生産年齢人口が今後ますます減少傾向にあることから、労働力を確保すべく、人材派遣のニーズは今後も増えていくことが予想されます。
こうした背景から、人材派遣業を商機と捉える方も少なくありませんが、人材派遣会社の起業はそう簡単ではありません。この記事では、人材派遣会社の起業で必要なことに加え、準備しておくべきシステムについてご紹介します。
人材派遣会社の起業に必要なこととは?
人材派遣会社の起業に必要なことは、「派遣元責任者」講習の受講と「労働者派遣事業許可」の取得です。その他にも、資本金を2,000万円用意し、事務所の面積が20㎡以上あることなど、いくつか条件があります。
人材派遣会社の起業のおおまかな流れは、派遣元責任者講習の受講が終了後、会社設立の登記・設立に伴う書類の提出・労働者派遣事業許可申請を行い、最終的に厚生労働大臣の許可が下りれば起業が認められます。
次章以降では、派遣元責任者講習と労働者派遣事業許可の取得について、詳しく説明します。
<起業前に受講>「派遣元責任者」講習について
人材派遣会社の起業をする前に、派遣元責任者講習を受講する必要があります。ここからは派遣元責任者講習について解説していきます。
「派遣元責任者」とは?
労働者派遣法36条では、派遣会社は派遣元責任者を配置しなければならないと定められています。派遣元責任者は派遣労働者と彼らの派遣先との調整を行い、トラブル発生時にはその解決にあたらなければなりません。その他にも、派遣労働者から相談があった場合、助言や指導を行うのも派遣元責任者の業務です。
また、派遣労働者が労働条件や勤務環境に不満を持つこともありますが、そうした場合にも、問題を解決するために適切な対処を行うことが求められます。さらに、派遣労働者と派遣先との間で、問題が起こった際にすぐに対応できるようにするために、定期的に派遣先と連絡を取り合うことも大切な業務です。そして、派遣元管理台帳の作成・記載・保存といった業務や、派遣労働者が派遣先で正しく権利を持って働けるようサポートすることも、派遣元責任者の重要な職務となります。
ちなみに、労働者派遣事業において、派遣元責任者を選任するには派遣元責任者講習を受講することが要件となっており、この派遣元責任者講習は3年ごとに受講しなければなりません。
なお、派遣元責任者は誰でもなれるわけではありません。派遣元責任者になるには、下記のような要件を満たす必要があります。
- 未成年者でなく、労働者派遣法6条の第1号から第9号に定める欠格事由に該当しないこと
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第29条で定める要件、手続きに従って派遣元責任者の選任がなされていること
- 住所及び居所が一定しない等生活の根拠が不安定でないものであること
- 適正な雇用管理を行ううえで支障のない健康状態であること
- 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのないものであること
- 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行う恐れのないものであること
- 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと
- 一定の雇用管理等の経験等があること
- 派遣元責任者講習を受講して3年以内であること
- 外国人にあっては、一定の在留資格のあること
- 派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること
「派遣元責任者」の受講方法
派遣元責任者講習の受講方法にも規則があり、厚生労働省が定める講習機関で受講する必要があります。講習は随時開催されており、会場や日程などはさまざまです。自身が参加できる会場や日程を選びましょう。
講習に参加する手順としては、まず希望する講習に対して申し込みを行います。最近では、ほとんどの講習会でインターネット上の申し込みフォームから手続きを行うことが可能です。申し込みが済んだ後、講習の費用を振り込みます。なお、費用は講習によって異なります。
講習の費用を振り込むと受講票が送られてきます。費用は会場にもよりますが、およそ5千円から1万円程度です。また、講習当日は受講票・運転免許証などの公的身分証明書が必要となります。
<起業に必須>「労働者派遣事業許可」について
労働者派遣事業許可もまた、人材派遣会社の起業に必須です。労働者派遣事業許可とはどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
「労働者派遣事業許可」とは?
