カスタマーサポートの業務改善を行うには、明確な目標を立てたうえで、その目標を達成するための中間指標となる「KPI」を設定することがとても重要です。
この記事では、カスタマーサポートでKPIを設定する際の注意点や、KPI管理に役立つおすすめツールをご紹介します。
カスタマーサポートでKPIの設定は重要
KPIとは「Key Performance Indicator(キーパフォーマンスインジケーター)」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
目標達成に向かって、プロセスが適切に実行されているかを判断するための中間指標として使われます。
カスタマーサポートは評価がしにくい業務ですが、KPIを設定することで目標達成度合いが「見える化」されるため、人事評価がしやすくなります。
また社員も、「自分が今どの段階にあるのか」「あと何がどれくらい足りないのか」が明確になるため、モチベーションの向上や対応品質の向上にもつながります。
カスタマーサポートで設定すべき10個のKPI
では、カスタマーサポートでは、具体的にどのようにKPIを設定すればよいのでしょうか。ここでは、カスタマーサポートで設定を行いたい、10個のKPIについてご紹介します。
1.問題の解決率
解決率は、カスタマーサポートの中でも重要視しなくてはいけない指標です。
毎日の問い合わせ件数に対して、解決出来た件数の比率を算出すれば解決率が分かります。
また、解決率には「一次解決率」「ワンコール解決率」「最終解決率」の3つの種類があります。
一次解決率 | エスカレーションや折り返し対応が無く、初回のコンタクトで解決した割合 |
ワンコール解決率 | エスカレーションや折り返し対応があったとしても、同一案件で再コールが無く解決した割合 |
最終解決率 | 問い合わせ数に対して最終的に解決できた問い合わせの割合 |
一般的には「一次解決率」が最も顧客満足度向上に寄与すると言われていますが、「たまたま簡単な問い合わせ内容が多かったために一次解決率が高くなった」という場合もあるため、一次解決率だけでなく、総合的にKPI設定することをおすすめします。
2.問題解決までの処理時間
問い合わせの受付から問題解決までにかかった処理時間も、KPI設定すべき重要な指標の1つです。
「早急に解決したいのに、なかなか話が進まない」などの不満が起きてしまうと、顧客満足度の低下に直結してしまうため、処理時間はなるべく短くするのが理想です。
3.顧客とのやりとり回数
問題解決までの所要時間だけでなく、往復したやりとり回数も大切な指標です。
問い合わせに対して1回では回答できず、詳細確認のためにヒアリングを行うこともあるでしょう。
しかし何度もやりとりを繰り返すと、それだけ顧客にストレスを与えることになります。
やりとり回数が多くなる傾向にある部分は、問い合わせフォームの見直しを行うなど対策を行いましょう。
4.電話への応答率
応答率は、電話での顧客からの問い合わせにオペレーターが応答できた割合を指します
顧客がサポート窓口に電話してもなかなか繋がらない場合、待ち時間の長さに不満を感じてしまったり、あるいは問い合わせ自体を断念してしまう恐れもあります。
応答率を高く保つためにも、KPIとして設定するのがおすすめです。
また、応答率に関連するKPIとして、「サービスレベル」や「平均応答速度」を設定するのも有効です。
サービスレベル | サービスの提供にかかるスピードや時間 |
平均応答速度 | 電話が掛かってきてからオペレーターが応答するまでの時間 |
5.顧客満足度
顧客満足度は、カスタマーサポートの対応に対する満足度であり、重要なKPIの1つです。
KPIを設定するためには顧客満足度を数値化する必要があります。
たとえば顧客とのメールのやりとりの中で、「ありがとう」などの感謝の言葉をどれだけいただけたかを検索し、計測するという方法があります。
さらに詳しく知りたい場合は、アンケートを実施する方法も有効です。
カスタマーサポートを利用した顧客へ向けて、満足度に関するアンケートを実施することで、より詳しい顧客の意見を聞くことができるでしょう。
6.リピート率
