業界や業種を問わず、さまざまな分野で必要とされるカスタマーサポート。
昨今は「カスタマーサクセス」という言葉も広まっています。
カスタマーサクセスは、文字通り「顧客の成功」を叶える役割のことを言います。「カスタマーサポート」が受動的に顧客の要望や課題を解決することであるのに対し、「カスタマーサクセス」は顧客が目指すゴールを予測し、能動的に顧客へ働きかけます。
近年、サブスクリプション型のサービスの普及や、LTV(顧客生涯価値)の最大化が重要視されるようになったことから、「カスタマーサクセス」が注目を集めています。
今回は、こうした取り組みに役立つ「カスタマーサクセスツール」をご紹介します。
カスタマーサクセスツールとは
カスタマーサクセスツールとは、企業が顧客の成功を支援するために使用するソフトウェアやプラットフォームのことです。顧客との関係を強化し、顧客が製品やサービスを最大限に活用できるようにサポートするために設計されています。
カスタマーサクセスツールは、顧客データの管理から行動分析、コミュニケーション管理まで、幅広い機能を持っています。このツールを活用することで、顧客のニーズをより深く理解し、適切なタイミングで的確なサポートを提供できるようになります。
また、カスタマーサクセスツールにより顧客満足度が向上し、製品やサービスの採用率が高まることも期待できます。さらに、顧客の成功事例を追跡し、そのデータを基に戦略を立てることで、ビジネスの成長にもつながるでしょう。
カスタマーサクセスの目的
ツールの紹介をする前に、カスタマーサクセスの目的について簡単におさらいしてみましょう。カスタマーサクセスにおける目的は、大きく以下の3つに分かれます。
- チャーンレート(解約・離脱率)の引き下げ
- LTVの最大化
- 顧客ニーズの把握とそれに基づく改善
カスタマーサクセスツールは「どの部分を強化したいのか」「ツールを使って何がしたいのか」という自社の目的に合ったツールを選ぶことが重要です。
カスタマーサクセスツールの種類
カスタマーサクセスツールは、目的や用途から最適なツールが異なります。ここではタイプ別にご紹介します。
CX向上タイプ
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、「顧客体験価値」と訳され、顧客が商品・サービスに触れる前から購入後に至るまでの体験を評価する概念です。
CX向上タイプのカスタマ―サクセスツールとは、より良い顧客体験を提供することを主な目的としたツールのことです。顧客体験を向上させることで、顧客満足度向上・リピート促進・ファン化といったさまざまな効果を得ることができます。
CX向上タイプには、以下のようなツールが該当します。
- チャットツール:スピーディーな双方向コミュニケーションを実現
- FAQシステム:使いやすいFAQの提供により顧客の不安や疑問を解決
- 問い合わせ管理ツール:丁寧できめ細やかな問い合わせ対応を実現
オンボーディング管理タイプ
オンボーディング管理タイプのカスタマーサクセスツールは、新規顧客が製品やサービスを効率的に学習できるようにして、立ち上げや継続利用のハードルを下げることができます。操作が難しいツールやサービスで特に効果的です。
オンボーディング管理タイプのツールを使い、顧客の体験を最適化しスムーズな立ち上げを支援することで、長期的な成功への基盤を築けるでしょう。
このタイプのツールでは、手順を丁寧に示したガイダンスや実際の画面を用いたデモなど、ツールやサービスの理解を促進する学習コンテンツを提供します。学習の進捗も把握できるため、必要に応じて顧客に対して個別のサポートを提供することも可能です。
オンボーディングの流れは細かくカスタマイズできるため、各顧客のニーズや役割に合わせて最適な体験を設計できます。さらに、自動リマインダーや通知機能などによって顧客の継続的な製品利用を促進し、エンゲージメントを高める効果も期待できるでしょう。
管理サポートタイプ
管理サポートタイプは、顧客情報を管理するためのツールです。
電話やメール、WebサイトやLINEなど複数のチャネルに対応しているカスタマーサクセスの部署では、各チャネルに顧客の個人情報が散在してしまっているケースも少なくありません。
そこで有効なのが、管理サポートタイプのツールです。様々なチャネルの顧客情報を集約して一元管理することができます。
解約防止タイプ
解約防止タイプは、顧客体験を向上して解約率(チャーンレート)を引き下げることでLTV(顧客生涯価値)の向上を目指すツールです。LTVとは、ひとりの顧客が企業にもたらす利益の総額を示す指標です。
解約率引き下げ以外にも、アップセル・クロスセルによる客単価アップや継続期間の長期化・購入頻度増加などの施策に役立ちます。また、解約が発生したケースの購入履歴・継続期間・解約理由などの顧客分析を行って、今後の改善へ繋げることもできます。
顧客の新規獲得が難しくなっている近年では、いかにLTVを高めるかが売上アップの肝であるため、企業活動において非常に重要な考え方となります。
