顧客からの商品・サービスに関する問い合わせ対応を行うカスタマーサポートやコールセンター、社員からの質問・疑問に対して対応を行う社内ヘルプデスクなど、企業活動を円滑に進めるためには社内外からの問い合わせ対応部署は必須のポジションです。
しかし、対応部署に流入する問い合わせ件数に対して担当者やリソースが足りておらず、十分な対応ができていないという企業は多くあります。
当記事では、社内外からの問い合わせ対応を担当する部署に問い合わせが集中する理由、問い合わせを削減する方法・削減するメリット・削減のポイントについて解説します。
問い合わせ対応の業務効率化・負荷軽減に高い効果を発揮するおすすめツールの紹介も行っていますので、問い合わせ対応業務に課題を抱えている方はぜひ参考にしてみてください。
問い合わせ対応における課題
顧客から寄せられる自社の製品・サービスに関する問い合わせ対応を行うコールセンター・顧客対応窓口、社内から寄せられる業務上の質問・疑問に対応する社内問い合わせ対応窓口は、いずれも問い合わせを行うユーザーの疑問や不安を解決するという重要な役割を担っています。しかし、多くの企業では以下に挙げるようなさまざまな課題を抱えていることが実状です。
- 担当者の業務負荷が高い
- 担当者の離職率が高い
- 時間外対応ができない
- 担当者の採用・育成が難しい
- 繁閑差による業務効率の低下
対応部署が抱えている課題や問題は企業によって異なりますが、多くの企業に共通している課題について以下に解説します。
人手が足りない
多くの企業では、社内外いずれの問い合わせ対応部署においても、人手不足・リソース不足に悩まされています。その理由としては、以下のような要因が考えられます。
社外問い合わせ対応
- 理不尽なクレームを受けたりトラブル解決を行ったりすることが多く、離職率が高い傾向にある
- 商品・サービスの多様化・複雑化により担当者の育成には時間・労力・コストが必要となる
社内問い合わせ対応
- どの業界・業種においても人材確保が難しい
- 業務に関する専門的スキルを持つ人材の確保・人材の育成が難しい
- 対応すべき範囲が幅広く、問い合わせ件数も多いため業務の負担が重い
このような要因から対応部署が人手不足・リソース不足に陥ると、残された担当者の業務負荷やストレスは更に高まり、再び新たな離職を招くという問題も生じます。
そのため、人手不足から離職に繋がるという悪循環をいかに断ち切るかが、問い合わせ対応部署を安定的に稼働させるための鍵となります。
問い合わせ内容の多様化
近年ではICT・AI・クラウドといったデジタル技術の発達により、企業が提供する商品・サービスも高度化しており、また提供プロセスも多様化・複雑化している傾向にあります。
それに伴い、問い合わせ対応でカバーする範囲や回答の難易度も高まっており、担当者はこれまで以上に幅広く専門的な知識を身に付けて業務を行う必要があります。
また、社内での対応においても同様に、社内での業務に新しいITシステムやデジタルツールが次々と導入される状況が一般的となってきており、社内ヘルプデスクでは高度で複雑な対応を余儀なくされています。
このような事情から、社内外いずれの対応においても、問い合わせ件数の増加や1件の問い合わせに回答するリソースが増加している傾向にあります。更には担当者の育成に多くの時間・労力・コストが必要となったり、業務の属人化が発生したりといった新たな課題も発生しています。
問い合わせ件数が増えるのはなぜ?
