社内手続きや決算業務、書類や資料の作成といった、企業を後方から支える業務を行うのが「バックオフィス」です。営業やカスタマーサポートなど、フロントオフィスの仕事がスムーズに進むのを支える重要な役割を担っています。
そんなバックオフィスには、毎日社内からたくさんの問い合わせがあります。なんとか問い合わせの数を減らしたいと考えても、なかなか減らないことに頭を悩ませているバックオフィスも多いようです。
今回は、バックオフィスで社内問い合わせを削減できない理由と、考えられる解決策をご紹介します。
社内問い合わせに関する課題
バックオフィスとは、経理・人事・総務といったフロントオフィスを後方から支援する部門のことです。一定規模の企業であれば、バックオフィスで社内問い合わせに対応する専任の担当者を置いていることもありますが、多くの企業では各部門の担当者が自身の本来の業務と兼任しながら問い合わせ対応を行っています。
このような状況にも関わらず、バックオフィス部門には社内から日々多くの問い合わせが寄せられているため、問い合わせ対応に関する多くの課題が生じています。
具体的に発生している課題について、以下に解説します。
担当者の負担が大きい
バックオフィスに寄せられる問い合わせは、種類も内容もさまざまであり件数も多いため、担当者の負担が非常に大きいことが多くの企業が抱えている課題です。バックオフィスの担当者は本来の業務と問い合わせ対応を兼任していることも、負担が増す大きな原因となっています。
問い合わせの件数を削減して本来の業務を進める時間を確保するためには、マニュアル等を整備することも有効な手段ですが、利用が促進されずに根本的な解決に至っていないケースは多くあります。
対応が属人化しがち
バックオフィスが対応する問い合わせは、詳しい知識を持つ特定の人物でないと回答できない内容が多く含まれるため、人により対応品質が異なったり特定の人物に負荷が集中したりといった、対応の属人化が生じやすいという課題を抱えています。
このような状況に陥ると、バックオフィスの業務効率は低下してしまい、また問い合わせたメンバーもスムーズに回答を得られず業務が停滞してしまうでしょう。
問い合わせ数の削減を図るのであれば、マニュアルやツールによるナレッジ共有といった、属人化を解消して業務を標準化するための対策を行うことが重要となります。
解決まで時間がかかる
バックオフィス部門には日々数多くの問い合わせが寄せられており、担当者は対応に追われています。なかには回答に時間がかかる内容も含まれており、問題や疑問を解決するのに時間がかかることも課題のひとつです。また、担当者が時間のかかる問い合わせ対応を行っている間は、社内の他のメンバーは問い合わせの回答を得るまでに時間がかかってしまうという懸念もあります。
このように、バックオフィスの担当者も問い合わせを行うメンバーも、問題の解決までに時間をロスするケースが多いのも、多くの企業にあてはまる課題となります。
なぜ、社内問い合わせが減らないのか?
前章でも触れたとおり、マニュアルなどを公開している企業が多いにもかかわらず、なぜ問い合わせ件数が減らないのか、考えられる要因を見ていきましょう。
マニュアルが使いづらい
まず考えられる理由として、用意しているマニュアルがそもそも使いづらいケースがあるようです。
たとえば、用意しているマニュアルが、紙ベースで何百ページもあるようだと、開く気持ちになれません。デジタルデータで用意されている場合でも、エクセルで一覧になっているだけで、うまく分類されていなければ、検索して回答を探すのは困難です。
また、マニュアルの内容が難解で理解が難しかったり、逆に簡素すぎて十分な情報を得られなかったりする場合も、使いにくいと思われてしまうでしょう。
このように、マニュアルを用意していても、検索性が低いなど使い勝手が悪ければ、社員には使ってもらえません。調べるのに時間がかかるので、「バックオフィスに直接聞いたほうが早い」となってしまうのです。
マニュアルの内容が古い
マニュアルを設置しているにも関わらず社内問い合わせ対応が減らない場合は、マニュアルの内容が古く、効果を発揮できていない場合もあります。
社員がマニュアルを参照して自己解決を図るには、社内の現状に即した最新の情報が掲載されていることが必須条件です。内容が古いと、問題や疑問を解決することができなかったり、逆に誤った情報を得てしまったりするため、結局担当部署へ問い合わせを行うことになってしまいます。古いマニュアルを参照した社員は二度手間となり多くの時間・労力をロスしてしまうため、今後参照してもらえる可能性は低いでしょう。
社内問い合わせ対応においてマニュアルを活用する場合は、マニュアルが効果を発揮できるように、こまめな更新を行うことが非常に重要となります。
マニュアルの設置場所が分かりづらい
マニュアルの設置場所が分かりづらい場合も、利用率は下がりバックオフィスへの問い合わせは減りません。