リピート率は、一度サービスを利用した顧客が再び利用する割合を示す指標です。この数値が高ければ高いほど、顧客満足度が高く、ビジネスの安定性と成長性が期待できます。
カスタマーサポートの観点からリピート率を考えると、問い合わせや課題に対して適切に対応できているかどうかを測る重要な指標となります。顧客が同じ問題で繰り返し問い合わせをしていないか、サポート体験に満足して再度サービスを利用しているかなどを把握できます。
7.稼働率
稼働率は、カスタマーサポート部門の効率性を測る重要な指標です。具体的には、サポートスタッフが実際に顧客対応に費やしている時間の割合を示します。
高い稼働率は、リソースが効果的に活用されていることを意味しますが、同時に過度の負荷がかかっていないかにも注意が必要です。適切な稼働率を維持すれば、顧客満足度を保ちながら、コスト効率のよいサポート体制を構築できます。
稼働率の測定には、コールセンターシステムや業務管理ツールを活用し、リアルタイムでモニタリングを行うことが重要です。ただし、数字だけにとらわれず、品質とのバランスの考慮も忘れてはいけません。
8.時間あたりの対応数に対する解決数
「時間あたりの対応数に対する解決数」は、カスタマーサポートや問題解決業務の効率性を測定する重要なKPIです。この指標は、特定の時間枠内(通常は1時間)で処理された問い合わせや課題の総数と、その中で実際に解決された案件の数の比率を表します。これにより、チームや個人の問題解決能力を数値化し、効率性を評価できます。
この指標は、リソース配分の最適化にも役立つでしょう。解決率が低い場合、追加の人員配置やスタッフの訓練が必要かもしれません。また、品質管理の観点からも重要で、一貫して低い解決率は、プロセスの見直しや知識ベースの拡充が必要なサインにもなるでしょう。
さらに、顧客満足度との関連も見逃せません。迅速かつ効果的な問題解決は、顧客体験の向上に直結し、ビジネスの成功に貢献します。しかし、この指標のみに頼ることには注意が必要です。数字の向上だけを追求すると、拙速な対応や表面的な解決につながる可能性があるからです。
したがって、「1時間あたりの対応数に対する解決数」は、解決の質や顧客満足度など、他の指標と組み合わせた総合的な評価が重要です。これにより、効率性と品質のバランスのとれたサービス提供が可能となり、長期的な顧客関係の構築とビジネスの成長につながるでしょう。
9.一度解決した問い合わせへの再問い合わせ率
カスタマーサポートのKPIにおいて、一度解決した問い合わせへの再問い合わせ率は、サービス品質と顧客満足度を測る重要な指標です。この指標は、初回の対応で完全に解決されたと思われた問題が、再び顧客から問い合わせされる割合を示します。
低い再問い合わせ率は、問題が効果的に解決され、顧客が満足していることを示唆します。一方、高い再問い合わせ率は、初回の解決策が不十分であったり、説明が不明瞭であったりする可能性を示唆します。つまり、サポートの質や効率性に改善の余地があるでしょう。
この指標を監視すれば、サポートチームは自身のパフォーマンスを評価し、改善点を特定できるでしょう。再問い合わせ内容の分析を行うことで、よくある誤解や不明点を特定し、初回対応の質を向上させるための施策を講じられます。
ただし、再問い合わせのすべてが否定的なものとは限りません。製品やサービスの複雑性によっては、段階的な解決が必要な場合もあります。また、顧客の理解度や状況の変化によっても再問い合わせが発生する場合があります。
したがって、この指標を解釈する際は、再問い合わせの性質や背景を考慮することが重要です。また、初回解決率や顧客満足度調査など、他の指標と併せて総合的に評価すれば、より正確にサポート品質を把握し、継続的な改善につなげられるでしょう。
10.自己解決率
自己解決率は、カスタマーサポートの効率性と顧客エンパワーメントを測定する重要なKPIです。この指標は、顧客が企業の提供するセルフサービスリソース(FAQページ、ナレッジベース、チャットボットなど)を利用して、サポートスタッフへ直接連絡を行うことなく問題を解決できた割合です。
高い自己解決率は、顧客が必要な情報に容易にアクセスでき、自分で問題を解決できることを示します。これは顧客満足度の向上につながるだけでなく、サポートチームの負荷軽減にも寄与します。結果として、より複雑な問題や個別対応が必要な案件に、サポートリソースを集中させられるでしょう。