特に、サブスクリプションや定期購入などのビジネスモデルではLTVの重要度が非常に高いため、解約防止タイプのツールが最適です。
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- CX向上タイプ
- サービス評価の向上
- 本質的な顧客理解や顧客視点が必要
- 競合他社に差をつけたい
- 管理サポートタイプ
- 情報集約による管理効率の向上
- 顧客情報の取捨選択や精査が必要
- 社内の業務効率を向上させたい
- 解約防止タイプ
- 解約率の低減とLTVの最大化
- 顧客との定期的なコミュニケーションが必要
- リピーター顧客の取得率を向上させたい
- オンボーディング管理タイプ
- 顧客に操作説明を提供
- 既存システムとの連携を考える必要がある
- 顧客のストレスを減らしたい
CX向上タイプ6ツールを比較
まず、CX向上タイプのツールを6つご紹介します。
メールディーラー
メールディーラーは、メールや電話、チャット、LINEからの問い合わせを一元管理できるシステムです。ネットショップや大規模コールセンターなどを中心に、約8,000を超える企業に導入されています。
搭載機能の中で、CX向上に役立つ「ステータス管理機能」と「集計レポート機能」をご紹介します。
ステータス管理機能
メールディーラーの「ステータス管理機能」は、顧客からのメールの対応進捗状況を可視化し、リアルタイムで共有する機能です。
この機能では受信メールが「新着」→「返信処理中」→「対応完了」と自動でフォルダに振り分けられ、どのメールを誰が対応しているのかリアルタイムで共有できます。「新着」フォルダを見れば、まだ誰も着手していないメールが一目で把握出来るので、対応漏れを防止できます。
ステータス名はカスタム可能なので、「エスカレーション」「対応保留」など運用フローに応じて自由にアレンジできます。
集計・レポート機能
「集計・レポート機能」は、期間別・フォルダ別・担当者別など任意の軸を掛け合わせて、メール通数や返信までにかかった時間を集計できる機能です。
例えば、キャンペーンなどの施策を実施した期間に発生した問い合わせの件数を算出したり、内容ごとに分類・集計したり、顧客が何に困っているのか具体的な数値で測ることができるようになります。
OKBIZ.forFAQ
OKBIZ.forFAQは10年連続で国内シェアNo.1を獲得し、日本で最も利用されているFAQシステムです。
日本語検索に特化した検索エンジンを搭載することで、顧客が求める情報を探しやすくなります。分析機能が充実しているため、改善点が明確になりFAQサイトの品質を向上させることができます。
FAQごとの重要度の設定や類義語登録など小回りの利く機能が多数搭載されています。さらに、FAQサイトとAIチャットボットの機能を連携することで、FAQサイトに蓄積した情報をもとに、AIチャットボットによる自動応答も可能です。
KARTE
KARTEは、分かりやすさと使いやすさから高い人気を集めるCX向上タイプのカスタマ―サクセスツールです。
Webサイトに訪れた顧客の状況をリアルタイムで監視して、あらゆる顧客データを可視化することができることが特徴です。データを収集するだけでなく、適切なタイミングでポップアップやチャットサポートを提供する機能も搭載されています。
収集したデータを基に改善を重ねることで、確実に顧客利便性・顧客満足度向上に繋げることができます。
Zendesk
Zendeskは、メッセージング、チャット、SNS、メール、電話などさまざまなコミュニケーションチャネルを一元管理し効率化することで、CX向上を実現できるツールです。
各チャネルでのコミュニケーションをデータ化して一元管理できるため、PDCAを回しながらブラッシュアップすることができます。
また、Zendeskは上記のコミュニケーションチャネルを個別に提供しており、自社の業態に合わせて自由自在に組み合わせることができることが特徴です。
コストパフォーマンスを重視しつつ柔軟に自社の業務体制を構築したい企業には、Zendeskは非常におすすめのツールといえます。
coorum
coorumは、ロイヤル顧客のデータ分析やコミュニティ運営をワンストップで行えるツールです。LTVの最大化や新規顧客の獲得に役立つことが期待できます。
このツールにより、企業は顧客間のエンゲージメントを高め、顧客が製品やサービスに対して一層の満足感を得られるようになるでしょう。コミュニティの活性化により、顧客自身が企業の支援者となる効果が期待できます。
commune
communeは、顧客コミュニティの運営と管理に特化したツールです。このプラットフォームでは、顧客同士の交流や情報交換を促進することでカスタマーサクセスの実現を図ります。
ノーコードで立ち上げやすく、顧客データの分析機能などさまざまな機能のほか、充実した運用サポートによって初めてのコミュニティ運営でもスムーズに進められるでしょう。