マニュアルを用意しているものの、どこに何のマニュアルがあるのか分からなければ、使いたくても使えません。たとえば、社内ネットワークでは、バックオフィスの部門がそれぞれ専用フォルダを持っているケースが多いでしょう。
部門ごとにマニュアルを保存するフォルダの名前が違っていたり、階層が異なったりしていれば、ほかの部門の社員が見つけるのは困難です。全社的に「マニュアルの保存場所はここ」と決めていても、階層が深くて探しにくければ、使うのは面倒に感じてしまいます。
社員にマニュアルを使ってもらいたいなら、設置場所と保存フォルダ名は全部門で統一する、社内ポータルサイトの分かりやすい場所に入り口を設けるなど、誰でも簡単に見つけやすくする工夫が必要です。
社員の意識問題
バックオフィスへの社内問い合わせが減らないのは、問い合わせをする社員の意識の問題であるケースも少なくありません。
社員が「マニュアルは使いにくい」と固定観念を持っていたり、「調べるのは時間がかかる」「電話で聞いたほうが早い」と思い込んでいたりすると、社内と問い合わせを減らすのは難しくなります。なかには「同じ会社の人間だから質問に答えて当然」「それも仕事のうちでしょ?」と思っている社員もいるかもしれません。
しかし社内問い合わせに答えるのには、担当している社員の「時間」というコストがかかっています。回答することで相手の仕事時間を奪っている、ひいては企業全体の効率を下げていることに気付いてもらうしかありません。
社内の空気や社員の意識を変えるのは容易なことではありませんが、全社的に意識改革に取り組むことが大切です。
社内問い合わせ対応の改善は2つの軸で進めよう
これから社内問い合わせ対応の改善に取り組む方は、「件数削減」と「効率化」という2つの軸で進めていくのが、スムーズに成果に繋げるためのコツです。
ここでは、上記2つの軸の概要についてそれぞれ解説します。
社内問い合わせの件数を削減する
社内問い合わせ対応に伴う課題の多くは、対応部署に過剰な件数の問い合わせが寄せられることが原因となります。そのため、社内問い合わせ対応の改善を行うのであれば、問い合わせ件数をできるだけ削減することが有効な施策となります。
問い合わせ件数の削減により自然と解決される課題や問題が軽減される課題も多くあるため、社員が問題を自己解決できる仕組みの構築を行い、まずは件数削減に注力するようにしましょう。
社内問い合わせの対応を効率化する
件数を削減しても、有人での問い合わせ対応には多くの時間・労力・コストが必要となります。そのため、社内問い合わせ件数の削減と合わせて、有人で対応を行う業務に対して効率化を施します。
対応部署へ情報共有ツールやマニュアルを導入することで、担当者ができるだけ少ない負担で効率的に業務を行える環境を構築しましょう。
社内問い合わせの件数を削減するには?
社内問い合わせ対応の改善に向けて、まずは社内問い合わせ件数を削減するための具体的な方法について解説します。
スムーズかつ着実に問い合わせ件数を削減していくためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
<削減方法①>社内に周知する
バックオフィスへの社内問い合わせを減らしたいなら、まずはそのことを社員全員に伝える必要があります。
バックオフィスが社内問い合わせに対応することで、どのような問題が発生しているのかをきちんと全社員に伝えましょう。社内問い合わせは「コスト」であるとの認識を社員みんなで共有し、削減する必要性を訴えることが大切です。
そのうえで、まずは自己解決に取り組んでほしいこと、このあとご紹介するFAQやチャットボットを設置していることなどを周知します。設置場所、使い方などもあわせて広報し、利用時にとまどうことがないように、あらかじめ準備を整えておくことも重要です。
<削減方法②>チャットボットを導入する
バックオフィスへの問い合わせを削減するには、チャットボットを導入するのも方法のひとつです。
チャットボットとは、「チャット」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、自動応答システムを指します。ECサイトや企業のサイトの片隅に、「何かご質問はございませんか?」と小さなチャットウインドウが開いているのを、目にしたり、実際に使ったりしたことがある方もいるでしょう。
チャットボットには、AI型とシナリオ型の2種類があります。AI型は、質問する人が自由に入力した文章からキーワードを拾い、適切な回答を表示します。データが積み重なるごとに、AIが機械学習することで、回答の精度があがっていくことがAI型チャットボットの特徴です。
一方シナリオ型は、ウインドウにいくつかの選択肢を提示し、ユーザーが選んだものに対して適切な回答を表示する、あるいは別の選択肢を提示することで回答まで導くタイプです。あらかじめ設定したシナリオに沿って会話が展開していくため、単純な定型質問などに回答させるのに向いています。