このように問い合わせ対応ではさまざまな課題が生じますが、多くの課題に共通する原因が、当記事のテーマでもある「問い合わせ件数が多い」ことです。ではなぜ問い合わせ件数が増えてしまうのか、直接的な原因について社外・社内それぞれに分けて以下に解説します。
社外問い合わせ対応が増加する原因
- 商品・サービスを提供するWebサイトのアクセス数・ユーザー数の増加
- Webサイトでの商品・サービスの情報提供が不十分で顧客が疑問を感じるシーンが多い
- FAQの情報不足・使い勝手の悪さなどにより自己解決ができない
社内問い合わせ対応が増加する原因
- 直接問い合わせる以外の自己解決手段が整備されていない
- FAQ・マニュアルなどを活用する文化・習慣が社内に浸透していない
- 社員の自己解決能力・問題解決能力が低い
問い合わせ件数増加といっても、このように原因はさまざまです。Webサイトのアクセスデータや顧客データから原因を見つけられる場合もあるため、問い合わせ件数増加に悩んでいる場合は、まずは分析を行って原因を洗い出してみることが重要です。
原因を把握することで、問い合わせ件数削減施策を行う場合の効果的な打ち手を見いだすことができます。
問い合わせ件数を削減するメリット
問い合わせ件数が増えすぎると、人手不足や人件費の増大といった問題が起こります。対応部署のキャパシティ・リソース・スキルに合わせて問い合わせ件数を削減できれば、業務品質の向上や人件費削減といったさまざまなメリットが見込めるでしょう。
ここでは、問い合わせ件数を削減することで、どういったメリットが生まれるかを具体的に解説します。
対応担当者の負担軽減
問い合わせ件数の削減を実現すれば、対応担当者の業務負担はもちろん心身の負担を軽減できることが大きなメリットです。
特に、社外向けのカスタマーサポート・コールセンターは問題や疑問を抱えた顧客を相手にするため精神的な負担やストレスが大きく、離職者が年間30%を上回ることも珍しくありません。担当者の早期離職を防ぐためにも、問い合わせ件数の削減により負担軽減を図ることが有効な対策となります。
もちろん社内問い合わせ対応においても、社外ほどではないにしろ担当者には業務負担・心身の負担がかかるため、問い合わせ対応の削減を図ることが重要です。
件数自体を減らせれば大幅に状況・環境を改善することができるため、従業員満足度の向上や離職率の低下に繋げることができます。
コスト削減につながる
問い合わせ件数が減ることで、人件費などのコストを削減できます。問い合わせ件数が多く、担当者の早出や残業が必要になっている場合、余分な残業費をカットし、問い合わせ対応部署の人員を確保する費用や労力を省けるというメリットもあります。問い合わせ対応部署を稼働させる通信費や光熱費に関しても、年単位で見ると差が出てくる要素の一つです。
また、問い合わせ業務の負担を減らすことは、新人をはじめとする対応担当者の離職率を低減することにも繋がるため、社員の採用や教育に使ったコストが無駄にならないというメリットもあります。
コスト削減の施策には、問い合わせ件数の削減以外にも、業務フロー・対応ノウハウの見直しやITツールの活用といった方法でも成果を得ることは可能です。
対応スピードの向上
対応件数が削減され、企業の規模や担当者の人数に見合った問い合わせ対応ができるようになると、スムーズに対応できる環境が整えられます。急速に規模が大きくなっている企業の場合、一時的に人手不足に陥ることも多いでしょう。企業の売上や評判を向上させるうえで、問い合わせ対応を効率化することは必須業務だといえます。
大手クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスによると、日本人が顧客サービスを受ける際に待つことのできる時間は13分とされています。調査対象となった9カ国の中では2番目に短く、日本のユーザーは対応スピードを重視する傾向が強いことがわかります。対応スピードが早ければ顧客満足度の向上が見込まれる一方、対応が遅れると顧客満足度が低下し、自社に対して悪印象を持たれるリスクも大きいことが日本市場の特徴であるといえるでしょう。
対応スピードが遅くなると同じユーザーから複数回問い合わせを受ける可能性が高くなり、対応業務にも時間がかかってしまいます。そうならないためにも、問い合わせ件数を削減して、業務速度を改善することが重要です。
社内問い合わせ対応においても、日本人としての性質・特性は同様に当てはまる傾向にあるため、レスポンスを改善することで社員の不満やストレスの低減ならびに満足度の向上を図ることができます。
対応品質の向上
問い合わせ件数が多いと、1件ごとの対応時間を短縮する必要が出てくるため、担当者が焦りを感じて対応品質に悪影響を及ぼす原因となります。また、カスタマーサポートやヘルプデスクには、WebサイトのFAQに記載されているような簡単な質問も、何度も繰り返し寄せられる傾向にあるため、辟易した担当者が適切な態度・対応を行えなくなるケースも考えられるでしょう。
