働き方改革への社会認識が進むとともに長時間労働の見直しが注目されていますが、組織の労働生産性の低下も危惧されています。
今回は労働生産性向上が求められている理由と課題、そして向上のための5つの切り口について解説します。
労働生産性向上が求められている理由
近年「労働生産性」への課題意識がより強くなっている主な理由については、下記の3つが挙げられます。
働き方改革を推進している
日本企業に根付く長時間労働体質などを課題として、政府は「働き方改革」を推進しています。
特にワークライフバランスの啓発やコロナ禍のリモートワーク推進なども手伝って、労働者自身の働き方への価値観も変化してきているといえるでしょう。大企業だけでなく中小企業も働き方改革に取り組まなければ人材の流出を防げず、組織の存続が危ぶまれる時代になってきたと考えられます。
しかし適正な勤務時間で利益を上げるには、社員一人ひとりが生み出す価値を高める必要があります。その視点から、労働生産性という評価指標が注目されるようになりました。
労働力人口が減少している
日本の少子高齢化に伴う労働者人口の低下も、働き方改革の重要課題とされています。
総務省統計局の発表によると、日本の労働力人口(15 歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は前年比18万人も減少しており、就業者に限った数値は前年比48万人減となっています。
企業の労働力が減少すると労働生産性の原資となる投入(インプット)が小さくなり、これまで通りの利益を生み出す(アウトプット)には労働生産性を向上させなければなりません。このことから、労働生産性への課題意識が強くなったとも考えられるでしょう。
参考:総務省統計局 労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)平均結果
国際競争力が低下している
日本生産性本部によると、日本の1時間あたりの労働生産性は米国の6割の水準で、OECD加盟38カ国中23位という調査結果が報告されています。
このように日本の労働生産性は他国と比べて高くないといえ、生産性が低いということは「付加価値の高い商品・サービスが提供できていない」と言い換えることもできます。
そんななか、躍進するアジア諸国におされて日本の国際競争力が低下しているとの見方もあります。
このことからも、グローバル社会を舞台に日本経済が再浮上するには労働生産性を改善し、付加価値の高い商品・サービスを提供していくことが求められるでしょう。
労働生産性向上にあたっての課題
上記のような理由から日本企業に求められる労働生産性の向上ですが、社員側からすると「労働生産性を上げる=自分の仕事が増える」というネガティブなイメージをもってしまう可能性があります。
労働生産性を単純に表現すると「就業者1人あたりが生み出す成果」であるため、「1人で多くの仕事をこなさなければ労働生産性は上がらない」と考えてしまう人もいるでしょう。
しかし後述するように、労働生産性向上への足がかりは「労働者のマンパワー」だけではありません。例えば業務フローの見直しや組織体制の再構築、設備投資など、さまざまな策によって改善をはかることができます。
労働生産性の向上が社員自身のメリットにもつながることを周知し、このような課題を解決に導くことが重要だといえるでしょう。
労働生産性を向上させる5つの切り口
ここでは、労働生産性向上のための効果的な5つの切り口についてご紹介します。
1.業務を効率化する
業務効率化に成功すると浮いた時間や人材を他の業務に投入できるため、労働生産性の向上に直結するといえます。
例えば、業務フローを洗い出し「無駄な作業はないか」「プロセスが重複していないか」「課題となっている工程はどこか」といった点を見直しましょう。社員の出勤を確認するだけになっている朝礼や、チェックされることのない営業日報などは「ルールだから」と形骸的になっている場合もあります。それぞれのフローが本当に必要なのかを改めて考え、不要なものについては排除を検討することが重要です。
業務の分担も見直すと良いでしょう。1人に負荷がかかりすぎて効率が落ちていないか、業務の割り当てが少ない社員がいないかなど、業務負荷のバランスを整えることで全体的な業務がうまく回り出すこともあります。
2.社員のスキルアップを促進する
知識やノウハウを身に付ければ、少ない工数でもより良い成果につなげることができます。社員一人ひとりのスキルアップによって一人当たりが生み出す価値を大きくすることも可能です。
スキルアップは個人の努力だけでなく、ナレッジの共有や教育体制の整備といった組織的なサポートでも実現することができます。このことから、組織全体での積極的な体制づくりが求められるでしょう。
3.労働環境を改善する
働きやすい職場環境を保つことを心掛ければ、社員のパフォーマンスの最大化にもつながるでしょう。
例えば、社員がリモートワークやフレックス制を選択できるようになれば、通勤ラッシュから解放され、結果的に集中力アップやストレス軽減が期待できます。加えて、家庭や健康面の事情からオフィスへの通勤が難しくなったという人でも、退職せずに仕事を続けられるでしょう。
労働環境の改善によって人材の流出を防ぐことができれば、キャリアのある社員を確保し労働生産性を維持することができます。
4.アウトソーシングを取り入れる
業務の一部をアウトソーシングすることで労働生産性の向上をはかることも可能です。
例えば、経理や情報システム、テレアポといった業務には専門知識が必要となるため、社内の人材が行うには時間がかかり、教育も必要です。そこで業務のプロにアウトソーシングすれば、より正確に効率よく遂行してもらえるとともに、社内教育にかかる時間やコストも浮き、限られた人材を本業に集中させることもできます。ある程度の費用をかけてでも、アウトソーシングを実施する価値はあるといえるでしょう。
5.IT技術を導入する
紙やエクセルといった煩雑な業務に手間を取られているなら、IT技術を導入して抜本的な業務効率化をはかるのも得策です。
販売管理システムや経理精算システムといったさまざまなITツールがクラウド化しており、最近では導入時の費用や時間はそれほどかからず、利用料金だけで活用できるものも増えています。自社の課題を解決し労働生産性を向上させるために、IT技術の導入を検討してみるのも良いでしょう。
メール業務の効率化も生産性向上につながる
ビジネスメールの実態を調査した2021年のデータによると、日本のビジネスマンは1日平均で51.1通ものメールを受信し、13.63通のメールを送信しているそうです。さらに、1日のうちメールを読む時間に69分間、メールを書く時間に81分間も費やしているとの結果も出ています。
これらの時間を合わせると、平均2時間30分も毎日メール処理に費やしているということになります。
8時間労働の4分の1以上も占めるメール対応時間にメスを入れることは、労働生産性向上の近道となると考えられます。
GmailやOutlookなどのフリーメールは、多くの企業でビジネス利用されています。しかし、ビジネス利用を前提とした有料のメール管理ツールなどは、特定の業種・業界に特化した機能なども多数搭載されており、メール業務の効率化に貢献するでしょう。
参考:一般社団法人日本ビジネスメール協会_ビジネスメール実態調査2021
まとめ
企業の労働生産性の向上は、業務フロー全体の見直しからスキルアップ支援、労働環境の整備、アウトソーシング活用、IT技術の導入など、さまざまな切り口で実現を目指すことができます。
今後さらに少子高齢化が進み、労働力人口も減少することが予想されているため、企業の競争力を維持するためにも労働生産性に向き合っていくことが重要だといえるでしょう。そのためメール管理ツールの導入をはじめとした、業務効率化への取り組みを検討していくことをおすすめします。
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