情報システム部門こと「情シス」は、社内システムの保守・管理や、社内インフラの構築・運用を担う重要な役割があります。社内の「IT専門家」として、さまざまな部署で発生する多くのトラブルに対応する情シスは、果たしてテレワークが可能なのでしょうか?
今回は、情シスでテレワークを導入できるのかを検討し、導入するメリットや課題、そして解決策まで解説します。
テレワークとは?
テレワークとは、「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語で、情報通信技術を活用した「場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を指します。2020年に新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、日本でも緊急事態宣言が出されたことを受け、多くの企業がテレワークを導入しました。
テレワークは在宅勤務と同義語と捉える方が少なくありませんが、電車や新幹線の中、喫茶店やサテライトオフィス、コワーキングスペースで行うものも含まれます。リゾート地でバケーションを楽しみながら働くワーケーションも、テレワークの一種です。
情シスの業務はテレワークができる?
テレワークは全ての職種に対応できるわけではありません。向いている仕事内容と不向きな業務があるのです。
情シスはテレワークが可能なのでしょうか。
情シスの主な業務内容
情シスでテレワークが可能かを考えるために、主な業務内容を確認しておきましょう。
情シスは、企業が事業をスムーズに行うための社内システムの開発や構築、運用、保守などが主な仕事です。あわせてサーバーの設置・保守管理や社内のインターネット環境の構築・保守も行います。企業を情報漏えいやハッキングなどの危機から守るためのセキュリティ対策も、情シスの重要な役目です。
さらに社内にある多くのIT機器にトラブルが発生したときも、対処する必要があります。社員が使用しているパソコンやシステムに問題が起こったときの問い合わせにも、情シスが対応します。
このように情シスは、社内のIT関連の業務を一手に担っているのです。
情シスの業務は基本的にテレワークが可能
情シスは、各部署とのコミュニケーションが取れる環境にあるなら、テレワークできる業務が少なくありません。
たとえばシステムの企画や開発は、パソコンさえあればどこでも行える業務です。サーバーの保守管理やセキュリティ対策などに関しても、オンライン上で実行できます。社内にあるIT機器に発生したトラブルも、管理システムにアクセスできれば解決できる場合が多いでしょう。社員が使用しているパソコンに問題が発生しても、遠隔で操作して解消できます。
このように、オンラインでアクセスできる環境が整っていればできる業務に関しては、情シスもテレワークが可能です。
物理的な作業が必要な業務はテレワーク不可
情シスの業務はテレワークでも行うことが可能ですが、ほかの職種・業務と同じくオンラインで対応できる業務に限定されます。以下にご紹介するような物理的な作業が伴う情シス業務については、テレワークで対応することはできません。
- 社内に設置したサーバー・ネットワーク機器などの構築・管理
- オンプレミス型システムの構築・開発・メンテナンス
- 個々の社員が利用しているデバイスの管理・メンテナンス・物理的なトラブル対応
- 郵送が伴う業務
このように機器を触らなければならない作業や、出社が伴う作業については、テレワークの範囲外として別途対応する必要があります。
情シスは幅広い業務を抱えていることが一般的であるため、業務の全てをテレワーク化するのは難しいのが現状です。
情シスでテレワークを導入するメリット
情シスの多くの業務はテレワークで対応できるとわかりました。実際に導入すると、以下のメリットが得られます。
それぞれどのような内容なのかを解説します。
自宅にいながらトラブル対応ができる
情シスにテレワークを導入すると、自宅にいながら社内で発生したトラブルに対応できるようになります。
たとえばシステムのトラブルは、平日出社しているときに起こるとは限りません。深夜や休日に発生し、緊急対応が必要になることもあります。そんなときでもテレワークが導入され、自宅などの外部から安全にシステムにアクセスできる環境が整っていれば、トラブルに対応するために深夜や休日に会社へかけつける必要がなくなります。
移動時間が不要になるため、迅速なトラブル対応が実現できるのです。
社員のサポートを柔軟に行える
情シスがテレワークを導入すると、社員のサポートを柔軟に行えるようになります。
リモートワークを導入している企業では、情シスだけではなくほか多くの社員が自宅で業務に取り組んでいることが想定されます。テレワーク中の社員が使用しているパソコンなどの端末にトラブルが発生したときも、外部から遠隔で操作できるよう設定しておけば、場所や時間に関係なく対応が可能です。
