企業活動を円滑に行うためには、社外の顧客からの問い合わせならびに社内の従業員からの問い合わせにスムーズに対応を行うことが重要となります。そこで必要となるのが、問い合わせに関する情報や進捗の管理を行う問い合わせ管理です。
当記事では、問い合わせ管理の概要から、Excelを活用した問い合わせ管理の可否・メリット・デメリット・方法、問い合わせ管理の効率化におすすめの専用ツールの概要・メリット・選び方までを解説していきます。
問い合わせ管理とは
問い合わせ管理とは、顧客から自社に寄せられる問い合わせに関して、内容・日時・担当者・対応履歴・顧客情報といった各種情報を分かりやすく整理分類して管理を行うことです。社外の顧客からの問い合わせ管理だけでなく、社内問い合わせ対応の管理を行う場合もあります。
問い合わせ管理を適切に行うことで、担当者間で情報を共有することが可能となり、業務の平準化や効率化を図ることが可能となります。
社内外から寄せられる問い合わせに対してスムーズに対応を行うためにも、現代の企業において問い合わせ管理の実施は重要となってきています。
Excelでも問い合わせ管理はできる?
問い合わせ管理には、問い合わせ管理業務を想定して設計された専用ツールを活用するのが一般的ですが、多くの企業で導入されている表計算ソフトであるExcelを活用して行うことも可能です。
ただし、汎用ツールならではのメリットもあればデメリットもあるため、実際に問い合わせ管理に活用する際は、目的・用途・規模によりExcelの活用が相応しくないケースもありえます。
以下に、Excelでの問い合わせ管理のメリット・デメリットについて、それぞれ詳細を解説していきます。
Excelでの問い合わせ管理の方法・手順
ここでは、Excelで問い合わせ管理を行う場合の一般的な方法・手順について解説します。Excelでの問い合わせ管理を実施しようと考えている方は、ぜひご参考下さい。
記載する項目を決める
Excelでの問い合わせ管理を行うには、まずは自社の問い合わせ管理の状況に合わせて、問い合わせがあった際に管理シートに記載する項目を決定する必要があります。一般的な項目は以下の通りです。
- 問い合わせ日時
- 部署
- 氏名
- 連絡先
- 問い合わせ内容
- 対応担当者
- 対応状況
- 対応履歴
上記をベースに、自社の問い合わせ管理を効率的に行えるように、項目の加除修正を行いシートをカスタマイズしておきましょう。
記入・更新時のルールを定める
Excelで問い合わせ管理を行う際には、運用のルールを設定しておくことが重要です。ルールを設定していないと、各担当者が自由にシートに記入を行ってしまい統制が取れなくなり、スムーズな運用を行うことができないためです。
以下のような点についてルール設定を行い、Excelシートを利用する担当者全員に周知しておきましょう。
- Excelシートへの記入方法
- Excelシート更新の方法・タイミング
- Excelシートを共有する方法
運用の過程で問題が生じたら、都度ルールを修正してより良い運用体制を模索していくことが重要です。
共同編集を使用する
問い合わせ管理に使うExcelファイルは、必ず共同編集が可能な状態にして、担当者全員がアクセスできる状態にしておきましょう。共同編集を設定することで、各自がリアルタイムに編集でき、バージョン管理の手間が省けます。
この設定を行わなければ、表を更新する度に最新版をメールで共有したり、ファイル共有ツールにアップロードする手間がかかります。他の人の編集中にシートを編集できないなど不便な点も多いので、必ず共同編集ができるようにしておきましょう。
ただし、共同編集は「Microsoft 365」のサブスクリプションをおこなっているユーザー限定の機能となります。
Excelで問い合わせ管理を行うメリット
まずは、Excelで問い合わせ管理を行うメリットについて解説します。Excelならではのメリットについて把握しておきましょう。
導入コストがかからない
一般的に、専用の問い合わせ管理システムを導入すれば、イニシャルコストに加えて毎月のランニングコストが必要となります。
Excelは、表計算ソフトのスタンダードとして、どこの企業でも活用されているツールです。既に自社で活用されているツールで問い合わせ管理を行うことで、システムやツールの導入コストがかからないことが、Excelで問い合わせ管理を行う大きなメリットです。
Excelでも対応可能な規模の問い合わせ対応を行う場合や、コストを削減したい場合には、Excelによる問い合わせ管理が有力な選択肢となるケースがあります。
カスタマイズができる
Excelを活用した問い合わせ管理は、テンプレート等を駆使して自社に適した管理用のシートを簡単に作成することが可能です。自社の用途に合わせてレイアウトの変更や項目の追加・除外といったカスタマイズを簡単に行うことができます。スキルがあれば、関数やマクロを用いた自動化や効率化の機能をシートに組み込むことも可能です。
このようにカスタマイズ性に優れており、目的や用途に応じて高い汎用性を発揮できることも、Excelで問い合わせ管理を行うメリットです。