オンボーディング管理タイプ4ツールを比較
次に、顧客情報の一元管理に役立つ「管理サポートタイプ」のツールを3つご紹介します。
顧客が製品やサービスを円滑に利用開始できるようにするオンボーディング管理は、顧客満足度とリテンションを向上させる際に重要です。ここでは、オンボーディング管理に特化した4つのツールを比較し、それぞれの特徴を紹介します。
Mazrica Marketing
Mazrica Marketingは、マーケティングと営業活動を支援するMAツールです。MA機能のみでなく、SFA/CRMを同じプラットフォームで活用可能です。そのため、他のツール連携やデータ移行をする必要はありません。見込み顧客の情報をリアルタイムに営業に連携することで、スムーズな営業活動ができるでしょう。
DealPods
DealPodsは、商談の情報共有ツールです。営業と顧客が商談の情報を一つのページに集約できます。これにより購買体験の向上や営業の失注リスク低減が期待できるでしょう。また、DealPodsには社内外の資料共有、顧客とのタスク管理、チャットのやり取り、CRM/SFAの自動入力などの機能が搭載されているのが特徴です。営業シーンでの顧客への情報共有・トラッキングやエンタープライズセールスの受注率向上が期待できます。
Onboarding
OnboardingはBtoBカスタマーサクセス向けの、オンボーディングを最適化することに特化したツールです。画面上にチュートリアルを表示させることで、顧客が製品・サービスを使いこなすまでの時間を短縮し、定着率を向上させます。
JavaScriptを埋め込むだけで利用できるため、プロダクトUIの改善リソースがない企業でも簡単に作成できる点もメリットの一つです。顧客の利用状況をモニタリングすることもできるため、データにもとづく改善施策をしたい企業におすすめです。
pottos
pottosは、BtoBビジネスに特化した多機能・高機能なカスタマーサクセスツールです。顧客の利用状況やヘルススコア分析に優れており、効果的な顧客へのアプローチを行うことで、解約率低下を実現できます。
また、自動セグメント・自動タスク生成・自動通知などの自動化機能も充実しており、カスタマーサクセス業務の効率化・精度向上・負担軽減を実現することも可能です。
ツール内でPDCAを完結できる性能を持つため、カスタマーサクセスの課題を解決して高品質なサポートを提供したい企業におすすめです。
管理サポートタイプ5ツールを比較
次に、顧客情報の一元管理に役立つ「管理サポートタイプ」のツールを5つご紹介します。
楽楽販売
楽楽販売は、販売管理や受発注管理・進捗工程管理など、様々な情報を一元化できるクラウド型のツールです。
Excelやスプレッドシートによる手動の販売管理作業を廃止し、楽楽販売上で顧客情報と契約・受注情報、対応履歴や進捗状況などを紐づけて一元管理ができるようになります。
まずは小規模で始めて、自社の業務フローにあわせてカスタマイズしやすいのが特徴です。
Zoho CRM
Zoho CRMは、低コストで利用できる顧客管理・営業支援システムです。顧客管理機能はもちろん、営業支援に役立つSFA機能や顧客ナーチャリングに向くMA機能、その他にも分析機能やレポーティング機能などが集約されています。
スムーズな導入ができる安心のカスタマーサポートサービスがあるだけでなく、利用トレーニング、オーダーメイドのCRM構築も可能です。4つの料金プランから自社の規模にあったものを選べるため、中・小規模の企業でもコストを抑えて利用できます。
Senses
Sensesは、多機能でコストパフォーマンスにも優れた管理サポートタイプのカスタマ―サクセスツールです。
社内全体で情報共有が可能なダッシュボード・アクション管理により、蓄積した顧客データを基に効果的なアクションへと繋げることができます。また、入力を自動化する機能が充実しており、カスタマーサクセス業務の負担軽減・業務効率化に役立ちます。
AIによるアクション予測、リスク分析機能も搭載されているため、スピーディーに成果を出し続けたい企業には非常におすすめのツールとなります。
HiCustomer
HiCustomerは、SaaS企業向けのカスタマーサクセス管理ツールです。退会やアップセル兆候を自動で検知し、解約防止をすることで継続的な売上をサポートします。
また、BIツールやCRMツール、チャットボットなどの各種情報を集約して簡単に情報にアクセスできるようにすることで、確度の高い施策を少ない工数で実施できるようになります。
KiZUKAI
KiZUKAIはSaasやサブスクリプションプロバイダー向けのLTV・解約率改善ツールです。データを連携することで、顧客のデータを集約し、分析可能な形に自動で加工します。
また、任意で定めた条件をベースに顧客をスコアリングし、ヘルススコアを算出してくれます。解約要因が明確になるので、課題に対して本質的な改善のアプローチが可能になります。