社内問い合わせにチャットボットを導入すると、以下のようなメリットがあります。
- 使い慣れたチャットで質問できるので社員が気軽に使える
- 社員が自己解決できるのでバックオフィスの社員の時間を奪わない
- バックオフィスに人がいない時間帯でも質問できる
- 自分で回答を引き出せるので満足度が高まる
このように、チャットボットを導入すると、さまざまなメリットが得られます。チャットボットはバックオフィスの社内問い合わせに関する課題を解決するための、いい選択肢になるでしょう。
<削減方法③>マニュアルを作成する
社内問い合わせ数の削減には、マニュアルを作成するのも効果的な方法です。マニュアルには複雑な情報や業務手順等も詳細に記載できるため、対応に時間を要する問い合わせの削減には有用性を発揮できます。
マニュアルにもさまざまな種類がありますが、問い合わせ数の削減を図るのであればオンラインで容易に共有できる文章・画像を用いたコンテンツ形式で作成するのがおすすめです。
マニュアルの整備・運用には負担がかかるのが難点ですが、問い合わせの状況次第では導入する価値は大いにあります。
<削減方法④>FAQを設置する
社内問い合わせを削減するには、社内FAQを設置すると効果的です。
社内FAQとは、「よくある質問」をまとめたものです。マニュアルよりも情報量が減り、すっきりするので必要な回答を探しやすくなります。社内FAQへの入り口を、社内ポータルや各部門のトップページ、問い合わせフォーム、内線番号一覧などの横に目立つように設置しておき、「問い合わせ前にまずはFAQで検索を」としておけば、利用率を高められます。
ただしFAQを設置しても、マニュアルのように検索性が悪ければ結局は使ってもらえません。FAQシステムを導入するなどして検索性を高めれば、使いやすいFAQを作成できるのでおすすめです。
社内問い合わせ対応を効率化する方法は?
続いて、社内問い合わせ対応を効率化するための具体的な方法について解説します。効率化の施策をスムーズに進めるためにも、施策の効果を高めるためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
問い合わせ対応のナレッジを蓄積する
社内問い合わせ対応の効率化を図るには、問い合わせ対応の内容や履歴をナレッジとして蓄積して、メンバー間で共有を行うことが重要です。ナレッジ共有を行うことで、担当者間のスキルや経験の差を埋めて対応品質を平準化することが可能となり、スムーズで効率的な対応を行うことが可能となります。
ナレッジの蓄積や共有には、専用ツールであるナレッジ共有ツールを活用するのが、合理的で効率的なナレッジ共有を実現するのにはおすすめです。上記でご紹介したチャットボットを対応部署内で利用することも、検索性やスピードの観点から蓄積したナレッジを担当者間で活用する際に効力を発揮します。
問い合わせ管理システムの活用
問い合わせ管理システムとは、問い合わせに関する情報や進捗を一元管理することで、効率的な問い合わせ対応をサポートするためのツールです。システムを導入することで、対応状況や担当者の割り振りを可視化することができるため、確実かつ効率的な問い合わせ対応を実現することができます。対応業務に従事する担当者の負担を軽減することも可能です。
おすすめの問い合わせ管理システム「メールディーラー」
複数人での問い合わせ対応効率化のために、問い合わせ管理システムを導入するなら、「メールディーラー」がおすすめです。
- チームでのメール共有に特化
- レポート機能で問い合わせ内容の分析が可能
- 用途に合わせて権限や機能をカスタマイズ可能
Point
メールディーラーとは、株式会社ラクスが提供するinfo@やsupport@などの共有メールアドレス宛に届くメールを複数人で対応することに特化した問い合わせ管理システムです。
チーム全員のメールを対応状態ごとに「新着」「返信処理中」「対応完了」のステータスに自動で振り分けてくれます。どのメールにだれが対応しているのかリアルタイムで共有できるので、対応状況がひと目でわかり、メールの見落としや対応漏れを防ぐことができます。
また、メールごとに属性情報を付与することができ、メールディーラー上のレポート機能で簡単に集計ができます。
問い合わせ内容を分類しておくと、どういった問い合わせが多いのかを分析することが可能です。分析結果をもとにFAQページを充実させるなど、問い合わせ件数を削減する施策に活用いただけます。
また、担当者の業務に応じて機能を制限したり、画面表示を変更することが可能です。そのため、新人や契約社員などさまざまな立場の人が分担して対応する場合でも安心してご利用いただけます。
社内問い合わせを削減するときのポイント
それでは最後に、社内問い合わせを削減するときに押さえておきたいポイントをまとめました。
何が問題なのか明確にする