使い慣れている
問い合わせ管理の効率化や負荷軽減のために新しいシステムやツールを導入しても、担当者が使いこなせるまでには研修やトレーニングの期間を設ける必要があるため、定着させるのにある程度の期間が必要となります。
一方でExcelによる問い合わせ管理であれば、社内の誰もが使い慣れているツールであるため、管理用のシートの仕様さえ理解できればすぐに活用することが可能です。
このように使い慣れたツールであるためスムーズに実務に取り入れることができるのも、Excelによる問い合わせ管理を行うメリットです。
無料のテンプレートが用意されている
最近ではExcelで利用できる多種多様なテンプレートが無料で配布されています。問い合わせ管理に活用できるテンプレートも数多く配布されているため、これらを活用することで、イチから管理用のシートを作成することなく、簡単なカスタマイズのみで問い合わせ管理用の環境を構築することができます。
テンプレートを活用して問い合わせ管理用の環境整備の効率化と省力化を図れることも、Excelを活用するメリットです。
Excelで問い合わせ管理を行うデメリット
Excelでの問い合わせ管理には、汎用ツールならではのデメリットが伴います。ここでは、Excelで問い合わせ管理を行うデメリットについて解説します。どのようなデメリットがあるのかを把握しておきましょう。
ファイルの共有が不便
Microsoft365に登録していない場合、共同編集機能が利用できません。
このことによる代表的なデメリットが、ファイル共有を手動で行う必要があり、手間と時間が必要となることです。
共同編集ができない場合、ファイルの作成や更新を行った後に、オンラインストレージ・メール・チャット等を用いて共有を行わなければなりません。これではスピーディーな情報共有が困難です。また、ファイルが増えてくるとバージョン管理も煩雑となり、新旧のファイルが入り混じって管理不能となりやすいという懸念もあります。
共同編集が行えない場合、通常機能ではリアルタイムでのファイル共有やバージョン管理において不便な点が多いことが、Excelによる問い合わせ管理を行う際のデメリットです。
他メンバーの対応状況やリソースの空き状況が分かりづらい
表を使った問い合わせ管理では、各担当者のリソースの空き状況や現状の対応状況まで細かく把握できるような状態を作り上げるのは困難です。管理表をもとに、コミュニケーションや口頭での確認をもとに状況を把握する必要が出てくるでしょう。
たとえコミュニケーションを密にとれていたとしても、ミスやトラブルは発生してしまうものです。管理表の把握しづらさが原因で、二重対応や対応漏れなどといった問題が起きてしまう可能性もあるでしょう。
とくに、対応件数や担当者の人数が増えるほど、上記のデメリットは顕著となってくるため注意が必要です。
ファイルが重くなる
Excelで作成した問い合わせ管理用のシートは、データ量が増えてくるとファイルが重くなり、開くのに時間がかかったり処理が遅くなったりすることがデメリットです。あまりにもデータが肥大化した状態で無理に利用を続けていると、最悪の場合ファイルが破損してしまうケースもあります。
処理の遅延やデータ破損のリスクを抱えながら業務を行わなければならないため、普段からファイルの分割やバックアップの取得に気を配り、トラブルに備えておく必要があります。
セキュリティ面のリスクがある
Excelを活用した問い合わせ管理は、小型ストレージへ保存したりメールに添付したりすることでファイルを簡単に持ち出せてしまうため、セキュリティ面のリスクが伴います。ファイルにパスワードの設定を行うことは可能ですが、アクセス権限や閲覧の制限を行うこともできず、ファイルの取り扱いは担当者の裁量に委ねることとなるため、常にセキュリティリスクを抱えた運用となります。
問い合わせ管理には、顧客情報や機密情報といった外部に漏洩してはならない情報を取り扱う機会も多いため、セキュリティ性が担保できないことは大きなデメリットとなります。
問い合わせが増えると転記・更新の手間が増える
Excelで問い合わせ管理を行う場合、対応状況や進捗を管理するために、まずシート上に問い合わせ内容を転記し、さらに随時更新するという作業が必要になります。
問い合わせ件数が少ないうちは問題ないかもしれませんが、件数が増えた場合はこの転記・更新作業が大きな負荷となります。
この転記や更新でミスがあると、担当者間で対応状況・進捗の把握に齟齬が生まれ、二重対応や抜け漏れを招いてしまうことも考えられます。
転記・更新に手間がかかること、人の手が入ることでミスの可能性があることは、Excelを問い合わせ管理に利用するデメリットの一つです。
Excelの問い合わせ管理用テンプレート
Excelで問い合わせ管理を実施するには、問い合わせ管理専用のシートを作成する必要があります。イチから作成を行っても構いませんが、手間と時間がかかるため、一般的にはテンプレートを活用して工数の削減を行う方法がおすすめです。