このような対応品質の悪化は、社外の問い合わせ対応であれば顧客満足度の低下やクレームの原因となり、社内の問い合わせ対応の場合は社員からの不満や苦情の原因となります。
もし問い合わせ件数の削減が実現できれば、一つひとつの問い合わせに対してゆとりを持って対応できるため、対応品質の向上を期待することができます。
問い合わせ件数を削減する方法
社内外いずれにおいても、問い合わせ件数の削減に取り組むことは、対応業務の効率改善・品質向上・コスト削減といったさまざまなメリットがあります。
実際に問い合わせ件数を削減するには、Webサイトのユーザーインターフェース改善やコンテンツの見直し、チャットボットの活用といった方法が効果的であり、おすすめです。では、それぞれの施策を実践するメリットや手順に関して、具体的に解説します。
インターフェースを見直す
Webサイトで公開しているFAQマニュアルなどに掲載してある情報が問い合わせとして寄せられる場合、ユーザーインターフェースの利便性が悪くユーザーが情報を上手く見つけ出せない・目的の情報までたどり着けていないといった問題が考えられます。
このような場合には、ユーザーが必要な情報を探しやすいようにWebサイトのユーザーインターフェースを改善したり、FAQやマニュアルが掲載されているページまでの導線をシンプル化することで、問い合わせ件数の大幅な削減が期待できます。製品紹介ページに詳しい使い方や仕様などを掲載したり、FAQやマニュアルへのリンクを設置しておくことも、ユーザーの自己解決を促すには有効な手段となります。
また、FAQ・マニュアルで解決できない場合にユーザーが利用する問い合わせフォームの改善も併せて行っておくことも重要です。入力項目を選択式にしたり項目数を充実したりするなど、利便性を向上させつつ問い合わせの内容がよく理解できるように改善することがポイントです。自己解決の仕組みで取りこぼした問い合わせをスムーズに解決すると同時に、対応品質の底上げを図ることができます。
ユーザーインターフェースが原因で大きくパフォーマンスが低下している場合は、改善を施すことで高い効果が期待できるため、ぜひ実施しておきましょう。
FAQのコンテンツや検索精度を見直す
ホームページの導線設計を適切に実施しても問い合わせ件数が減らない場合、FAQに記載されている情報に不足や誤りがあったり、検索システムの精度が低く回答に辿り着けなかったりといった可能性が考えられます。具体的な解決策について以下にご紹介します。
FAQコンテンツの見直し
FAQの情報に不足や誤りがあると、当然ユーザーが疑問を解決できないケースが増えてくるため、問い合わせ件数の削減には繋がりません。そのため、問い合わせ件数が減らない場合はまずFAQで正しい情報を提供できているかを見直すことが重要となります。
また、FAQの情報量が多すぎる場合も、必要な情報を見分けられず回答率の低下を招くため、必要な情報を過不足なく提供することも重要です。
FAQの検索精度の見直し
FAQコンテンツの品質に問題がなくても問い合わせ件数が削減できない場合は、FAQの検索精度に問題があるケースもあります。
特に考えられる原因としては、FAQの検索ウィンドウに入力されたキーワードの表記ゆれ・スペルミス・片仮名・平仮名といった入力ミスを吸収できず、完全一致の検索結果しか返していない場合です。ユーザーが必ず正しいキーワードを入力するとは限らないため、完全一致のみしか対応できない場合は回答を得られないユーザーが増加します。
このような原因に対処する方法としては、FAQ管理システムを導入することが挙げられます。FAQ管理システムを利用すれば、曖昧なキーワードを吸収して検索する機能や、自然文で検索する機能、サジェストなどのアシスト機能により、検索精度や検索利便性を高めることができます。
ユーザーが求める回答に辿り着ける確率も高まり、問い合わせ件数も削減することができるでしょう。
FAQの効果測定を行う
上記のFAQコンテンツ・検索精度については、効果測定やフィードバックの確認を行わないとなかなか問題に気付くことができません。そのため、定期的にFAQの効果測定を行い、問い合わせ件数削減に寄与できているかを確認することが重要です。
先にご紹介したFAQ管理システムなどを活用すれば、FAQのアクセスログ・利用履歴などを確認できるため、問題点の発見や改善をスムーズに行うことができます。
チャットボットを導入する
チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ロボット」をあわせて作られた造語で、自動会話プログラムのことを指します。サイトを閲覧している際に、画面下にチャットウィンドウが表示されたことはありませんか?これがチャットボットで、社外・社内どちらにも活用できる新たな問い合わせチャネルとして、近年多くの企業から注目を集めています。
チャットボットを設置することで、ユーザーにスムーズな自己解決の手段を提供できるため、大幅な問い合わせ件数の削減が期待できます。