カスタマーサクセスツール選びの5つのポイント
カスタマーサクセスツールは優秀なツールが数多くありますが、最も重要なポイントは、自社に合ったツールを選ぶことです。いくらツールの機能・性能・評判が良くても、自社の状況やニーズに合わないツールではポテンシャルを存分に発揮できません。
ここでは、カスタマーサクセスツールを選ぶ際のポイントを5つご紹介します。
現状の課題を洗い出す
カスタマーサクセスツールを選ぶにあたってまず行うべきは、自社の現状の課題を明確に洗い出すことです。機能・性能に優れたツールは数多くありますが、ツールにより特性は異なるため、現状の課題をしっかりと把握していないと適切なツールを選ぶことができません。
また、高機能・多機能なツールほど導入コスト・ランニングコストは高くなる傾向にあるため、必要な機能を絞り込むことも重要なポイントです。
必ず解決したい課題、できれば解決したい課題などと優先順位を決めておくと選定基準として役立ちます。
機能を確認する
ツールを選ぶ際に重要な要素の一つが「機能を確認する」ことです。
カスタマーサクセスツールには、顧客データの管理や行動分析、コミュニケーションの自動化など、さまざまな機能が搭載されています。しかし、全てのツールが同じ機能を持っているわけではなく、各企業のニーズに応じた特定の機能が必要となる場合があります。
そのため、ツールを導入する前に、自社が何を求めているのか、そしてそのツールがそのニーズを満たすかどうかを慎重に確認することが必要です。例えば、解約防止に重点を置いている場合は、リテンション強化のための分析機能が充実しているツールが適していますし、オンボーディングを強化したい場合は、初期設定や導入支援の機能が重要となるでしょう。
機能を確認する際は、単にツールが提供する機能一覧をチェックするだけでなく、それらの機能がどのように実際の業務に役立つかを考慮することが大切です。例えば、ある機能が非常に高度であっても、それを効果的に活用するためには従業員のスキルやトレーニングが必要となるかもしれません。そのため、ツールの機能が自社の業務フローに無理なく組み込めるかどうか、そしてそれが実際に業績向上に貢献するかどうかをしっかりと検討する必要があります。
KPIを設定する
カスタマーサクセスツールを選ぶ重要なポイントのひとつが、KPI(重要業績評価指標)を設定することです。抽象的な概念ではなく組織の目標を数値で設定することで、目標の達成度合いを明確に計測することができるため、目標達成の確度を高めることができます。
そのため、先にKPIを定めることによって、自社の目標達成に貢献できる最適なツール選びを行なうことができます。設定したKPIを計測できる機能が搭載されていることも重要なチェックポイントです。
KPIについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご参考下さい。
連携できるシステムを確認する
カスタマーサクセスツールは、単体で活用するよりもMA(マーケティングオートメーションツール)やCRM(顧客情報管理システム)などと連携することで、業務効率化を促進し、詳細な分析を行うことが可能になります。
既に導入しているものや、今後導入予定のツールと連携できるか必ず確認しましょう。
費用を確認する
カスタマーサクセスツールは、その機能や提供する価値に応じて価格が大きく異なります。そのため、ツールの導入コストや運用コストを慎重に評価し、自社の予算内で最適な選択をする必要があります。費用を確認する際は、初期導入費用だけでなく、長期的なライセンス費用やメンテナンス費用、追加のサポート費用なども含めて総合的に考えるべきでしょう。
特に中小企業やスタートアップの場合、コストは非常に重要な要素となります。しかし、安価なツールを選んでしまうと、必要な機能が不足していることがあり、その結果、顧客対応の質が低下するリスクがあるでしょう。反対に、高価なツールが必ずしも自社にとって最適とは限りません。ツールの価格と機能のバランスを考え、コストパフォーマンスが高いものを選ぶことが成功の鍵となります。
また、ツールの費用には、見えないコストも存在します。例えば、従業員のトレーニングにかかる時間や労力も、実質的なコストと捉えるべきです。新しいツールの導入には、従業員がそのツールを使いこなせるようになるまでの学習期間が必要であり、その間の業務効率が一時的に低下する可能性もあります。そのため、ツールの費用を考える際は、こうした隠れたコストも含めて総合的に評価することが重要です。
まとめ
今回はカスタマーサクセスツールをテーマにご紹介してきました。一口にカスタマーサクセスといってもさまざまな課題や目的があり、それによって最適なツールのタイプも異なります。
今回ご紹介した内容やおすすめツールを参考にしながら、ぜひ、より良いカスタマーサクセスの実現を目指しましょう。
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