コールセンターは、電話を通してお客様とやり取りする部門です。お客様からの問い合わせに対して回答する、電話をかけて新商品やサービスの案内をする、アンケートに答えてもらうなど、さまざまな業務を行います。
そんなコールセンターは、慢性的に多くの課題を抱えているといわれています。具体的にどのような悩みがあるのでしょうか?
本記事では、コールセンターでよくある課題とその原因を解説したうえで、解決のためのヒントをご紹介します。
コールセンターでよくある課題
コールセンターには、以下のような課題があります。
- 人手不足
- 離職率の高さ
- 教育の難しさ
- 対応時間の制限
- 顧客満足度の低下
順番に解説します。
人手不足
コールセンターは、慢性的な人手不足が大きな課題とされています。
コールセンターは、繁閑の差が激しいのが特徴です。そのため、繁忙期にあわせて人員を揃えると、閑散期には余剰人員が発生するリスクがあります。必要な時期に必要な人員だけ揃えようとすると、契約社員やパート、アルバイトなどの採用がメインになります。
しかし、こういった非正規職員は定着しづらいため、常に人手が足りなくなるのです。
その上、コールセンターは、高度な商品知識や適切な接客態度など、一定のスキルが必要です。人材を募集しても、なかなか条件を満たす人が見つかりにくいことも、人手不足を解消できない一因でしょう。
離職率の高さ
コールセンターは、離職率が高いことも課題です。
コールセンターの離職率が高い理由のひとつは、ストレスにあるといわれています。コールセンターの仕事は、顧客の質問に答えるだけではありません。顧客から受けるクレームに対応する必要もあり、場合によっては精神的に圧迫されることもあるでしょう。
コールセンターで働き始めたものの、業務内容が想像以上にハードで、一人前になる前に心が折れて離職してしまうケースは少なくありません。
それだけストレスを受ける厳しい業務であるのに、オペレーターは地位が高くないことも問題です。非正規での採用がメインとなるので、正規雇用と比較すると、給与や賞与、福利厚生などで劣ります。そのため「仕事の内容に見合わない」と感じる人は少なくありません。そういった人はモチベーションが上がらずに、やがて離職してしまうのです。
教育の難しさ
コールセンターは、優秀なオペレーターを育てることが難しいことも課題です。
コールセンターのオペレーターは、サービス品質にバラツキがあってはいけません。誰が顧客に対応しても、同じクオリティでの対応が求められます。また、顧客からの問い合わせに迅速に、しかも正確な回答を返すには、商品やサービスの高度な知識が必要です。新商品がリリースされる度に、覚えることは増えていきます。
しかし、オペレーターを教育するのはそう簡単ではありません。人材が不足しているため、教育したくても指導担当者も対応に追われてしまい、教育する時間がないのです。そもそも人の入れ替わりが激しく人が育たず、新人教育を担当できる人がいないコールセンターも珍しくないようです。
対応時間の制限
有人で顧客対応するコールセンターの場合、対応時間に制限が出ることも課題です。
顧客からの問い合わせは、24時間365日いつ発生するか分からず、コールセンターは年中無休で稼働させるのが理想です。しかし、人件費の問題などもあり、「午前9時から午後6時までの就業時間内」としているところが多いです。企業によっては、土日はお休みしているところも少なくありません。
対応時間が限られてしまうと、昼間に働いている顧客は問い合わせしづらくなり、機会損失につながります。また、トラブルが発生して困っている人は、問題の解決に時間がかかり、不満を持つ可能性も高まるのです。
顧客満足度の低下
ここまでご紹介してきた課題は、結果的に顧客満足度の低下につながります。
人手が不足していると、電話がなかなかつながらず、顧客はストレスがたまります。教育が不足しているオペレーターからは、満足な回答を得られません。問い合わせたいときにコールセンターが時間外になっていることも、顧客は不満に思います。
顧客満足度を上げることが使命であるのに、その役割を果たせず悩んでいるコールセンターも多いのです。
コロナ禍におけるコールセンター継続の難しさ
2020年から世界を混乱に陥れたコロナ禍の影響で、コールセンターを継続するのは難しくなってきています。
三密を避けるために行動様式は変化し、在宅勤務を採用する企業が増え、出社を避ける動きが広がりました。そのため多くのオペレーターが同時に働く、大規模なコールセンターを設置することも難しくなりつつあります。
かといって、コールセンターで在宅勤務を導入するのは容易ではありません。オペレーターを在宅で勤務させるには、自宅から顧客情報へ安全にアクセスする仕組みの構築、電話機やパソコンの貸与などが必要です。しかし、それらはコロナ禍が収束すれば不要になります。そのため在宅勤務を導入すべきか、時間やコストをどこまでかければいいのかを判断するのは困難です。
そのため現状では、密を避けるためにオペレーターの数を減らすといった対策を取り、コールセンターの規模を縮小して稼働を続けるのが現実的です。ただし顧客の問い合わせに対する応答率が下がり、顧客満足度が下がることは避けられません。そのため、少しでも顧客満足度を低下させない方法を検討する必要があります。
次章では、コールセンターの抱える課題を解決する方法を、いくつかご紹介します。
コールセンターの課題の解決ヒント
ここまでご紹介してきた、コールセンターが抱えるさまざまな課題を解決する方法としては、以下の3つが考えられます。
- 代行サービスの利用
- FAQページの活用
- 教育の難しさ
- チャットボットの設置
それぞれどのような内容か解説します。
