発生している可能性があります。
離職率
離職率は、コールセンターで働くスタッフが一定期間内に退職する割合です。
この指標は、職場環境や労働条件の良し悪しを反映するものです。高い離職率は、スタッフの不満や業務の負担が大きすぎることを示唆しており、改善が求められます。
コールセンターでKPIを設定する重要性
コールセンターの運営において、KPI(重要業績評価指標)の設定は、その効果的な管理と改善に欠かせない要素です。KPIは、コールセンターの業務が目標に向かって進んでいるかを測定するための指標であり、運営者やスタッフがどのように業務を遂行すべきかを具体的に示します。これを設定すると、コールセンターのパフォーマンスを正確に把握し、改善策を講じるための道筋を見つけられるでしょう。
また、KPIの設定は、顧客満足度の向上や運営コストの削減など、具体的な成果を生み出すためにも重要な手段となります。
現状と課題を把握しやすくなる
KPI設定の大きな利点の一つは、現状を客観的に把握できる点です。KPIは数値で表されるため、コールセンターが現在どのような状況にあるのか、どの部分に課題があるのかを明確に把握できます。たとえば、応答率や顧客満足度、平均通話時間といったKPIを測定すれば、スタッフがどれだけ効率的に業務をこなしているか、顧客対応に問題がないかがリアルタイムでわかるでしょう。
さらに、KPIは業務の透明性を高める効果もあります。数字で表現されるため、運営者や管理者が部門間で問題を共有しやすくなります。たとえば、顧客からの苦情が増えている場合、その原因をKPIのデータを基に特定できるため、迅速な対応が可能です。また、KPIを通じて、問題が顕在化する前に予兆を捉えられ、未然にトラブルを防ぐための予防策を講じられるでしょう。
このように、KPIを設定することで、現状の正確な把握と、どこに改善が必要かを的確に理解できます。これにより、コールセンターが効率よく運営されるとともに、問題点に対して迅速な対策を講じられるのです。
目標を達成しやすくなる
KPIは、目標達成のための道しるべとして機能します。コールセンターにおいては、スタッフ一人ひとりのパフォーマンスや全体の業務運営を高めるために、具体的な数値目標の設定が重要です。
たとえば、サービスレベルの目標を「80%の電話を30秒以内に応答する」という形で定められ、スタッフはその目標に向かって具体的に行動を起こせます。KPIがあると、単なる抽象的な目標ではなく、実現可能な具体的な成果を目指せるでしょう。
また、KPIはスタッフのモチベーションを高める効果もあります。明確な目標が示されることで、各スタッフは自身の仕事の進捗や成果を測定でき、その結果に対してフィードバックを受けられるでしょう。このフィードバックはポジティブなものだけでなく、改善が必要な部分に対する指摘も含まれるため、スタッフは自己改善につながるアクションを取れます。特に目標達成が評価される仕組みを導入すると、スタッフは達成感を得るとともに、次回の目標設定に対する意欲を高められるでしょう。
KPIは、コールセンターのパフォーマンスを定期的に測定するためにも役立ちます。定期的にKPIを振り返り、進捗を確認すると、目標に対する進捗を把握できます。目標達成までの道のりが明確になれば、日々の業務が目標に向かって着実に進んでいることが確認でき、組織全体が一体感を持って目標達成に向かって進めるでしょう。
さらに、KPIを通じて得られたデータを元に改善策を講じれば、目標達成の可能性を高められます。たとえば、目標の達成が難しい場合、どのKPIが達成できていないのかを特定し、そこに対して集中的な改善策を実施できます。これにより、目標達成が現実的なものとなり、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
KPIを設定し、それに基づいて目標を追い続けることは、コールセンターの効率的な運営を実現するために不可欠な要素です。目標に対して明確な指標を持ち、それを達成するための具体的な行動を取れるため、業務の改善や成果の向上が期待できるのです。
まとめ
コールセンターにおけるKPIの設定は、業務効率の向上と目標達成に不可欠な要素です。KPIを通じて、現状のパフォーマンスを把握し、改善点を明確化できます。具体的な数値目標を設ければ、スタッフが目的に向かって意識的に行動し、業務改善が進みます。また、KPIによって得られたデータを基に問題点を特定し、迅速に対策を講じられます。最終的に、KPIを活用すれば、コールセンター全体の効率性が向上し、顧客満足度や業績の向上にもつながるでしょう。
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