自己解決率を向上させるには、わかりやすく網羅的なナレッジベースの構築、直感的なウェブサイトナビゲーション、効果的な検索機能の実装などが重要です。また、顧客の行動パターンや頻繁に発生する問題を分析し、セルフサービスツールを継続的に改善することも必要です。
一方で、過度に高い自己解決率を追求すると、顧客が必要なサポートを受けられない状況を生む可能性があります。そのため、この指標は顧客満足度調査や問題解決の正確性など、他の指標と併せて評価を行うことが重要です。
適切に管理された自己解決率は、顧客の自立性を高めサポートの効率を向上させ、全体的な顧客体験を改善する強力なツールとなるでしょう。
カスタマーサポートでKPIを設定するときの注意点
ここでは、カスタマーサポートでKPIを設定するときの注意点についてご紹介します。
KGIにつながるKPI
KGIとは「Key Goal Indicator(キーゴールインジケーター)」の略称で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。
ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標で、売上高や成約数などが該当します。
KGIが「最終目標」とすれば、KPIはKGIにつながる「中間目標」と言えます。
まずは最終目標であるKGIを設定し、そのうえで達成すればKGIも自動的に達成できる・定量評価できるKPIを設定するように意識しましょう。
達成可能なKPI
KPIは達成できる範囲のものを設定しましょう。
もし現状の業務状況では達成が難しい場合でも、業務改善を行えば達成可能となる範囲のKPIであれば、社員のモチベーションを下げることもなく、且つ業務の見直しができるためとても有効です。
しかし、業務改善を行っても到底達成できないKPIの場合、社員のモチベーションを下げてしまうことになりかねません。
カスタマーサクセスと区別したKPI
カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」という意味で、積極的に顧客に働きかけて成功へ繋げていくことを指します。
一方でカスタマーサポートとは、受動的に顧客の不満や課題を聞き取り解決へ向けてサポートすることを指します。
それぞれ目的が異なるため、設定すべきKPIの方向性も異なります。
担当している業務がどちらに該当するかを明確に認識したうえで、区別したKPIを設定するようにしましょう。
定量的なKPI
数値化できるKPIは、客観的な評価が可能で管理しやすいという利点がありますが、カスタマーサポートの質を完全に表現することは困難です。例えば、対応時間の短縮だけを追求すると、丁寧さや解決の確実性が犠牲になる可能性があります。
そのため、KPIは具体的で測定可能なものにする必要があります。抽象的な目標では進捗状況が曖昧になり、効果的な改善ができません。
また、ビジネス目標やプロジェクトに直結したKPIを選びましょう。不要な指標を選んでしまうと、リソースが分散してしまい、実際の目標達成に貢献できない場合もあります。さらに、現実的で達成可能な範囲で目標を設定しましょう。あまりにも高すぎる目標は、モチベーションを下げる原因になることがあります。
カスタマーサポートのKPI達成の一手としてのツール導入
カスタマーサポートのKPI管理を行うには、問い合わせの管理や継続的なデータの蓄積・集計が必要です。
Excelやスプレッドシートなどで問い合わせ管理・集計を行うことも可能ですが、手動で入力する手間や、人的ミスが起きやすいというところが難点です。
より簡単に・確実にKPI管理を行うためには、問い合わせ管理やデータ集計に特化したツールを導入することをおすすめします。
ツールによって搭載されている機能はさまざまなので、自社の運用にあったツールを選定・導入検討しましょう。
カスタマーサポートのKPI達成に役立つ「メールディーラー」
ここでは、カスタマーサポートにおすすめのメール管理システム「メールディーラー」について紹介いたします。