労働者派遣事業許可とは、厚生労働大臣による人材派遣会社の起業許可です。この許可がなければ、人材派遣事業を運営することはできません。かつては、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の2つがあり、それぞれの申請方法は異なっていましたが、2015年に法改正が行われて一本化され、現在では一般派遣事業のみの申請となりました。
「労働者派遣事業許可」の条件
労働者派遣事業許可を得るためには、次の4つの条件を満たさなければなりません。
- 当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと
- 申請者が雇用管理を適正に行う能力を有すること
- 個人情報の管理および派遣労働者の秘密を守るための措置を講じていること
- 申請者が人材派遣事業を的確に遂行できる能力を有すること
さらに先ほどご紹介したように、資産要件として資本金が2,000万円以上で、事業所の要件としては事業所の面積が20㎡以上である必要があります。
ちなみに、弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・土地家屋調査士・弁理士・医師・歯科医師・看護師・薬剤師は、派遣事業が認められていません。
なお、人材派遣業を行うためには、上述した派遣元責任者の他に「職務代行者」を1名選任する必要があります。職務代行者は派遣元責任者が職務を遂行できなくなった際に、責任者に代わって対応するために選任します。職務代行者については、派遣元責任者のように特定の資格や労務管理等の経験は必要ありませんが、その会社に専属かつ常勤で働いていなければなりません。そのため、他社でフルタイムで働いている場合は、職務代行者になれないため注意しましょう。
「労働者派遣事業許可」の申請に必要な書類
労働者派遣事業許可の申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 労働者派遣事業許可申請書
- 労働者派遣事業計画書
- 参考資料として、自己チェックシート、事業内容が確認できるパンフレット等
- 以下の添付書類
-定款又は寄附行為
-登記簿謄本
- 役員の住民票
-役員の履歴書
- 個人情報適正管理規程
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 法人税の納税申告書
- 法人税の納税証明書
- 不動産登記簿謄本
- 事業所平面図(事業所面積が20㎡以上であること)
- 派遣元責任者の住民票
- 派遣元責任者の履歴書
- 派遣元責任者講習受講証明書(受講より3年経過のものは不可)
上述した申請書や計画書は労働局で入手することができます。ご覧の通り、必要書類は非常に多いので、不明点は労働局に確認をとることをおすすめします。
「労働者派遣事業許可」の申請手順
派遣元責任者講習の受講後は、各都道府県の労働局で労働者派遣事業許可の申請を行います。起業の2~3ヶ月前に必要書類を準備して申請しましょう。
なお、申請後の流れとしては、まず都道府県の労働局において書類審査がなされ、審査を通過すると厚生労働本省で厚生労働大臣により労働政策審議会で諮問されます。その後、厚生労働大臣が許可・不許可を決定し、許可されると許可証が発行され、不許可の場合は不許可通知書が申請者に送付されます。
ちなみに、労働者派遣事業許可は更新制です。そのため、初回は3年後に、2回目以降は5年ごとに許可の更新申請が必要です。更新に必要な書類は、起業時よりも少ないですが、審査自体は改めて行われるため、しっかり準備しておく必要があります。
人材派遣会社の起業で準備するといいもの
さて、ここまで人材派遣会社の起業までの手続きについて解説しました。しかし、会社は起業がゴールではありません。起業後に「これがあれば仕事がもっとスムーズに進行するのに」と思う場面は山ほどあるはずです。そこでこの章では、人材派遣会社を起業する際に準備しておくといいものをご紹介します。
人材派遣管理システム
人材派遣管理システムとは、主に人材派遣会社が使用するシステムで、派遣者の基本情報管理や勤怠管理を行います。その他にも、コンプライアンス管理・給与計算・源泉徴収票の作成などができます。
人材派遣管理システムの導入には、主に3つのメリットがあります。
1つ目のメリットは勤怠管理を簡略化できることです。人材派遣管理システムを使えば、入力する情報を最小限に抑えられるため、管理ミスを減らすことが可能です。
2つ目のメリットは、給与計算の簡略化です。人材派遣管理システムによっては給与計算を自動で行ってくれるものもあります。システムを用いれば、スタッフの給与管理が非常に楽になります。
3つ目のメリットはコミュニケーションの円滑化です。人材派遣管理システムには専用のコミュニケーション機能を搭載しているものが多く、スタッフと派遣者間のコミュニケーション効率を高めることが可能です。
このように、人材派遣管理システムを導入することで、複雑な処理をスムーズにこなすことができるので、余計な手間が減り、効率的に業務を進められるようになります。
メール管理システム
メール管理システムとは、メール対応の効率化を図るシステムです。
人材派遣会社は多くの派遣スタッフと連絡を行うため、管理が煩雑化し、対応を遅れてしまったり、誰が対応するかが曖昧で二重対応をしてしまったりするトラブルが起きやすくなっています。しかし、メール管理システムを導入することで、全てのメールの対応状況が一覧で確認できるようになり、どのメールが返信済みで、どのメールが未対応かが一目瞭然となります。そのため、メール対応の効率化や、対応漏れ・二重対応などのミス発生を防ぐことができるのです。
また近年は、さまざまなコミュニケーションツールが登場したことから、派遣先企業Aとはメールで、派遣先企業Bとはチャットで…など、複数ツールでコミュニケーション管理をするというケースも多いでしょう。
管理システムの中にはメールだけでなく、LINE・チャットなど複数ツール上でのコミュニケーションを、一元管理できるものもあります。このように、人材派遣会社においてメール管理システムを導入することで、派遣先企業・派遣スタッフへの対応が効率的に行えるようになるでしょう。次章では、多くのユーザーから支持を集めている、人材派遣会社向けメール管理システムをご紹介します。
人材派遣会社向けシステム「メールディーラー」
数あるメール管理システムの中でも、人材派遣会社に特におすすめなのが「メールディーラー」です。メールディーラーは、株式会社ラクスが提供するメール共有・管理システムで、チャット・LINE上の対応履歴も一元管理できます。
メールディーラーでは、メール・チャット・LINE・電話でのやり取りをまとめて一つの画面で管理ができ、「誰が」「どの連絡に」「どこまで」対応しているのかが、一目で分かるような仕様になっています。
さらに、派遣スタッフとの今までのやりとりを簡単に確認することができます。派遣スタッフのメールアドレスをクリックするだけで過去の履歴が一覧表示されます。その他にも、返信が遅れているメールをアラートで警告する機能や、対応中のメールにロックがかかり、対応の重複ミスを防止する機能なども備えています。
そして何といっても、メールディーラーは専任スタッフによるサポートが充実しているため、安心して使用できることが魅力です。メールディーラーの導入企業も8,000社を超えており、人材派遣会社以外にも幅広い業界で活用されています。
人材派遣会社の起業後、派遣先企業や派遣スタッフとのコミュニケーション管理をスムーズに行うために、ぜひ導入をご検討ください。
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