優秀な人材が確保できる
優秀な人材確保につながることもメリットです。
テレワークは働く場所を問わないため、通勤エリアにこだわらずに人材を探すことが可能です。地方に住む優秀な人材の採用も実現できます。
さまざまな働き方を望む労働者にとっても、テレワークを導入している企業は魅力的に映るでしょう。情シスは業務負担が重く人材不足が深刻ですが、テレワークを導入することで優秀な人材の応募が増えるかもしれません。
コスト削減につながる
情シスにテレワークを導入すると、コスト削減にもつながります。
出社する人数が減るのにあわせて小さなオフィスに移転すれば、賃料はもちろんイスや机といったオフィスにかかるコストを削減できます。さらに社員の通勤手当も不要になるので、人件費を抑えることも可能です。
BCP(事業継続)対策になる
BCPとは、事故・災害・サイバー攻撃といった不測の事態が発生した場合においても、企業が自社の事業を継続できるように対策を行っておくことです。ITシステムの稼働・運用を維持することは、IT-BCPと呼ばれています。
情シス業務のテレワーク化を行うことは、万が一企業がダメージを受けてもリモート環境でビジネスを継続できる体制を構築することになるため、BCP対策としても非常に効果的です。現にテレワーク自体がコロナ禍に対するBCP対策として機能しており、有効性の証明となっています。
感染症対策だけでなく、ほかのリスクも想定したテレワーク体制を構築しておくと、より盤石なBCP対策とすることができます。
情シスでテレワークを導入する際の課題
情シスでテレワークを導入する場合、次のような課題が発生する可能性があります。
それぞれの課題がどのような内容なのか順番に解説します。情シスにテレワーク導入を検討している方は、導入時の障壁となる可能性があるため、確認しておきましょう。
サポートに時間がかかり多忙になる
企業がテレワーク導入を実施する際は、特定の部署だけでなく全社的に進めていくのが一般的です。そのため、情シスは自部門のテレワーク環境の整備を行いながら、他部署の導入推進・サポートも行わなければならず、テレワーク体制が安定化するまでは一時的に大きな負担がかかります。
テレワーク導入は各社員に端末を支給すれば良いといった単純なものではなく、通信環境の整備・ツールやシステムの導入・セキュリティ対策ならびにこれらを活用した新しい業務フロー・業務体制の構築まで行う必要があります。情シスが担う範囲は非常に多く、サポートやトラブル対応も行わなければならないため、多忙を極めることは事前に想定しておいた方が良いでしょう。
このようなテレワーク導入時の課題は不可避な部分が多いため、導入前に検討・実施できることはなるべく前倒して行い、導入後の業務負担を減らす対策をすることが重要となります。
コストがかかる
テレワークの導入は社員にデバイスを支給すれば済むわけではなく、効率性・安全性を考慮してインフラを整備したりツールの導入を行う必要があります。
情シス部門のテレワーク化においても、従来の業務をテレワーク化するためにナレッジ共有ツール・問い合わせ管理ツールなどを用意する必要があるため、導入時にまとまったコストがかかることは避けられません。テレワーク化を推進する過程で新たなコストが発生する場合もあるため、コストの見積もりが難しいという課題もあります。
長期的な視点で考えれば情シスのテレワーク化にはメリットがありますが、一時的にコスト負担が大きくなる点はあらかじめ覚悟しておく必要があるでしょう。
セキュリティ管理が難しい
情シスがテレワークを導入するには万全のセキュリティ対策を施す必要があり、その対策にも追われることになります。
テレワークをするとなると、社内ネットワークではなく、外部からのアクセスが必要になります。そのため、情報漏えいの危険がつきまといます。
セキュリティがぜい弱だと、ウイルス感染や不正アクセスのリスクに常にさらされることになり、安心して業務に取り組めません。情シスには、対策として強固なネットワークセキュリティの構築が求められます。
外部からのアクセスの安全性を確保するには、プライベートネットワークに接続して暗号化通信を行うシステムを導入する、公衆wi-fiの使用を禁止し通信キャリアが提供するモバイルルーターの利用を義務づけるなどの対策が必要です。
ひとり情シスの生産性の低下や業務の停滞
ひとり情シスとは、少人数もしくは一人で情シス部門を担当している状態を指す言葉です。情シスは直接の利益を生み出さないコストセンターとみなされやすいことから、人員の増強に積極的ではない企業が多く、とくに中小企業ではひとり情シスは珍しくありません。
そんなひとり情シスがテレワーク導入を進めるとなると、ただでさえ業務量が多いところに追加対応業務が増えることで生産性が低下します。。ほかの社員のテレワーク対応に追われ、自身の業務が停滞してしまう可能性があるのです。
情シスのテレワーク導入でよくある課題の解決策