インターネット上ではさまざまなテンプレートが配布されており、以下のような問い合わせ管理に適したテンプレートも配布されています。
エクセルカードHARI
職種別にテンプレートが配布されており、マニュアルやFAQも充実されているため、扱いやすさを重視するのであればおすすめ。
>>エクセルカードHARI
顧客管理表
Microsoftが配布しているExcelテンプレートです。基本的な項目が整備されており、フィルタ機能もデフォルトで搭載。汎用性の高いテンプレートをカスタマイズしたい場合にはおすすめ。
>>顧客管理表
テンプレートを活用する際には、まずは複数のテンプレートについて比較検討を行い、最も自社の目的や用途に適したものをダウンロードします。続いて、項目の加除修正やレイアウトの調整といったカスタマイズを施し、用途に適したフォーマットを仕上げるという流れで導入を行います。
テンプレートを活用する際には、まずは複数のテンプレートについて比較検討を行い、最も自社の目的や用途に適したものをダウンロードします。続いて、項目の加除修正やレイアウトの調整といったカスタマイズを施し、用途に適したフォーマットを仕上げるという流れで導入を行います。
問い合わせ管理を効率化するには
Excelでの問い合わせ管理は、コストや簡便性においてメリットがあるものの、効率性や利便性等においてデメリットが伴うことが分かりました。問い合わせ管理の効率化を重視したい方や、Excelでの管理に懸念がある方は、専用の問い合わせ管理ツールを活用するのがおすすめです。
ここでは、問い合わせ管理ツールの概要やメリットからおすすめのツールについて解説します。
問い合わせ管理ツールの導入がおすすめ
問い合わせ管理の効率化を主な目的とするのであれば、Excelではなく専用ツールである問い合わせ管理ツールを導入するのがおすすめです。
問い合わせ管理に特化したツールであるため、業務に必要な機能は網羅されており、Excelのような汎用ツールに伴う情報共有やセキュリティの懸念も払拭することができます。
また、問い合わせ管理ツールにはさまざまな製品がリリースされているため、自社の目的・用途・ニーズに合った製品を導入することで、問い合わせ管理業務のパフォーマンスを最大化することが期待できます。
問い合わせ管理ツールを利用するメリット
問い合わせ管理ツールを導入すれば、主に以下のようなメリットを得ることができます。
問い合わせを一元管理
さまざまなチャネルから流入する問い合わせを集約して一元管理することができるため、効率的な対応業務を行うことが可能。Excel利用時にあった「転記」の手間は発生しません。
対応状況や進捗を可視化
システム上で担当者の割り振り・対応状況・進捗をまとめて可視化することができるため、スムーズな問い合わせ対応業務を実現。
対応に必要なナレッジやノウハウを一元化
システム上で業務上のナレッジやノウハウを蓄積して一元化することが可能。データを共有することで、対応品質の平準化や属人化の解消を図れる。
業務支援機能が充実
テンプレート・情報検索・自動割り振りなど、チームでの問い合わせ対応を効率的かつ便利に行うための機能が充実している。
セキュリティ性に優れている
問い合わせ管理ツールには、安全な環境で情報管理や業務を行うためのセキュリティ機能が搭載されている。
複数人での共有・同時編集が可能
問い合わせ管理ツールは、チームでの利用を前提に設計されているため、複数の担当者での情報や進捗の共有や同時編集が可能。チームでの効率的な対応を実現できる。
外部システムとの連携が可能
MAツール・ECシステム・電話管理システム等の外部システムと連携することで、問い合わせ管理の利便性や効率性を向上することが可能。
おすすめ問い合わせ管理ツールを比較
問い合わせ管理ツールの導入を成功させるには、自社の目的・用途・ニーズに合致した製品を選ぶことが、何よりも重要な要件となります。
しかし、問い合わせ管理ツールを導入したいけれども、自社に適したツールが分からない方や、どのようなツールを選べばよいか分からない方もいるのではないでしょうか。
以下の記事にて、おすすめの問い合わせ管理ツール10種類の概要・特徴を比較を交えてご紹介していますので、これからツール選びを行う方はぜひご参考下さい。
まとめ
今回はExcelで問い合わせ管理を行うメリット・デメリット・方法についてご紹介しました。
Excelでの問い合わせ管理は、扱いやすいことやコストがかからないことがメリットとなりますが、一定以上の規模の問い合わせ対応を行う場合には、業務効率・管理効率・セキュリティなどさまざまな点において懸念が生じてくるのが実状です。本格的な問い合わせ管理を行うのであれば、やはり専用ツールである問い合わせ管理ツールを活用するのが妥当な選択肢となります。
これから問い合わせ管理の効率化を図りたい方や、Excelでの問い合わせ管理に課題を抱えている方は、ぜひ当記事も参考にして、自社に最適な問い合わせ管理ツールの導入を検討してみて下さい。
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