代行サービスの利用
代行サービスを利用するのは、コールセンターの課題を解決する方法のひとつです。
代行サービスとは、企業の仕事や業務の一部を代わりに行うサービスを指します。コールセンターの業務を外部に委託すれば、人材不足の問題を解決することが可能です。さらに、オペレーターの教育を考える必要もなくなります。依頼する内容によっては、対応時間の問題もクリアできるかもしれません。
ただし、代行サービスを利用するには一定のコストがかかります。基本的に、自社でオペレーターを採用してコールセンターを維持するよりも、高額になる可能性が高いでしょう。予算を確保できない場合には、おすすめできない方法です。
FAQページの活用
FAQページを有効活用するのも、コールセンターの課題を解決する方法のひとつです。
FAQページとは、顧客からよく寄せられる質問を集めて一覧にしたものです。顧客がホームページにアクセスしてFAQを利用すれば、自力で問題を解決できるようになり、コールセンターの業務削減につながります。
FAQページは、すでに自社サイトに設けている企業が多いでしょう。しかし、ページ自体はあるものの、うまく顧客に活用されていないと悩んでいる企業は少なくありません。
FAQページを顧客にもっと利用してもらうには、以下のような対策を打ちましょう。
- よくある質問を一番上に配置するなど検索性を高める
- FAQページの活用
- 古い内容は削除する、最新の情報にアップデートするなど内容を見直す
- トップページの目立つ場所にボタンを配置する、お問い合わせボタンの前に入り口を表示するなど設置場所を工夫する
利用率が上がって顧客からの入電が減れば、オペレーターの負担を軽減できます。
チャットボットの設置
チャットボットを導入することでも、コールセンターの業務の一部を自動化できます。
チャットボットとは、会話を意味する「チャット」と「ロボット」を組み合わせた造語で、自動応答プログラムを指します。ボットと会話することで、疑問や質問に対する答えを引き出すことができます。
ECサイトやホテルの予約システムの片隅に、「ご質問はありませんか?」と小さなウィンドウが開いているのを見た、あるいは実際に使ったことがある人もいるのではないでしょうか。
チャットボットを導入すると、オペレーターの代わりに顧客の質問に答えてくれるので、顧客からの入電を減らして業務量を削減できます。業務量が減れば、オペレーターも減らせることから人手不足の解消も可能です。さらにチャットボットは人間と違って24時間365日稼働できるため、対応時間の制限も撤廃できます。
また、顧客にとっても、問い合わせのハードルが下がる・すぐに返事がもらえるといったメリットがあります。チャットボットを導入すると、結果的に顧客満足度を上げることにもつながるのです。
次章では、チャットボットの導入についてもう少し詳しく見ていきます。
コールセンターの課題を解決?チャットボットの設置について
コールセンターの課題解決に大いに役立つチャットボットには、どのような種類があるのか紹介します。
チャットボットの種類
チャットボットには、「AI型」と「シナリオ型」があります。それぞれの特徴やメリットデメリットをまとめました。
AI型
AI型のチャットボットは、顧客が入力した質問文のなかに含まれるキーワードを拾いだし、対応する回答を返すことが特徴です。顧客は自由に質問を入力できるので、ロボットと自然に会話しているようにサポートを受けられます。
AI型のチャットボットは、AIが顧客との対話を機械学習することで、回答の精度が上がっていくことがメリットです。しかし会話データが少ない間は、うまく会話を続けられなかったり、適切な回答を返せなかったりする可能性があります。
シナリオ型
シナリオ型のチャットボットは、チャット画面に表示された選択肢を顧客が選び、その内容にあわせて最適な回答、あるいはさらに別の選択肢を提示することで顧客との会話を進めます。つまりボットは与えられたシナリオに沿って分岐を繰り返しているだけであり、実際に会話を認識しているわけではありません。そのためシナリオ型のチャットボットは、「ルールベース」とも呼ばれます。
シナリオ型のチャットボットは、AI型より安価に導入できることがメリットです。すでにFAQが用意されているなら、導入も容易です。一方シナリオ型は、複雑な質問に回答するには向きません。多くの質問に対応させようとすると、膨大なルールを設定する必要があることがデメリットです。
チャットボットの導入メリット
チャットボットをコールセンターに導入することで得られるメリットを、まとめてご紹介します。
- 顧客からの入電が少なくなり業務量が減る
- 業務量が減るのでオペレーターの人数も減らせる
- 対応時間の制限を撤廃できる
- いつでも回答を引き出せるので顧客満足度が上がる
このように、チャットボットを導入すると、コールセンターが抱える多くの課題を解決できます。人材の確保や対応時間の制限などに悩んでいるなら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
コールセンターは、人材不足や対応時間の制限など、多くの課題を抱えています。さらにコロナ禍の影響で、大規模なコールセンターを開設・運用するのも難しくなってきています。
対策としては代行サービスを利用する、FAQを活用するなどいくつか方法がありますが、チャットボットを導入すると、多くの課題の解決につながりますのでぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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