情シスでテレワークを導入するときには、多くの課題があります。それらを解決するために考えられる対策は、以下の2つです。
それぞれどのような内容かを解説します。
クラウドツールの活用を推進
情シスがテレワークを導入する際には、業務・管理をスムーズに行うために、利用するツールをできるだけクラウドツールで揃えることがポイントです。オンプレミスの機器を管理する必要がなく、インターネット環境さえあれば場所を選ばず同じ環境で作業を行えるため、情シスのテレワーク化には非常に適しています。
情シスのテレワーク化におすすめのクラウドツールには、例えば以下のようなものがあります。
- クラウドストレージ
- ナレッジ共有ツール
- コミュニケーションツール(チャット・通話・オンライン会議)
- クラウド勤怠管理システム
- 問い合わせ管理システム
新規に導入するツールやシステムをクラウドで揃えるだけでなく、従来から使用していた業務支援ツール・システムについても、同様の機能を持つクラウドツール・システムがリリースされているケースは少なくないため、できるだけクラウドへ代替することをおすすめします。
業務をアウトソーシングする
情シスの業務自体をアウトソーシングすることを検討してもいいでしょう。
テレワークを導入するときには、社員のパソコンの設定やソフトウェアのインストール、クラウドサービスの活用など一気に業務負担が増えます。またテレワークを始めた社員からの問い合わせも増え、全てに手が回らなくなる可能性があるのです。
そのためパソコンの設定や社内問い合わせといった比較的重要度の低い業務に関しては、アウトソーシングすることで負担が軽減されます。そういった業務はテレワーク導入に際して一時的に増えるものの、軌道に乗ってしまえば落ち着くため、期間限定でアウトソーシングするといいでしょう。
情シスのテレワーク導入で使いたい「問い合わせ管理システム」
情シスのテレワークでの生産性を高めたいなら、「問い合わせ管理システム」の導入を検討するのがおすすめです。問い合わせ管理システムを導入すれば、ヘルプデスク業務をチームで分担し、効率的に対応することができます。
問い合わせ管理システムは複数人で同じ画面を見ながら対応を行うことができ、問い合わせごとに対応状況や担当者が可視化されるため、返信漏れや遅れ、重複対応を防止できます。
また、アウトソーシングをする際に導入することで、問い合わせごとの担当者や対応状況の管理や、問い合わせ内容や件数、担当者別の対応状況の集計をシステム上でできるようになります。
問い合わせ管理システムについて、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
情シスのテレワークには「メールディーラー」がおすすめ
情シスのテレワークに伴って問い合わせ管理システムを導入するなら、「メールディーラー」がおすすめです。
Point
- チームでのメール共有に特化
- レポート機能で問い合わせ内容の分析が可能
- 用途に合わせて権限や機能をカスタマイズ可能
メールディーラーとは、株式会社ラクスが提供するinfo@やsupport@などの共有メールアドレス宛に届くメールを複数人で対応することに特化した問い合わせ管理システムです。
チーム全員のメールを対応状態ごとに「新着」「返信処理中」「対応完了」のステータスに自動で振り分けてくれます。どのメールにだれが対応しているのかリアルタイムで共有できるので、対応状況がひと目でわかり、メールの見落としや返信漏れを防ぐことができます。
また、メールごとに属性情報を付与することができ、メールディーラー上のレポート機能で簡単に集計ができます。
問い合わせ内容を分類しておくと、どういった問い合わせが多いのかを分析することが可能です。分析結果をもとにFAQページを充実させるなど、問い合わせ件数を削減する施策に活用いただけます。
また、担当者の業務に応じて機能を制限したり、画面表示を変更することが可能です。そのため、アウトソーシング先やパートやアルバイトといった社員以外が対応する場合でも安心してご利用いただけます。
メールディーラーは、無償で専任担当者によるきめ細かいサポートが付随しているため、初めての方にもおすすめできる製品です。
情シスのテレワーク導入はしっかり準備をしましょう
情シスは社内システムの開発や構築と保守・管理、社内インフラの構築・運用といった重要な業務を担当しますが、物理的な作業以外はテレワークでも可能です。情シスがテレワークを導入するときには、全社的に対応する必要があると想定されることから、情シスの業務負担は過重になります。
テレワーク導入に際しての情シスの負担を減らすためには、クラウドツールの活用や業務のアウトソーシング、問い合わせ管理システムの導入といった対策を行ってください。問い合わせ管理システムを検討するときは、メールディーラーがおすすめです。
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