まずは、社内問い合わせが減らないのは何が原因なのか、現状を明確にすることが重要です。
マニュアルひとつにしても、使いにくいのか、設置場所が問題なのかによって、解決方法は異なります。社員の意識の問題であるなら、いくらFAQやチャットボットを導入しても、問い合わせが減ることは期待できないので、そもそもの意識改革が必要です。
何が問題なのかを明確にしたうえで、課題に応じた対策を検討しましょう。
問い合わせ状況を管理する
問い合わせの削減において非常に重要なポイントが、問い合わせ状況を管理して状況を把握することです。問い合わせの内容・数・よくある質問・問い合わせの手段など、問い合わせの状況を細かく管理することで、具体的な課題や改善策も明確化することができるためです。FAQやチャットボットを活用する場合においても、登録するデータの整備に役立てることができます。
社内問い合わせの削減を検討している企業においては、目の前の対応に追われて問い合わせ状況の管理ができていないケースが多く見られますが、それでは根拠のある打ち手も見いだせず、いつまでたっても状況の改善が見込めません。
履歴を残すだけでも多くの情報を得ることができるため、細かい管理が難しい場合はまず履歴を残すことから始めてみましょう。
ツール導入は社員の使いやすさを重視する
問い合わせ数の削減には、FAQやチャットボットといったツールの活用が高い効果を発揮します。そこで重要となるポイントが、自社の社員のITリテラシーを考慮して、使いやすさを重視してツールを導入することです。
なぜなら、いくら機能・性能に優れたツールでも、社員が上手く使いこなせなければ問い合わせ数の削減に寄与できず、利用率も上がらないためです。
そのため、ツールを導入する際には、ユーザビリティーに優れた製品を選ぶことや、社員が操作しやすい設定を行うこと、利用しやすい環境を整えることが重要となってきます
単にツールを導入するだけではパフォーマンスが発揮できないため、ツール導入時には使いやすさを必ず意識するようにしましょう。
効果検証を行う
問い合わせ削減に向けた対策を講じたら、効果検証を行うことも大切です。
たとえば社内FAQやチャットボットを導入したら、実際にどれくらい問い合わせ件数が減ったのかを調べます。とくに社内FAQシステムやチャットボットの導入には、一定のコストがかかります。効果検証し、効果があることを明らかにできなければ、費用対効果は測れません。
効果検証するには、導入前後の問い合わせ件数の増減データを比較、FAQシステムやチャットボットの起動回数・回答回数の確認などを行います。そのうえで改善した要因や改善していない原因を洗い出し、PDCAを回しましょう。
バックオフィス部門同士で協力する
社内問い合わせ件数を削減するには、バックオフィス部門同士で協力することも大切です。
総務や経理、労務など、バックオフィスは普段は別々の仕事をしていますが、「社内問い合わせを減らしたい」との目標は共通しています。FAQシステムやチャットボットを導入する際には、各部門が分担してデータ入力するなど横の連携をとるとスムーズです。プロジェクトを立ち上げて、部門の枠を超えたチームを作ることが大切です。
繁忙期は避ける
社内問い合わせ削減に向けて対策するときには、繁忙期を避けることもポイントです。
マニュアルを整備する、FAQシステムやチャットボットを導入するなど、削減対策は色々考えられますが、いずれにしても準備に時間がかかります。繁忙期に取り組もうと思っても手が回らなかったり、残業が増えて疲労が残ったりして、現場が疲弊してしまいます。
どのような対策を講じるにしても、バックオフィス部門の繁忙期にあたる時期は避けるのが無難です。ただし部門によって繁忙期は異なるため、対策時期はよく話しあって決め、期限を設けて短期集中で進めるのがおすすめです。
まとめ
企業を後方から支えるバックオフィスには、毎日たくさんの社内問い合わせが寄せられます。そのため場合によっては通常業務を圧迫することもあります。社内問い合わせを削減するには、これほどの問い合わせが発生する理由を明確にしたうえで、適切な対応を取ることが大切です。
現実的な対策としては、当記事でもご紹介した次の2軸で考えるのがおすすめです。
- チャットボット・FAQ・マニュアル等の社員が自己解決できる仕組みの導入による問い合わせ件数削減
- 問い合わせ管理システムの導入による、有人の問い合わせ対応業務の効率化
このような環境を整えたうえで、社内問い合わせはリソースとコストが嵩むことを社員に認識してもらい、できるだけ自己解決に協力してもらうのが効果的です。
問い合わせ管理システムを導入するのであれば、メールディーラーがおすすめです。「導入方法を知りたい」「導入事例が気になる」などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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