株式会社ラクスの提供する「メールディーラー」は、info@やsupport@など共有メールアドレスやメーリングリスト宛にくる、複数名で対応・管理するメールに特化したメール共有・管理システムです。
複数名でメールを共有する際に起こりがちな、メールの見落としや重複対応を防ぐための機能や、問い合わせ件数・返信所要時間を簡単に算出できる「集計レポート機能」などが備わっています。
カスタマーサポートのKPI達成に役立つ機能
カスタマーサポートのKPI達成に役立つメールディーラーの機能を3つご紹介します。
1.ステータス管理機能
メールディーラーの受信フォルダは、メールの対応状況別に自動的にタブで分けられるようになっています。
まだ誰も対応していない未対応のメールは「新着」、誰かが返信作業を始めると「返信処理中」、送信が完了すると「対応完了」とステータスが変わり、受信フォルダを見るだけで対応進捗状況をひと目で把握することができます。
顧客からの問い合わせメールを割り振ることで、初回対応のスピードアップになり、KPIの達成率向上にもつながります。
2.対応履歴確認機能
顧客のメールアドレスをワンクリックするだけで、受信メール・送信メール・電話応対履歴・チャット履歴などを時系列で一覧表示できる機能です。
受信フォルダと送信フォルダをそれぞれ検索せずに、顧客とのやり取りを確認できます。
そのため、クレームを受けたことがある顧客には慎重に対応したり、何度か利用頂いている顧客には「いつもありがとうございます」と一言添えたりなど、対応を工夫できるようになります。
また担当者が不在で代理対応する際も、過去の経緯を確認することができるので、顧客を待たせずに対応することができます。
3.集計レポート機能
メールディーラーでは、メールや電話対応をフォルダ別・担当者別・返信時間など、 様々な角度から集計・分析ができます。
集計レポートはCSVでもデータを抽出することができるため、日々の振り返りや報告にも活用が可能です。
スピーディーなメール対応を実現した事例
メールディーラーの導入効果を示す具体的な事例として、株式会社シェアリングエネルギーさまの取り組みが挙げられます。同社は、太陽光発電システムの第三者所有サービスである「シェアでんき」を提供しています。
導入前は、メールアドレスはBtoC用とBtoB用の2つ用意していたそうで、それぞれのアカウントをチームで共有していました。しかし、管理が煩雑になり、チーム内での情報共有が困難だったそうです。また、メールを探し出すのに時間がかかり、対応が遅れたケースもありました。
メールディーラーを導入後、これらの課題が解決され、約1/3以上の時短につながったそうです。また、チーム内でナレッジが共有されたことで、スタッフごとの対応の差がなくなりました。それが、顧客満足度向上につながったそうです。
特に、テンプレート機能や対応履歴の一元管理により、新人スタッフでも迅速かつ的確な対応が可能になったそうです。また、クレームにつながりそうなメールには、「大至急」などのラベルを活用するなどの運用も行いました。メール一覧画面から、案件の状況がすぐにわかるため、対応しやすくなったそうです。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
カスタマーサポートのKPIを正しく設定して業務改善
KPIは、カスタマーサポートの目標達成度合いを評価する際の重要な指標です。
明確な数値を設定することで、社員が「何を目標にすればいいのか」が分かりやすくなるため、モチベーションを保って仕事をしやすくなるでしょう。
適切なKPIを設定するためには、現状の課題や最終目標を明確に把握することが重要です。
その上で、達成可能なKPIを設定しましょう。
また、より簡単・確実にKPI管理を行うためには、ツールの導入も検討することをおすすめします。
今回紹介したメールディーラーなら、カスタマーサポート業務やKPI管理に役立つ機能が多数搭載されています。
無料でトライアルや資料ダウンロードが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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