また、チャットボットは問い合わせ件数の削減だけでなく、顧客満足度・従業員満足度といったユーザーの満足度向上も期待できます。従来のカスタマーサポート・ヘルプデスクは、営業時間内のみしか対応することができず、夜間や休日に問い合わせを行ったユーザーを待たせてしまうという課題がありましたが、チャットボットであれば時間や曜日関係なくいつでも素早い対応を提供することが可能です。
問い合わせへの対応効率を上げるなら「問い合わせ管理システム」がおすすめ
ここまで、問い合わせ件数の削減のための方法を紹介してきました。しかし、すぐに問い合わせ件数を減らすのは容易ではありません。また、FAQページやチャットボットを導入しても、高度な問い合わせにはヒトが対応する必要があります。
そこで、問い合わせ対応の効率化や時短を実現したい場合におすすめの「問い合わせ管理システム」についてご紹介します。
問い合わせ管理システムとは
メール・チャット・電話といった各チャネルからの問い合わせを一元管理することで、効率的な問い合わせ管理を行うためのシステム。複数人で対応を分担するための機能も充実しており、対応漏れや二重対応を防止できる。
問い合わせ管理の効率性や正確性を向上させるための機能が豊富に搭載されており、リリースされているツールの種類も豊富であるため、自社に適したツールを導入することで最適な業務環境を構築することができます。
問い合わせ管理システムのメリット
問い合わせ管理システムを導入すれば、具体的には以下のようなメリットを得ることができます。
効率的な問い合わせ管理を実現できる
システムに搭載されている便利機能や自動化機能を活用することで、効率的でスピーディーな問い合わせ管理を実現できます。これにより担当者の負担も軽減することが可能です。
対応品質の向上
担当者間で問い合わせ対応に必要なナレッジ・ノウハウや対応状況を共有することで、対応品質を向上できます。属人化を解消し、担当者間での対応品質の均質化にもつながります。
ミスの低減
対応状況や進捗を共有することで、対応漏れや二重対応などのミスを減らして確実性の高い問い合わせ対応が行えます。
担当者・ユーザーの満足度向上
スムーズに問い合わせ対応が行えれば、問題の解決スピードも高まります。これにより問い合わせに対応する担当者と問題や疑問を解決したいユーザー双方の満足度を向上することが可能です。
問い合わせ内容の集計や分析が可能
システムによっては、問い合わせ内容の集計や分析をシステム上で簡単にできるものがあります。よくある問い合わせを把握することで、FAQのコンテンツやチャットボットを適切に更新することができるようになり、問い合わせ件数の削減につながります。
おすすめの問い合わせ管理システム「メールディーラー」
複数人での問い合わせ対応効率化のために、問い合わせ管理システムを導入するなら、「メールディーラー」がおすすめです。
Point
- チームでのメール共有に特化
- レポート機能で問い合わせ内容の分析が可能
- 用途に合わせて権限や機能をカスタマイズ可能
メールディーラーとは、株式会社ラクスが提供するinfo@やsupport@などの共有メールアドレス宛に届くメールを複数人で対応することに特化した問い合わせ管理システムです。
チーム全員のメールを対応状態ごとに「新着」「返信処理中」「対応完了」のステータスに自動で振り分けてくれます。どのメールにだれが対応しているのかリアルタイムで共有できるので、対応状況がひと目でわかり、メールの見落としや対応漏れを防ぐことができます。
また、メールごとに属性情報を付与することができ、メールディーラー上のレポート機能で簡単に集計ができます。
問い合わせ内容を分類しておくと、どういった問い合わせが多いのかを分析することが可能です。分析結果をもとにFAQページを充実させるなど、問い合わせ件数を削減する施策に活用いただけます。
また、担当者の業務に応じて機能を制限したり、画面表示を変更することが可能です。そのため、新人や契約社員などさまざまな立場の人が分担して対応する場合でも安心してご利用いただけます。
自社の状況にあった対策で問い合わせ件数を削減しましょう
コラム内でご説明した通り、問い合わせ件数を削減できないままでいると、従業員満足度の低下により離職率の増加、コストの増加、対応品質・スピードの低下など、さまざまな問題が発生する可能性があります。今回ご紹介した問い合わせ件数を削減する方法を実施して、カスタマーサポート業務の最適化を目指しましょう。
問い合わせの削減を図る方法の中でも、チャットボットやFAQシステムを導入する企業は近年増えています。初期設定や更新対応を行う必要はありますが、低コストで問い合わせ対応を効率化できるというのは、導入する企業にとって大きなメリットです。
上記と合わせて、問い合わせ対応の効率化のために問い合わせ管理システムを導入すると、対応業務の効率化や時短はもちろん、問い合わせ件数の削減のための施策にも役立ちます。自社の状況に合わせて、ぜひ検討してみてください。
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